愛し子は鈍感で、愛に気付きません。

momo6

文字の大きさ
30 / 31

30

しおりを挟む
ツンツン

ツンツン

「ーーーん?」

『起きるの!愛し子、メルこれ食べたいの!』

ツンツンと千鶴のほっぺを突つきながら、手には昨日出したままにしていたクッキーを持っている。
『愛し子!起きるの!』
「うーん、まだ眠い~」
『メル食べたいの!』

しつこくツンツンされ、根負けした千鶴は気だるそうに欠伸をしながら背伸びをする。
「ん~どうしたの?ふぁ~」
目をコシコシしながらメルを見るとナッツが入っているクッキーを手に持ち『食べたいのー!』と満面の笑みで千鶴に迫ってくるけど、可愛いい顔に怒る気にならないな。

ん?よく見るとメルの口に、クッキー?食べかすが付いてるけど、、、

「メル?他にあったクッキーは?」
訪ねるとアワアワしながら『気付いたら無くなってたの~!これが最後なの~驚きなの~!』

いやいや、こっちがおんどろきですよ。
言い訳を聞いて怒る気が失せたよね。

「そんなに美味しかった?食べていいよ~また作るか~」
『!!やったなの!メルこれが好きなの~!』

可愛いからいっか。とテーブルでポリポリとクッキーを食べるメルを見ながら洋服に着替える。
外は太陽が昇ってくる時間でまだうっすらと暗い。
「はっ!はっ!ふっ!」
ん?
息切れする声が聞こえ、窓から下を見るとまだリュカが剣を振っていた。
「はぇ!?まだやってるの!?ちょっと!リュカ!!いい加減終わりにしなよー!!」

思わず、身を乗り出して叫んでしまった。
隣の建物と離れているとはいえ、朝から迷惑だ。
緊急事態なんで、すみません。と心の中でまだ見た事が無い隣人に謝る。

「聞こえないのかな?まったく、エナジーハッスルは販売中止だな。リュカみたいなバカが増えたらいい迷惑だよ。」

急いで階段を降りて外に行くと。
汗をダラダラかきながら一心不乱に剣を振るリュカがいた。
「リュカ?もう終わりにして寝ないと!…リュカ?」

「ふっ!ふっ!」

「どうしたの?聞こえないの?」

千鶴が見えていないのか、見向きもしない。
あちゃー、これは本当に販売出来ないな。危なすぎる。
「まだやってるのか?」
千鶴の声に起きてきたイスンは、一瞬で状況を把握した。
「このバカが。おい、いい加減寝ろ。」
イスンが言うとガクンと倒れてしまった。

「はぇ!?倒れちゃったよ??大丈夫なの?」
「大丈夫だ、手加減はしたからしばらくは起きないだろう。」

・・・手加減?何かした?全然見えなかったよ。
今日は平和な一日になりそうだな~


「お茶でも飲もう~朝ご飯はまだ早いしね。」
「そうだな、リュカを部屋に連れて行ったらすぐ行くよ。」

ひょいとリュカと剣を持ちながら、イスンは涼しい顔で二階に上がっていく。重く無いのかな?不思議。

『私も飲みたいわ~リュカったら、全然寝ないから困ってたのよ~』
ペガがふわふわ揺れながら後ろからついてくる。
ふぁ~と欠伸をしながら眠そうだ。

「アールグレイにしようかな?あっ、砂糖とミルクもいれて、ミルクティーにしよ。」
バーの所で見つけた茶葉を色々集めたら、アールグレイもどきがあったんだー。
考えたら、本当に何でもあったな。落ち着いたらバーの所に遊びに行こ~。

お湯を沸かし、コップを用意する。
錬金術を使って色々作ったのが役に立つ。
現代の知識を使うと生活で困る事はない。
陶器のコップもあっという間に出来る。
材料は、採取したのや妖精さんが集めてくれるから助かっている。

「ん~いい匂い。煮出した茶葉は、水気を切って。後で粉末にしないと、パウンドケーキやクッキーに使えるようにしとかないと。」
ぶつぶつ言いながら、手際よく準備をしていると。トントンと階段からイスンが降りてきた。

「あ!お兄ちゃん、お茶の用意が出来たよ~」
「いい匂いだな。」
「いい匂いでしょ~ミルクティーにしたんだよ~!パウンドケーキも少し食べる?」

「パウンド?聞いた事無いな。じゃあ、いただこうかな。」


ナイフで一切れずつ切り、陶器のお皿によそっていく。

「はい、どーぞ。」
「あぁありがとう。」

美味しいな。と言いお茶を飲むイスン。
まったりしていると、ペガとメルが床でコックリとうたた寝を始めた。


「今日は、市場を見たいんだけどお兄ちゃんは何するの?」

昨日行けなかったから、市場調査をしながら買い物をしようと考えていた。

「特に予定は無いな。ーーチズルは、他に何を隠してるか問い詰めようと思ってはいるがな。」
ブフーー!!!
飲んだミルクティーを吹き出してしまったよ。
何て?何ていったの?お兄様??

「昨日の事だ。他にもあるなら、今のうちに聞こうと思ってな。さぁ話してごらん?」
にっこり優しい口調で話しているけど。圧が!圧が怖いです!!
「・・・えっとー何と言われても?」
とぼけてみるが、うん。目が笑ってないよ。怖すぎだよ。

「とりあえず、分かることから聞こうか?リュカも朝まで訓練、いや、鍛錬させたから。お昼までは起きないだろう。妖精達も、ほら。寝てしまった。もう邪魔は入らないぞ?」
・・・させた?今、鍛錬させた?って言った??お兄様??

困惑しながらも「訓練してたのは、薬のせいじゃないの?」
「んー頑張る姿を見せると惚れそうだな。って話してたら、勝手にやる気になっただけだ。脳筋だからな。」


恐ろしい!!!
腹黒いです!お兄様!!もう、お兄ちゃんじゃない!お兄様と言わせていただきます!!逆らったら怖すぎ!


「あ、えと、まず。私はこの世界の人間じゃないんです。」
「・・・は?」
「気付いたら、森にいてーエレンとばったりあったら、もう殺されかけてた?瀕死だったのね。洞窟に逃げ込んだけど。エレンはその時に私に自分の全てを渡してくれて、、、あっ!この姿は元々の私だからね!そっくりで驚いたの!そしたら、森が燃えててびっくりして、逃げたら崖から落ちてね。川があったから助かったよ~気を失なってた所をバーに助けて貰ったの。イスン?」

ざっくりと事の成り行きを説明したら、イスンは頭を抱えながらテーブルにもたれてた。

(チズルは、迷い人だったのか。迷い人も貴重でここ何千年はいなかったと聞くがーーエレンに出会い、光の一族を受け継いでしまったのか。参ったな、思った以上に話がデカい。)

「では、チズルは迷い人。で間違いないんだな?別世界からの来訪者を迷い人と呼んでいるんだ。」
「そうなのね、じゃぁ私は迷い人で間違いないよ。だから、エレンとは数分しか会った事が無いんだ…何も分からなくてごめんなさい。」

しょんぼりする千鶴に、同情しながらイスンは頭を撫でる。
「大丈夫だ。何も分からないのに、よく頑張ったな。もう安心していいぞ?俺が、俺たちが守るからな?」

優しい言葉に涙が出そうになる。
バー以外に初めて打ち明けたからだ。
バーと離れて不安だったけど、イスンには全て話して協力して貰おうと思った。

「よく分からないから、色々教えてくれる?」
「ああ。もちろんさ。何かあるのか?」
「バーに色々と隠蔽して貰ったんだけど、何が常識かよく分からないんだよね。ステータスを見てくれる?その方が説明がしやすいし。」
「そうだな、では見せてくれ。」

「解除」と言いながら隠蔽を解くとステータス画面に文字が浮き出てきた。髪や瞳の色も一緒に解除されてしまった。まだ、操作が難しいようである。

「この髪はエレンのなんだな、、、エレンっっ」
腰まである髪を優しく掴みながら軽く口づけをする。悲痛な顔を直視出来ず。ステータス画面を見ていた。
「あれ?何か増えてる?」
ステータス画面を見るのは、バーから離れて初めてだ。そんな機会が無かったのが理由だ。

「何か増えたのか?スキルとかか?増えやすいからな。」
イスンが顔を上げて画面を見るとその数々に驚愕した。

「なんっっだ、このスキルはっっしかもレベルが無限だとーーそんなレベルは聞いた事がない。全ての魔法…全属性かそれに聖女・・・はぁ。何から突っ込んでいいのやら、」

深いため息を何度もするイスンに何故か申し訳なく思う。

「錬金術が使えるのか?凄いな、今は殆ど使えないぞ?それに、メチャット販売?何だそれは?」

聞き慣れたフレーズ。このメチャット販売は、よくネット通販で使用していた会社名。
まさかの通販が出てくるとは夢にも思わなかったよね。

「これは、私がよく使っていたお店の名前で、これで注文すると届くんです。」
「?」
理解出来ないと顔に書いてある。えぇえぇ、分かってますよ!私だって半信半疑なんだから。

意を決して「メチャット販売」を押してみた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...