転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第1章 転生編

第1章ー⑯

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 「ぐうっ?!」

 結界が壊れ、物凄い爆風が周囲に吹き荒れる。少し離れた物置小屋のそばへ避難していた自分と母は吹き飛ばされずに済んだが、風と煙が強すぎて今どういう状況になっているのか全く分からない。

 初めて見る父の全力、あまりにも異次元すぎた。異次元すぎて何が起こったのか理解しきれなかった。それをあんな狭い空間で繰り広げていたのだ。父が結界を張っていなかったら今頃自分達は巻き添えをくらって下手をすると死んでいたかもしれない。

 そんな父を相手に普通にやり合っていたあの魔物。あいつもあいつでヤバかった。斬っても斬っても斬れない身体。魔法も通じないようだし、そんな奴を相手に、はたして父に勝機があるのかと絶望を感じながらも二人の戦闘を見守っていた。

 しかし、父は諦めずに戦い続けていた。その様子を見て、自分はひたすら神に父の勝利を願っていた。前世では神頼みなんて全く期待していなかった自分だったが、この時だけは必死に願った。恐らく人生で一番神に願った時だったかもしれない。

 「…うっ…」

 爆風が徐々に収まっていき、煙が晴れそうになっていた。不安に駆られていた自分は、無意識に父の元へと歩み寄って行た。だが、煙でまだ様子が掴めない。そうだ、魔力感知なら居場所ぐらいは掴める筈。

 魔力感知はまだまだ未熟だが、父の魔力は嫌という程見てきた。それを特定するぐらいなら自分にだって…

 「っ!?」

 父の魔力を探りながら近づいていくと、魔力を一つだけ感知した。この魔力は…

 「…お、お父…さん?」

 煙の中から人影が見え、恐る恐る声を掛けた。間違いない、この魔力は…

 「ッッ!!??」

 ようやく煙が晴れると、人影の全容が明らかになった。

 「…あっ、ああっ…」

 全容が明らかになり、思わず呆然としていた。

 刀を振り下ろす父。その父の胸に、黒い手が貫いていた。この魔力はやはり父のものではなかった。父の方の魔力は全く感じられなかった。

 「『ふう、少々危なかったですね』」

 「ッ?! そ、そんな…」

 黒い手は魔物の手で、父の胸を貫いた黒い手を引き抜き、父はその場に倒れてしまった。その光景があまりにも恐ろしすぎて膝から崩れ落ちる。嘘だと思いたい。が、父はピクリとも動かない。父が握っていた刀も、父の手元から離れ、徐々に形が崩れていき、灰となって消失してしまった。

 「『はあ、私がここまで苦戦させられるとは。人間風情の割にはよく頑張った方でしょう』」

 「くっ!?」

 倒れる父を見て、なにか呟く魔物。そんな魔物に自分は、涙ぐみながら睨む事しか出来なかった。身体に力が入らない。奴に対して恐怖しているせいか。くそ、動けよ。何のために今まで特訓してきたんだよ。

 「『だがまあ、所詮は人間といった所。君の父はとんだ痴人でしたよ』」
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