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第21話 刹那の戦い
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勝負は一瞬で決まる。私の身体は事前にかけていた魔法『秒針世界』へと移行する。
「決闘、開始!」
ザギール将軍の声が響き渡る。メルキウスが技発動の構えに入る。
「奥義、こ」
メルキウスが技を繰り出そうと筋肉を動かした瞬間を私は見逃さなかった。いや、それを待っていたという方が正しい。
突如頭上から闇と雷の巨大エネルギーが出現し、メルキウスめがけ直撃する。闘技場にいた関係者からすれば一瞬の出来事だったかもしれない。
だが私は周到に準備していた。闇に聖属性を少し紛れさせ、開放すれば一瞬で放出できるように。
雷のエネルギーを蓄積させ、一気に放電できるように。
それほどの大出力を微塵も感じさせないよう偽装して臨んでいた。
目の前の結果はただその積み重ねが結実しただけなのだ。
無詠唱での大技、『雷闇石火』の発動。
必殺技を繰り出そうとしていたメルキウスにはこれを避ける事はできない。仮に気付かれたとしても多分避けられなかっただろうが、私なりに保険を掛けたのだ。
メルキウスは黒焦げになり鎧がひしゃげて地面に叩きつけられる。
静寂が辺り一帯を包む。ザギール将軍が闘技場に現れ、メルキウスに歩み寄り状態を確認する。
「勇者メルキウスの死亡を確認。戦闘続行不可能と認め、勝者は大賢者タクトとする!」
ザギール将軍の宣告で勝敗は決した。突然の出来事にざわつく声が辺りから起こる。
「あれ?」
状況を見ている私の目から涙があふれ出ている。頬を伝い現象に気づいたのだ。
「お、おかしいな。何なんだ?」
私は涙を拭いながらゆっくりとメルキウスの遺体に向かう。
「これは…… 酷い」
メルキウスの遺体を見て呟く。人を殺めてしまったという事実が突きつけられる。
立ち尽くす私にザギール将軍が気付く。
「何だ? もう下がってよいぞ」
「助けないと」
私が近寄ろうとすると将軍が立ちはだかる。
「彼を愚弄する気か。許さぬぞ」
「違う。彼を救うのです」
「何を言っている? もう絶命している。気でも触れたか?」
ダメだ。この人と話してもらちが明かない。
「邪魔だ。どけ!」
私は魔法『衝撃』を唱える。将軍の巨体が吹き飛ぶ。
「ぐわぁ!!」
闘技場の壁にぶつかって静かになる。障害が取り払われ、私は目の前の遺体となったメルキウスに呪文を唱える。
「蘇生術!」
呪文を発動すると、彼の身体に緑色の光が宿る。つぶれた鎧が元通りになり、身体がみるみる再組成されていく。緑色の光が消えると、メルキウスの目が開く。
「お、俺は……」
彼の復活を確認した私はザギール将軍のもとへ移動し、ヒールをかける。将軍が意識を取り戻す。
「悪かったな。これで許してほしい」
「待て!」
ザギール将軍の回復を確認して去ろうとした時、メルキウスが私を引き止める。
「お前、何をした?」
私は彼を見て答える。
「勝敗が決したから貴方を復活させた。それだけです」
「俺は…… 死んだのか。負けた、この俺が!」
両膝をついたままメルキウスが悔しがる。
「すまなかった。命まで取ることはなかった」
そうは答えたが目からまだ涙が止まらない。自分にもヒールをかけて何とか止める。
「敵の俺を…… 助けてくれたんだな。感謝する」
「ありがとう。その言葉で十分だ」
私はその場を立ち去った。もはや何も言う事はない。
「お疲れ様でした。早い決着でしたね」
出入口のところでエレノーラ様が私を迎えてくれる。
「私は初めて人を殺めてしまった。その事が深く刺さっています」
私はエレノーラ様に深く頭を下げた。
「なるほど、そうですか。では私から勝利のご褒美です」
エレノーラ様はそう言うと、魔法を発動する。
「傷ついた戦士を癒します。『聖女の癒し』」
エレノーラ様の魔法が私の身体と脳全体に染みわたる。傷ついた精神とショックをやわらげ、消滅させていく。
「ああ、心が洗われていく……。師匠ありがとうございます」
私は完全に立ち直ることができた。だがエレノーラ様はどこか不満げだ。
「ですがタクト、あれはいただけませんね」
「え?」
「勝負を早く決めすぎですわ。相手の動向も見てあげませんと」
さっぱり意味が理解できない。勝つだけではダメという事か?
「師匠、それはどういう事でしょう?」
「あれでは見ている人達が状況を理解できません。改めて私が戦い方を教えてさし上げますわ」
「は、はぁ……」
私は呆れつつもエレノーラ様とともに闘技場を後にする。こうして私と勇者メルキウスの決闘は幕を閉じた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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「決闘、開始!」
ザギール将軍の声が響き渡る。メルキウスが技発動の構えに入る。
「奥義、こ」
メルキウスが技を繰り出そうと筋肉を動かした瞬間を私は見逃さなかった。いや、それを待っていたという方が正しい。
突如頭上から闇と雷の巨大エネルギーが出現し、メルキウスめがけ直撃する。闘技場にいた関係者からすれば一瞬の出来事だったかもしれない。
だが私は周到に準備していた。闇に聖属性を少し紛れさせ、開放すれば一瞬で放出できるように。
雷のエネルギーを蓄積させ、一気に放電できるように。
それほどの大出力を微塵も感じさせないよう偽装して臨んでいた。
目の前の結果はただその積み重ねが結実しただけなのだ。
無詠唱での大技、『雷闇石火』の発動。
必殺技を繰り出そうとしていたメルキウスにはこれを避ける事はできない。仮に気付かれたとしても多分避けられなかっただろうが、私なりに保険を掛けたのだ。
メルキウスは黒焦げになり鎧がひしゃげて地面に叩きつけられる。
静寂が辺り一帯を包む。ザギール将軍が闘技場に現れ、メルキウスに歩み寄り状態を確認する。
「勇者メルキウスの死亡を確認。戦闘続行不可能と認め、勝者は大賢者タクトとする!」
ザギール将軍の宣告で勝敗は決した。突然の出来事にざわつく声が辺りから起こる。
「あれ?」
状況を見ている私の目から涙があふれ出ている。頬を伝い現象に気づいたのだ。
「お、おかしいな。何なんだ?」
私は涙を拭いながらゆっくりとメルキウスの遺体に向かう。
「これは…… 酷い」
メルキウスの遺体を見て呟く。人を殺めてしまったという事実が突きつけられる。
立ち尽くす私にザギール将軍が気付く。
「何だ? もう下がってよいぞ」
「助けないと」
私が近寄ろうとすると将軍が立ちはだかる。
「彼を愚弄する気か。許さぬぞ」
「違う。彼を救うのです」
「何を言っている? もう絶命している。気でも触れたか?」
ダメだ。この人と話してもらちが明かない。
「邪魔だ。どけ!」
私は魔法『衝撃』を唱える。将軍の巨体が吹き飛ぶ。
「ぐわぁ!!」
闘技場の壁にぶつかって静かになる。障害が取り払われ、私は目の前の遺体となったメルキウスに呪文を唱える。
「蘇生術!」
呪文を発動すると、彼の身体に緑色の光が宿る。つぶれた鎧が元通りになり、身体がみるみる再組成されていく。緑色の光が消えると、メルキウスの目が開く。
「お、俺は……」
彼の復活を確認した私はザギール将軍のもとへ移動し、ヒールをかける。将軍が意識を取り戻す。
「悪かったな。これで許してほしい」
「待て!」
ザギール将軍の回復を確認して去ろうとした時、メルキウスが私を引き止める。
「お前、何をした?」
私は彼を見て答える。
「勝敗が決したから貴方を復活させた。それだけです」
「俺は…… 死んだのか。負けた、この俺が!」
両膝をついたままメルキウスが悔しがる。
「すまなかった。命まで取ることはなかった」
そうは答えたが目からまだ涙が止まらない。自分にもヒールをかけて何とか止める。
「敵の俺を…… 助けてくれたんだな。感謝する」
「ありがとう。その言葉で十分だ」
私はその場を立ち去った。もはや何も言う事はない。
「お疲れ様でした。早い決着でしたね」
出入口のところでエレノーラ様が私を迎えてくれる。
「私は初めて人を殺めてしまった。その事が深く刺さっています」
私はエレノーラ様に深く頭を下げた。
「なるほど、そうですか。では私から勝利のご褒美です」
エレノーラ様はそう言うと、魔法を発動する。
「傷ついた戦士を癒します。『聖女の癒し』」
エレノーラ様の魔法が私の身体と脳全体に染みわたる。傷ついた精神とショックをやわらげ、消滅させていく。
「ああ、心が洗われていく……。師匠ありがとうございます」
私は完全に立ち直ることができた。だがエレノーラ様はどこか不満げだ。
「ですがタクト、あれはいただけませんね」
「え?」
「勝負を早く決めすぎですわ。相手の動向も見てあげませんと」
さっぱり意味が理解できない。勝つだけではダメという事か?
「師匠、それはどういう事でしょう?」
「あれでは見ている人達が状況を理解できません。改めて私が戦い方を教えてさし上げますわ」
「は、はぁ……」
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