冴えない社畜、異世界で最凶聖女に地獄指導されて魔王軍に挑む

ワスレナ

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第45話 冒険者キラー

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「みんな、逃げろ!」

 グレッグが異変に気付き叫ぶ。直後、グレッグの身体が地面に叩きつけられる。

「ぐおっ!」

 岩の向こうの敵がグレッグに何かしたのか。おそらくは……重力?

「グレッグ!」

 カーラがグレッグを案じて叫ぶ。アーノルドが身構える。

解除ディスペル!」

 私はグレッグに向けて魔法を発動する。グレッグは開放され、私の方に転がってきてから立ち上がる。

「サンキュー、タクト。助かったぜ」

「グレッグ、早く後ろに!」

 私はグレッグ達を後ろに逃がし、前に出て冒険者キラーに対峙する。岩の向こうから男が一人現れる。

「ほう。俺の魔術を破るとはな。一匹味のある奴が混ざっているのか」

 全身赤の皮鎧に身を包み雷対策をしている。がっちりした体形で身長は百七十センチ以上はありそうだ。顔つきからして年齢は三十代くらいか。

「冒険者狩りをしているのか?」

 私は率直な疑問をぶつける。男は不敵な笑みを浮かべ答える。

「ああそうだ。弱い奴をいたぶるのが快感なんだわ!」

 彼はニヤつき右手の剣をブンブン小刻みに振る。

「クズ野郎の発想だな」

「弱い奴が悪いんだよお! 貴様、ユーデル=カーマン様にクズ呼ばわりして生きて帰れると思うな!」

 ユーデルは何か呪文を唱えたようだ。効果が発動する。

「重力波が得意なのか。『解除ディスペル』」

 私は彼の術を破ってみせる。ユーデルは少し驚いた表情を見せる。

「ほう。さっきの力はまぐれではないということか」

「グレッグ達はやらせん!」

「無駄だ。俺はすべてを焼き尽くす!」

「そうか。ならば」

 私はグレッグ達に対して結界を張る。ユーデルは悠然ゆうぜんとして私の所作を見ている。

「これでよしと。いつでも来いよ」

「抜かせ!」

 ユーデルが構えを取り術を発動させる。

「紅蓮爆衝!」

 私めがけて広範囲の爆発が起こる。グレッグ達にも及ぶが、結界で守られ無傷だ。爆炎が晴れ私達が無傷と知ると、次の攻撃を繰り出してくる。

「爆炎弾!」

 炎の球がいくつも私を襲う。私は魔法を繰り出す。

逆転反射アンチ・リフレクト

 炎の球は私の前で氷の球に姿を変えて反射していく。球は正確にユーデルを射抜く。

「ぐおぉっ!」

 ユーデルは凍傷を負い膝をつく。

「貴様何者だ? 本当にD級冒険者か?」

 彼はかなり焦りながら私に対し術を使う。

「鑑定発動!」

 彼の目が光る。何かが見えたのか。私をじっと見つめている。

「バカな! G級だと? ステータスオール1だと……。あり得ぬ……何なんだ!」

「教える義理はないよ」

 ユーデルに焦りの色が見える。

「そうか……偽装だな。ならば、『看破』!」

 何かを発動する。特に体に変化はない。

「ぐおおあぁ!!!」

 ユーデルは突然目に手を当てて苦しみだす。

「何をしたのかは知らないが、私の情報は盗ませないよ」

 ユーデルは自分に呪文を唱える。

「ヒール!」

 魔法が発動しユーデルは回復する。

「回復呪文も使えるのか。器用だな」

「貴様、何をした!」

「さあな。知ってても教えない」 

「くそっ! このままではまさんぞ!」

「B級冒険者なんだってな。全力で来いよ」

「貴様あぁ!!」

 私の挑発に乗りユーデルは激昂げきこうする。彼は強化魔法をかける。身体が赤く光り力を上げる。

「これでもうお前は終わりだ! 今までの俺だと思うな!」

 ユーデルは静かにスキルを発動する。
 
「『灼熱呪』、『信仰の炎』」

 ユーデルの身体が青く光る。スキル効果で再び力も上がっているようだ。
 
「神よ、彼らに灰の安息を――!」

 ユーデルは全身を炎で包み、上空に巨大な十字型の火の剣を召喚する。

「『灰の審判ジャッジ・インフェルノ』!!」

 業火をまとった剣が振り下ろされる。彼にとっての必殺の一撃。

「これは避けられまい。死ねぇ!!」

 私は右手を上げて人差し指を指す。

絶対零度アブソリュート・ゼロ

 眼前に迫る業火に対し私の魔法が発動する。

 赤々と燃え盛る炎の先が青い氷に変化した次の瞬間、業火は一気に氷の壁と化す。

「な、何だと!」

 火の剣はまたたく間に凍りつき、所持しているユーデルもまた凍りつく。

「ああ、やってしまったな。攻撃……」

 結界の中でそれらの光景を目撃していたメンバー達も驚きを隠せなかった。

「ど、どうなってるの……」

「タクト、すごい事をやっちまったな」

 グレッグ達の言葉を聞いている余裕はない。私はユーデルが動かない事を確認する。

「よし、大丈夫そうだな。彼らを助けに行くよ」

 私は結界を解除し、走りながらグレッグ達に岩陰の向こうに行くよう合図する。

 一足先に岩場の向こうにたどり着いた私は惨状を目にする。

「やはりか。これが冒険者キラーなのか」

 グレッグも見たであろう、性別もわからなくなった四人の冒険者の焼死体がある。もはや息をしていない。

 追いついてきたグレッグが私に話しかける。

「タクト、残念だがもう手遅れだ……」

「そうか。じゃあやることは決まったな。敵が来ないか見張っていてほしい」

 私はしっかりした眼差しでグレッグに依頼する。

「なっ! あ、ああ……。わかった」

 グレッグは意図を察してくれたようだ。カーラとアーノルドに指示を送る。皆が三方に散って監視活動を始める。

「本当にひどい。まずはその身体から。『エリアハイヒール』!」

 魔法が発動する。無残に放置された彼らの遺体にまばゆい光が包み込み、細胞レベルで再生を始める。五秒後、再生が完了する。だが当然息はしていない。

「よし、これで準備は整った」

 私は一人ずつに蘇生魔法、リザレクションを丁寧にかけていく。それから三分後、彼らは立ち上がり、心身ともに正常な状態を取り戻していた。

 リーダーを務めるファイターのオルジュ、パラディンのアッシュ、魔術師のミラ、僧侶のマアラ。復活した彼らは私に対して名乗り、深く感謝を述べる。

「グレッグ、儀式は終わったよ。戻ってきて」

 私は【勇ましき翼】の皆に呼びかける。声に気づいて戻ってきたグレッグが彼らの姿を見てひどく驚く。

「ま……まさか! こんなことが……」

 最初に彼らの惨状を目撃したグレッグが涙を流す。

「タクト、お前ってホントいい奴だな! わかっちゃいるが、改めて見直したぜ」

「まあ見捨てて行くわけにはいかないからな。じゃあ彼らと一緒に報告してくるよ」

「おう、行ってこい。みんなで待ってるぜ」

 グレッグの許可を得て、私は復活した彼らと共にギルド本部に報告しに行く。氷漬けの冒険者キラーを引き渡すために。

「グレーター・テレポート!」

 こうして冒険者キラー騒動は我々の前に出現し、ひとまずの収束を見たのだった。
 
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【まめちしき】

【ユーデル=カーマン】……34歳・男。【狂信の炎術士】の異名を持つ元B級冒険者で現在冒険者キラーの一員。元神官でありながら火を神と崇める狂信者。敵味方構わず戦場を業火で包む広域殲滅型の炎術士。その炎は祈りでは止められず、むしろ燃やす対象としか見ていない。

【灼熱呪】……炎属性耐性を一時的に無視して攻撃可能な狂信スキル。

【信仰の炎】……自傷しながら魔法威力を限界突破させる狂信スキル。

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