牢獄の天使は愛を知らない

momo6

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第一章

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並んでいる最中昨日より列がぎゅうぎゅうと押される。
明らかに押してくる。
気分悪いな、と思いながらも順番が来て食事を受け取るとランガに言われた場所で待っている。

夜は気づかなかったけど、皆んな首からタグをぶら下げてる。
あれがランクを決めてるのかな?席はバラバラで色んなランクの人達が座っている。
食事も違う。

朝ごはんは、白パンにスクランブルエッグ・お肉っぽいの。量は少ないけど・・・美味しそう。早く食べたいな、食べたらロビーに行って説明受けないと。

「待たせたな。向こうが空いてるから座ろうか。」
ランガはそう言うと、食事のトレーをひょいと持ち歩き出した。
「自分で持ちますよ!」
「このくらい大丈夫だ。」
機嫌が良いのか顔が緩んでいる。
まぁ、いっか。と後ろに着いて歩いていく。

ズンズン進むと次第に人が少なくなっていく。
「よし、ここに座ろうか」

・・・明らかに周りとテーブル・椅子が違うんですけど。えっ?しかも朝ごはん!?量が違うし、煌びやかなんですけど。
こんなに差があるの・・・

がんばれるかな。私。

「ん?どうかしたのか?」
「いいえ、何でも無いです。えっと、私が座ってもいいのでしょうか?」
「大丈夫だ。Aがいれば、だれでも座れる」

本当かな?周りはみんな銀タグだけど。
ドキドキしながら席に座ると、「足らないだろ。これとか食べるか?」とステーキをお皿に入れてくれた。
「!いいんですか?」
やった~とニコニコしながら食べると柔らかいお肉に「美味しいー」と歓喜しながら食べる。

その様子を微笑ましく見ながら、ランガも食べ始めた。
「これも食べるか?」
差し出されたのは、何かのフルーツ。
「食べたい!」
あっ、つい。本音が。
「ふっ、甘いぞ?」
意地悪っぽいランガに「甘いの大好きだからいーんです!」と返事してしまう。

ーーーイケメンだな。

女が少ないって言ってたから、珍しいのかな。

「あっ!ロビーに行く時間なので、先に失礼しますね、ご馳走様でした!」
「あっ、俺も一緒に」
「ランガさんは、しっかり食べてくださいね!残したりしたら勿体ないですよ?」
「ふっ、あぁ。わかった。」
「よろしい。では、ありがとうございます。」

お礼を言い、食べすぎたお腹をさすりながらロビーに向かう。もちろん、食器も片付けて。



時間前に到着した。
危なかったー、まだ何人かは来ていないみたいで役員さんが時計を見ながらトントン指を叩いていた。

数分経ってからきた人達に、厳重注意をしていた。危ない危ない。


「えー、では。皆さんお揃いになりましたので。説明を初めます。歩きながらになりますので、一度で覚えて下さい。」

全部で50人は居るのか、ゾロゾロと歩き出した。声が皆んなに聞こえる様に拡声器を使っている。

「まず、皆さまの部屋は鍵が付いています。無くさないでください。無くしたら新しい鍵が出来るまで1か月かかります。その間は鍵なしになりますので、何が起きても自己責任になります。
1人部屋になっておりますが、他人を室内に入れて問題を起した場合は、これも自己責任です。また、既存のを破損した場合は弁償になります。相部屋が希望の方は、申し出て下さい。空き状況によって考慮します。」

絶対鍵を無くさない様にしよう。

「こちらは、皆さまもご存知の通り食堂になります。皆さまはEランクセット。Eとは、レベルになります。A~Eまであります。Aの上はSがありますが現在、3名しかおりません。レベルが上がるのは、一定の対戦結果が必要です。闘技場では、勝ち負けがお客様に対しては有ります。が、皆さまのランクに影響はございません。あくまでも評価です。勝ったとしても、評価が低ければ意味がありません。また、負けても評価が高ければ昇格の可能性がありますので、気をつけてください。」

「それから、こちらの大浴場は時間制限があります。12時ー20時までです。シャワー室はいつでも使用可能です。大浴場・シャワー室、どちらも共同になります。女性の方には酷ですが、Aランクになれば特別室になり、部屋にお風呂が付いています。いつでも入れますよ。」

「はい。こちらが、メインイベント闘技場になります。周りにある客席の中心で闘い合って貰います。A~Bランクは基本真剣ですが、C~Eは木刀になります。またD~Eの方は戦うより催し物が多くなります。用は前座です。闘いがメインなので盛り上がる事も必要なんです。逆に言えば、催し物だけでもランクは上がります。評価ですからね。闘いが苦手な方の救済処置ですね。」

「最後に、1番重要なお金。闘技場に出た分支給になります。催し物も同じです。食堂で使われたチケットはランク事に毎月決まった分の支給になります。が、成果が無い場合が続くとお金で買う様になります。気をつけでくださいね。他にもお店があるので、そこで娯楽として使用しても構いません。また、月に一度申請があればA.Bランクの方は外出許可を出します。」

「本日は、午後から訓練をしてもらいます。いきなり戦えと言うのは無理がありますからね。最初は訓練から学び、徐々に闘いに慣れてきたら闘技場に出て貰います。催し物はいつでも参加出来ますので、担当に話してください。」

「説明は以上になります。では、ご武運を」

役員の方が説明を終えると、みな食堂に移動を始めた。そろそろお昼だからだ。
午後から訓練、頑張ってランクを上げよう。

歩いていると、数名の男達が話しかけてきた。
「君、可愛いね。なんで闘技場にきたの?」
「聞いた話だと、女は10人もいないってよ?」
「名前は何て言うの?」

わらわらと話だし、頭が痛い。

「おい、俺が先に質問してるんだ!後にしろよ」
「俺が先だろ?」

はぁ、ここでもめんどくさい。

無視しながら歩いていると食堂に着いた。
並んでいてもワイワイうるさい。
そんなに女が珍しいのか?

「んもう。うるさいわね~そんなに飢えてるなら私が相手するわよ?」
アマンサだ。
「は~い!昨日は先に帰るなんてシンレツ!!酷いじゃない!たっぷり話して貰うわよ?」
「話?」
「とぼけても無駄よ!ーーーAランクのランガ様と帰って、朝はシャワーもご飯も一緒だったらしいじゃない。」
耳元でボソリと言われ驚いた。
「何で知ってるんです??」

「もう!あのランガ様よ!!女に見向きもしないラ・ン・ガ様!!クールな所が好き・・・きゃー!言っちゃったわ~秘密よ~」
アマンサが興奮しながらバシバシと背中を叩いてくる。地味に痛い。
「あら、順番が来たわね。席に行きましょう」

アマンサがいたおかげでグイグイ押される事も無く食事が取れた。アマンサが助けてくれていたんだな。優しい。

「ちょっとーー!待ってたわよ!説明して貰うからね~」
「そうよ!私達の王子様を奪うなんてーー羨ましい!!!」
「んで、どこまで行ったの?ティア?」

あっ!!と4人がアマンサの口を押さえた。

「ティア?もしかして、私の名前?」

もう!って皆んなアマンサをコツンと叩く。
「驚かそうと思ったのよ~」
「このゴリラが口走ったせいで台無し~」
「ちょっと!ゴリラって何よ!ゴリラって」
「ゴリは、黙ってなさい!改めて、ティア。どうかしら?嫌じゃないかしら?」

初めての名前、嬉しい。
「ティア?」


「っっっ!!嬉しい!ありがとう!!」

ギュゥゥーって4人に抱きつきお礼を言う。
涙が浮かんできて、ウルウルしてしまう。

「さっ、ご飯が冷めちゃうわ。食べましょう」
「うん」

本当に嬉しい。ティア。サリーお母さん。私の新しい名前。ティアだって、嬉しいな。

粒々にした肉を濃く味付けし、細い麺に絡んだのをチュルチュル食べながら胸がいっぱいになった。





「ここで食べていたのか。もう食事は終わりか?」
「ランガさん。はい、アマンサさん達と食べました。ランガさんは食べましたか?」
「俺は今からだ。午後は何をするんだ?」
「訓練をするみたいです。」
「そうか、終わったら迎えに行くから一緒に食事しよう。」

「えっと。」
どうしよう、別にランガさんと食べなくてもアマンサさん達でもいいんだけど。

困っていたら、オネェさん達が(はい!って言いなさい)と断るなよ?って圧が凄かった。

「はい。待ってますね。」
「うむ。では、食事してくる。」
「はい、ゆっくり食べて下さいね」

コクリと頷くとランガは食事を取りに行った。
何でこんなに私に構うのかな?

「ちょっと!!何よ今のは!?」
「本当に付き合ってるの??」

圧が!圧が怖いです。
オネェ様方、マジで怖い。
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