愛し子は鈍感で、愛に気付きません。

momo6

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16 届かぬ想い

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小さい頃、君に一目惚れした。
親父が“先祖が愛した女性”と教えてくれたけど。僕も会いたい。
絵ではなく、動いてる君に。
でも…それは叶わないって分かってる。
だって、この絵はずーーっと昔の絵だから。
いるはずないって、分かってる。
早く起きなきゃ行けないって、知ってる。

何度、親父が人を連れてきても絶対に起きない。
あの本みたいに・・・僕は男だから、可愛いお姫様のキスで目覚めたい。それぐらい夢を見てもいいじゃないか。
でも、そんな事ーーー親父に話せる訳ないだろ。
それをあいつは…あの男は、アッサリ気付いて親父に言ってしまった。しかも!可愛い子の前で言うなんて!!!
恥ずかしい!!!恥ずかしすぎて、余計起きれないじゃないか!
許すまじ、あの男。
でも、さっきの子可愛かったな。少し彼女に似てるけど。


トントン


ん?また親父が誰か連れてきたのか?
まったく、親父も諦めが悪いな。

《親父、もう諦めてくれーーーーっっっ!!》
かっ彼女だ!!
絵から出てきたのか!?
俺の願いが叶ったのか!!?

《あっ!えっと、あっっ》
くそ!緊張して上手く話せない!名前!名前を聞くんだ!!

《なっなっ名前は!》
バカーー!そんな怒鳴って聞いたらダメだろ!
ヤバイヤバイ、緊張してしまう。


「エレンよ。あなたは?」
エレーーーン!まじ天使!!!声も可愛いーーー!

《ディレンだ》
おふぅぅ!ぶっきらぼうに言ってしまった、紳士的にしなくては!フーハーフーハーよし。

《エレンは、この絵から出てきたのか?》
いやいやいや。どこが紳士だよ!ダメじゃん俺。


「ふふふ。そうかもね、あなたの実体は?キスしたら目覚めてくれる?」

《!!!?》
「なんてね、せっかく来たのにあなたは幽体なんですもの」

《戻る!!戻るから待って!行かないで!!!》
「戻れるの?」

《ああ!っく、あれ?くそ!ダメだ、起きない》
長く体を離れてたから、本当の眠りになってしまった。
ディレンは、何度か挑戦するがスカッスカッと浮いてしまう。
そんなディレンの体に近付き「起きて」そう呟くとディレンの幽体はスーっと消えて、体に赤みがさしだした。スースーと寝息が聞こえてきたので起きるのも時間の問題だ。

「これで、大丈夫ね」
もう、幽体しない所を見ると安心しディレンのそばを離れた。
カツカツと離れていく足音が部屋に響く。
「・・・まっ、まって・・・まって、」
振り返ると、筋肉が強張り動くのに時間がかかるのを無理やり動かすディレンがいた。

「もう大丈夫ね。元気になったら私を探して」
それだけ話したら扉を閉めてしまった。残されたディレンは「必ず、必ず見つけるよ。エレン」
生きる希望を見つけ、ドサリと棺桶に横になる。
少しだけ眠ることにした。体を元の状態に戻す為。






扉をしめた千鶴は「変幻」と髪色と瞳を黒色・黒眼にした。
(ふー、少しエレンの意識に引っ張られたな)自分では言わない“探して”とか言った自分に驚いていた。
変幻が終わり、目を開けるとイスンが険しい顔で立っていた。

「君は誰なんだ?」
そうなるよね。エレンだと思っていたが、何かが違う。イスンは疑惑の目で千鶴を見ていた。
「話は屋敷を出たら言うわ」
「分かった」

まずは、主人にディレンがもう大丈夫だと伝えると涙を流しながら喜んでくれた。それに、銀髪になった事を他言無用でと再度お願いしたら、理由を悟ってくれて約束してくれた。お礼に真っ赤な石がはめ込まれたネックレスを貰ったけど、見るからに高そうだからと断った・・・んだけど、無理やり渡されてしまった。何でも邪気を払ってくれるとか?気持ちを無下に出来ず貰うことにした。

屋敷を出るとまた、鬱蒼とした庭に尻込みしてしまう。
さすがに、疑っている私をまた抱っこで運んでくれないよね…よし、帰るだけだし!頑張れ私!!
一歩踏み出すがやはり怖い。すると、ふわりとイスンがお姫様抱っこをしてくれた。
「まだ、答えを聞いてないぞ?」
疑惑の目だが、優しく包み込んでいるのが分かり。素直に話す事にした。

「・・・私は、エレンの意思を継ぎました。」
「!?」
「この髪も瞳もエレンの物でした。」

千鶴の言葉に、イスンは立ち止まる。鬱蒼とした庭には、不気味な静けさがあった。
「ーーー意志を継いだ?では・・・エレンは死んだのか?」
コクリと頷く千鶴を見て、イスンは無言になる。
「苦しんでいたか?」
「いえ!!…でも、お腹に怪我をしていて。それが元で亡くなりました。でも!最後は笑顔でしたよ!私に意思を継いで。生きて。そう願い、‥…光の粒になって召されたんです。黙っていてごめんなさい。」

静かに聞いていたイスンは、千鶴の頭を撫でながら「いや、よく話してくれた。ありがとう」力なく笑いかけながら歩き始めた。

妹の死を知り、泣きたいのを堪えているイスン。

千鶴は、ぎゅうっとイスンを抱きしめた。
「エレンは、光の一族でした。そのせいで、狙われて…大怪我をしたんです。私はそれを引き継いでしまい、バーから素性を隠しなさいって教わりました。だから、中々話せず…本当にごめんなさい」

千鶴の告白に、イスンは動きを止めた。
まさか、エレンが光の一族だったとは知らなかったのだ。幻の一族…誰もが憧れる一族だ。
エレンの母親も綺麗な銀髪だったのを覚えている。イスンを産んですぐに亡くなった母の代わりに父親が連れてきたのが幼いエレンと母親だ。
だから、盗賊は幼い妹を連れ去り他のものに手を出さなかったのか。エレンの母は、幼い娘を守るため殺された。

沸々と怒りが湧き上がるのを感じる。
俺の家族を殺した奴ら、絶対に見つけてやる。復讐を決めたイスンは怒りを抑えることが出来なかった。

「イスン?」
千鶴の声で、ハッとしたイスンは我にかえる。
エレンの意思を引き継いだ千鶴を守らなければ。光の一族だと知られない様に髪色を変えていたのかと理由が分かれば納得する。

「心配するな。俺が守ってやる。秘密も言わないと誓う」
必ず守る。エレンが命がけで残した光の一族だ。俺が守る。

宿命のように感じたイスンは、自分の腕の中で心配そうに見つめる千鶴を愛おしく想う。
その想いが妹を想ってか、恋なのか本人は知る由もなかった。

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