愛し子は鈍感で、愛に気付きません。

momo6

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23 勘違い

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「…なんと言った?」
「おっ恐れながらーー陛下、チズル様は帰られましっったっ」
「何故、止めなかったのだ」
「「!!!」」
ギロリと金色の瞳に睨まれ、ベルルと衛兵達は頭を下げたままガタガタ震えていた。

「もうよい。何処へ行ったのかすぐに探し出せ。」
「「かしこまりました!!!」」

職務中に衛兵から聞いた情報によると、ちずるはカンカンに怒って出て行ったと聞いた。何故だ?あれ程もてなしたと思っていたが、何が足らなかったのだ?ーーー強欲な女だったのか?
バファイの手紙には
『幼い頃の記憶が無く世間に疎いから世話をしてやれ。』とあったが…なるほど。世間に疎いのでは無く、強欲だったんだな。
だから、バファイは国王である俺に面倒を押し付けたのか。
ふん、奥の院は女性の憧れだと思い気を利かせてやったのにーーーあの女には、勿体ないことをした。
普通の客間で充分だったな。見つけたら、腐った性根を叩き直す必要があるな。必ず見つけてやる。

「ホッホッホ。ソウ、何を考えているんじゃ?」
「父上!あの娘は子供に見えても中身は十分過ぎる程の大人です。私は危うく騙される所でした。すぐに居場所を見つけるべく捜索に向かわせています。」
「そうかえ、ソウにも分かっていたのかのう。」
「はい。あの娘の事は私にお任せ下さい」
「うむ、では任せたのじゃ」

前国王は、立派になった息子を誇らしく思っていた。
(あの娘は欲もなく自分の事を卑下しているが、教養を身につけたら化けるかのう。ソウもそれが分かるみたいじゃて、儂が手助けしなくても大丈夫そうじゃ)
ニコニコと机の上の書類を片付けていくソウを満足そうに見つめていた。

一方ソウは、真逆の事を考えていた。
(幼い顔に騙される私では無い。強欲な性根をバファイの代わりに叩き直してやらねば、ろくな大人にならないからな。)

静まり返った部屋には2人のすれ違う思いが交差していた。



そんな事を話されているとは知らない千鶴は、街の広場にやってきていた。
イスンから飲み物をもらい、怒りが静まり落ち着きを取り戻した千鶴は深呼吸をする。
「ふー、美味しい」
「何があったんだ?」
「そうだぜ?昨日から待ちぼうけを食らってたら、朝から顔色の悪いチズルが来て…何かあったんだろ?」
イスンとリュカが心配そうに顔を除きこんできた。

何から話せばいいのか、「えーと、うーん…」返答に困ったがとりあえず簡単に説明をした。

「手紙を渡したら、何故か奥の院って場所で滞在する事になってーー」
「奥の院だと!?」
バァンとリュカが持っていたコップを地面に叩きつけた。どうやら何か分かったみたいだ。イスンも声には出していないが冷気が漂っている。怖い。

「知っているの?私は知らなくて…今日の朝知ったんで、飛び出してきたんだけど。」
『メルは愛し子守ったよ!』
「ありがとう。メル。チズを1人で行かせてすまなかった。怖い思いをさせてしまったな。」
イスンは、優しく千鶴を抱き寄せた。
「うん。大丈夫だよお兄ちゃん。もう二度と行かないから。」

そう。二度とお城には行かない。次は出てこれないような気がする。イスンの暖かさに触れて、今更ながらに震えてしまう。
「大丈夫。俺がいるから」
「お兄ちゃん…」

大丈夫。私は1人じゃ無い。うん、大丈夫。
自分に言い聞かせながら気をしっかり持つ。
「ありがとう!安心したらお腹空いちゃった、何か食べに行こう?」
「はは、チズらしいな。よし!肉でも食べに行くか!」
「朝からお肉は重いよ~でも、今日は食べようかな?」
「確か、向こうに肉が美味いお店があったからーー」
「そこに決まり!しゅっぱーつ!!」

元気を取り戻した千鶴は、明るい声で歩き出した。その姿を愛おしそうに見つめるイスン。
「ぉおい、俺もいるんだぞ?」
置いてけぼりのリュカは、必死に2人についていく。




「お店?何を売るんだ?」
「コンビニみたいな感じでお店を開きたいんだよね」
「コンビニってなんだ?初めて聞く名前だな?」

テーブルに並べられたお肉にかぶり付きながら、今後どうするか千鶴に聞いて見た所お店をやりたいと言う話になった。

「そっか、コンビニが分からないか…うーん。食べ物や日常雑貨とかを手軽な値段で売っているお店の事。誰でも気軽に入れる感じなんだ~」
「何でも屋みたいな感じか?いや、でも食べ物は置いていないから少し違うか。」
考えるイスンに対し、リュカは「雑貨屋って事か?」と言われた。
「そうだね、何でも屋でも有り雑貨屋でもある感じだね」

バーの所で思ったのは、この世界の物品とか日常雑貨が貧相な事。
だって、トイレットペーパーが葉っぱだよ!?あり得ないでしょ?
他にも切れにくい包丁とか…キリがない。
絶対、革命が必要だと思う。食べ物だって、料理は美味しいよ?でも同じ物や味付けばかりで飽きる。お菓子だって、硬いパンをスープに入れたらお菓子って!違うよね!?

これは、絶対売れる。
間違いない。しかも、竜涎国は一番貿易が豊か。だから、ここを拠点にすれば儲かる事間違い無い!確信出来る!!
だから、何が何でもここに住みたいんだよ。
でも、お城の出来事で頭が痛い…一等地欲しかったな。でも、まずは自分の力でやらないとダメだと思う。
一等地を貰ってもそれは私の実力じゃないしね。

「だから、まずは家を探したい。お店もそこで開けたらと考えているんだけど…どこに行けばいいかな?」
「まずは、ギルドに行けばいい。土地や家なども管理しているからな。店を構えるなら商人ギルドの手続きもしないといけないね。」
「流石!お兄ちゃん!!食べ終わったら、ギルドに行こうね」
「あぁ」

なるほど。ギルドは不動産もやっているんだね?知らなかったよ。
家を購入すると、お金が必要だけど…ローンてくめるのかな?それも確認しないとな。


千鶴は胃もたれしそうな脂ぎった肉に目眩がしながらも食べ進めていた。
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