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第7章・南西地域での戦い
169・虚無の剣
幾度となく拳を合わせ、幾度となく魔導をぶつけ合う。
お互いの実力は拮抗――していない。
「くっ……」
「どうした? あの時お前が得た力は……その程度か?」
鋭い一撃が飛んでくる。私の腹部を狙う蹴り。
それを両手を交差させて防御するけど、彼の一撃は相当に重く、ビリビリと痺れるほどの感覚が伝わってくる。
折れはしなかったが、こんな攻撃を何度も受け続けてしまえば間違いなく腕がおかしくなる。
「っ……『シャドーリッパー』!」
「『シャドーリッパー』」
蹴りによって吹き飛ばされた私は、すぐさま魔導を解き放つのだけれど、彼は同じ魔導で対抗してきた。
私の影から現れたのはいくつかの影の刃。彼から現れたのは複数の刃。
私の『シャドーリッパー』は打ち消されてしまい、彼の刃が迫ってくる。
それをかわしている内に距離を詰められ、ゴウッという恐ろしい音と共に繰り出される私の側頭部を狙った蹴り。
それに対し辛うじて防御することには成功したものの、完全に腕が折れてしまう、嫌な音が響き渡る。
そしてそのまま私は自室の窓のところまで吹き飛び、外の方に飛び出してしまった。
「くぅぅっっ……『リ・バース』!」
落ちながらもすぐさま回復魔導を発動し、なんとか治癒するけど……彼は今まで戦った相手の中で格段に強い。
身体能力、魔導の威力……全てが違う。
それでいてなお余裕を持っているようだった。わざわざ私が回復するのを待っているのだから。
「まさか、ここまで差があるなんてね……」
「……いつまで様子見をしている? 本気が出せないのであれば、無理やり引き出してやろう。――現われろ『神創崩剣「ヴァニタス」』」
同じように窓から飛び出し、地面に降り立った彼が呼び寄せたのは……剣? 私の『フィリンベーニス』と同じように体から抜き放たれたそれは、消え入りそうなくらい見えにくい剣身。柄の装飾は荘厳と言えばいいのだろうか……。
私が知らない魔導だ。『人造命具』とは全然違う。私が……【白覇の勇者】だった時に使った……記憶が全くない。
「それは……?」
「これは『神創具』。神の力を用いて魔導により作り出した武具だ。
お前の記憶には無いだろうが、これも俺の武器の一つだ」
確かに記憶にない。武器の一つだと言われてもどうもピンと来ない。
注意深く彼の方を見てみるが、一向に彼が動く気配はない。
武器を手にしたまま、私の方を悠然と見ている。
「……なぜ、攻撃してこないのかしら?」
「決まっているだろう。お前も『人造命具』を使え。
それでこそ戦い甲斐があるというものだ」
……ふざけている。
私が『人造命具』を使うのを待っているって言うわけか。
いいだろう。お望み通り……正々堂々戦ってやる!
「来なさい! 『人造命剣「フィリンベーニス」』!」
私は『フィリンベーニス』を抜き放ち、そのままの勢いで彼の方に攻勢を仕掛けた。
斬り上げ、振り下ろし、横に一閃。それを彼はまるで指し示したかのように同じ速度・同じ力で繰り出し、私の攻撃を防いでくる。
……私の力量が完全に読まれている。これだけ精密に攻撃を仕掛けてくるなんて……。
「どうした? これだけか?」
「まだ……まだぁ! 『フィリンベーニス』、光は全てを塗り潰す……!」
私の言葉と同時に『フィリンベーニス』の白黒の刃が白に統一され、刃が煌めく。
もはや方法は選んでられない。徐々に生命を奪う白の剣の力を使わなければ、彼には対抗出来ない……!
「白の『フィリンベーニス』か。例え色を変えたとしても、かすり傷すら負わすことの出来ない今、意味はないな」
「それでも……貴方は警戒するでしょう? この状態のこれが当たればどうなるか……貴方もよく知っているはずよ」
「そうだな。なら、やってみろ……!」
今度は自分の番だと言うかのように剣を構え、地面を蹴った。
――速い!
私は応戦する構えを取り、待ち構える。
そのままの勢いで放たれた刺突はとてつもなく早く……逃げ切れるものではない。
ならばと彼の剣を防ぐことは諦め、逆に相打ち狙いで行くしか無い!
彼の剣先が完全に私の右肩を捉え……ここで私は魔導を発動した。
「『人造命鎧「ヴァイシュニル」』! 黒は全てを飲み込む!」
彼の剣はなんとか私の鎧に阻まれ――
「ぐっうぅっ……!」
「防げると思ったか? たかだか人が造った鎧が、神の剣を防げるわけがあるまい」
「くっ、思って……ないわよ!」
右肩が貫かれるのを構わず、私はそのまま彼の体に刃を一閃。
いくら攻守共に優れていようと、攻撃をした直後の隙を突けば完全に回避することは不可能……!
彼は致命傷を避けるように私の斬撃の軌道を読み、左手で剣を掴み取ってきた。
こいつ……なんて事を……!
左手に刃が深く食い込むのにも関わらず、思いっきり握りしめ、そのまま私の腹部に蹴りを飛ばしてくる。
まるで喧嘩でもするかのような単調な蹴りだけど……今この状況で回避することは出来ず、私は直撃を受けてしまった。
「くっ……ふっ……」
目の前で蹴りを放つ動作を見えたおかげで腕による防御の体勢を整えることは出来たけど……また嫌な音が、今度は体中に響く気がした。
ちっ、今日は骨がよく折れる……! いくら『リ・バース』で治るとはいっても、こうも折られては何の意味もない。
「『リ・バース』!」
私は再び回復魔導を発動させたのだけれど……他の傷に比べ右肩の治りが異様に遅い。
ふと右肩の方を見てみると、彼がつけた傷口が、まるで何も見えない穴の空いた虚のように見える。
一応『リ・バース』で徐々に治ってはいるようだけれど、まだ時間がかかりそうだ。
「これは……」
「『ヴァニタス』は魔力に関する全てをある程度阻害する。神と戦うにはこれくらいの力がないとな」
なるほど。私の『リ・バース』は彼の剣に阻害されているというわけか……。
この調子でいけば、身体強化をしたところで彼の斬撃を受けた瞬間解除されてしまうだろう。
そして、『ヴァイシュニル』は魔導で呼び出した鎧。実体は確かにあるが、元を辿れば私の魂の形を表現した魔導だ。
これでは防御に関して魔導を使う意味はないだろう。
対する彼は『リ・バース』を発動する様子もなく、左の手のひらからは白い光の粒が撒き散らされている。
かなり深い傷で、決して無視出来ないものなはずなのだが……。
「……回復はしないの?」
「必要ない。この程度、ちょうどいいハンデだ」
この男は……どこまで余裕な態度を取っているつもりだ。
まあいい。今も光の粒は私の『ヴァイシュニル』によって吸収され、糧になっている。
そっちがその気なのであれば、いいだろう。必ず後悔させてやる!
「『フィロビエント』!」
次々と解き放たれる風の刃を涼しげにかわしながら徐々に私の方に迫りくる彼。
防ぐならわかるけど、あの魔導をかわしてくるか……!
「『シャドーステイク』!」
それでも諦めるわけにはいかない。
私は今一度攻勢に出るべく、彼の足元を影の杭で縫い付けると同時に左右にステップを踏みながら逆に近寄っていく。
『シャドーステイク』を一瞥した彼はそのままなんの動揺も見せずに私の動きに注視してくる。
やはり私の出方は最初からわかってるというわけか……。
私が『シャドーステイク』を使う主な目的は突如動きを封じられた相手の動揺と隙を突く為のものなのだが……こうも落ち着いていられると全く意味がない。
動きを阻害する役割はきちんと果たしてくれてるとはいえ、彼相手ではそれもあまり期待できそうにない。
幾度となく剣を合わせ、彼の動作の隙を模索するんだけど……一向にその様子が見えない。
動きが単調なんじゃない。出てきた隙を突こうとした瞬間、それが潰される。
彼の動きに私がついていけていない証拠だ。これじゃあいくら攻撃をしてもラチがあかない。
――負ける。
一瞬、頭にその言葉がよぎった。
セツキのときとは違う圧倒的実力差。魔導も剣技も今の私では彼に叶わず、戦うというよりもあしらわれている感覚が強い。
このまま戦っても勝機は薄い……。
なら、私も覚悟を決めるしかないだろう。
勝機が無いのであれば……無理やり作ってやる。
私は帰る。力を得るためだけじゃない。
彼を倒して、フレイアールの、ケットシーの……アシュルの元に必ず帰る……!
待っていてくれる人がいるから……守りたい人が、大切な人がいるから、私は必ず帰ってみせる……!!
お互いの実力は拮抗――していない。
「くっ……」
「どうした? あの時お前が得た力は……その程度か?」
鋭い一撃が飛んでくる。私の腹部を狙う蹴り。
それを両手を交差させて防御するけど、彼の一撃は相当に重く、ビリビリと痺れるほどの感覚が伝わってくる。
折れはしなかったが、こんな攻撃を何度も受け続けてしまえば間違いなく腕がおかしくなる。
「っ……『シャドーリッパー』!」
「『シャドーリッパー』」
蹴りによって吹き飛ばされた私は、すぐさま魔導を解き放つのだけれど、彼は同じ魔導で対抗してきた。
私の影から現れたのはいくつかの影の刃。彼から現れたのは複数の刃。
私の『シャドーリッパー』は打ち消されてしまい、彼の刃が迫ってくる。
それをかわしている内に距離を詰められ、ゴウッという恐ろしい音と共に繰り出される私の側頭部を狙った蹴り。
それに対し辛うじて防御することには成功したものの、完全に腕が折れてしまう、嫌な音が響き渡る。
そしてそのまま私は自室の窓のところまで吹き飛び、外の方に飛び出してしまった。
「くぅぅっっ……『リ・バース』!」
落ちながらもすぐさま回復魔導を発動し、なんとか治癒するけど……彼は今まで戦った相手の中で格段に強い。
身体能力、魔導の威力……全てが違う。
それでいてなお余裕を持っているようだった。わざわざ私が回復するのを待っているのだから。
「まさか、ここまで差があるなんてね……」
「……いつまで様子見をしている? 本気が出せないのであれば、無理やり引き出してやろう。――現われろ『神創崩剣「ヴァニタス」』」
同じように窓から飛び出し、地面に降り立った彼が呼び寄せたのは……剣? 私の『フィリンベーニス』と同じように体から抜き放たれたそれは、消え入りそうなくらい見えにくい剣身。柄の装飾は荘厳と言えばいいのだろうか……。
私が知らない魔導だ。『人造命具』とは全然違う。私が……【白覇の勇者】だった時に使った……記憶が全くない。
「それは……?」
「これは『神創具』。神の力を用いて魔導により作り出した武具だ。
お前の記憶には無いだろうが、これも俺の武器の一つだ」
確かに記憶にない。武器の一つだと言われてもどうもピンと来ない。
注意深く彼の方を見てみるが、一向に彼が動く気配はない。
武器を手にしたまま、私の方を悠然と見ている。
「……なぜ、攻撃してこないのかしら?」
「決まっているだろう。お前も『人造命具』を使え。
それでこそ戦い甲斐があるというものだ」
……ふざけている。
私が『人造命具』を使うのを待っているって言うわけか。
いいだろう。お望み通り……正々堂々戦ってやる!
「来なさい! 『人造命剣「フィリンベーニス」』!」
私は『フィリンベーニス』を抜き放ち、そのままの勢いで彼の方に攻勢を仕掛けた。
斬り上げ、振り下ろし、横に一閃。それを彼はまるで指し示したかのように同じ速度・同じ力で繰り出し、私の攻撃を防いでくる。
……私の力量が完全に読まれている。これだけ精密に攻撃を仕掛けてくるなんて……。
「どうした? これだけか?」
「まだ……まだぁ! 『フィリンベーニス』、光は全てを塗り潰す……!」
私の言葉と同時に『フィリンベーニス』の白黒の刃が白に統一され、刃が煌めく。
もはや方法は選んでられない。徐々に生命を奪う白の剣の力を使わなければ、彼には対抗出来ない……!
「白の『フィリンベーニス』か。例え色を変えたとしても、かすり傷すら負わすことの出来ない今、意味はないな」
「それでも……貴方は警戒するでしょう? この状態のこれが当たればどうなるか……貴方もよく知っているはずよ」
「そうだな。なら、やってみろ……!」
今度は自分の番だと言うかのように剣を構え、地面を蹴った。
――速い!
私は応戦する構えを取り、待ち構える。
そのままの勢いで放たれた刺突はとてつもなく早く……逃げ切れるものではない。
ならばと彼の剣を防ぐことは諦め、逆に相打ち狙いで行くしか無い!
彼の剣先が完全に私の右肩を捉え……ここで私は魔導を発動した。
「『人造命鎧「ヴァイシュニル」』! 黒は全てを飲み込む!」
彼の剣はなんとか私の鎧に阻まれ――
「ぐっうぅっ……!」
「防げると思ったか? たかだか人が造った鎧が、神の剣を防げるわけがあるまい」
「くっ、思って……ないわよ!」
右肩が貫かれるのを構わず、私はそのまま彼の体に刃を一閃。
いくら攻守共に優れていようと、攻撃をした直後の隙を突けば完全に回避することは不可能……!
彼は致命傷を避けるように私の斬撃の軌道を読み、左手で剣を掴み取ってきた。
こいつ……なんて事を……!
左手に刃が深く食い込むのにも関わらず、思いっきり握りしめ、そのまま私の腹部に蹴りを飛ばしてくる。
まるで喧嘩でもするかのような単調な蹴りだけど……今この状況で回避することは出来ず、私は直撃を受けてしまった。
「くっ……ふっ……」
目の前で蹴りを放つ動作を見えたおかげで腕による防御の体勢を整えることは出来たけど……また嫌な音が、今度は体中に響く気がした。
ちっ、今日は骨がよく折れる……! いくら『リ・バース』で治るとはいっても、こうも折られては何の意味もない。
「『リ・バース』!」
私は再び回復魔導を発動させたのだけれど……他の傷に比べ右肩の治りが異様に遅い。
ふと右肩の方を見てみると、彼がつけた傷口が、まるで何も見えない穴の空いた虚のように見える。
一応『リ・バース』で徐々に治ってはいるようだけれど、まだ時間がかかりそうだ。
「これは……」
「『ヴァニタス』は魔力に関する全てをある程度阻害する。神と戦うにはこれくらいの力がないとな」
なるほど。私の『リ・バース』は彼の剣に阻害されているというわけか……。
この調子でいけば、身体強化をしたところで彼の斬撃を受けた瞬間解除されてしまうだろう。
そして、『ヴァイシュニル』は魔導で呼び出した鎧。実体は確かにあるが、元を辿れば私の魂の形を表現した魔導だ。
これでは防御に関して魔導を使う意味はないだろう。
対する彼は『リ・バース』を発動する様子もなく、左の手のひらからは白い光の粒が撒き散らされている。
かなり深い傷で、決して無視出来ないものなはずなのだが……。
「……回復はしないの?」
「必要ない。この程度、ちょうどいいハンデだ」
この男は……どこまで余裕な態度を取っているつもりだ。
まあいい。今も光の粒は私の『ヴァイシュニル』によって吸収され、糧になっている。
そっちがその気なのであれば、いいだろう。必ず後悔させてやる!
「『フィロビエント』!」
次々と解き放たれる風の刃を涼しげにかわしながら徐々に私の方に迫りくる彼。
防ぐならわかるけど、あの魔導をかわしてくるか……!
「『シャドーステイク』!」
それでも諦めるわけにはいかない。
私は今一度攻勢に出るべく、彼の足元を影の杭で縫い付けると同時に左右にステップを踏みながら逆に近寄っていく。
『シャドーステイク』を一瞥した彼はそのままなんの動揺も見せずに私の動きに注視してくる。
やはり私の出方は最初からわかってるというわけか……。
私が『シャドーステイク』を使う主な目的は突如動きを封じられた相手の動揺と隙を突く為のものなのだが……こうも落ち着いていられると全く意味がない。
動きを阻害する役割はきちんと果たしてくれてるとはいえ、彼相手ではそれもあまり期待できそうにない。
幾度となく剣を合わせ、彼の動作の隙を模索するんだけど……一向にその様子が見えない。
動きが単調なんじゃない。出てきた隙を突こうとした瞬間、それが潰される。
彼の動きに私がついていけていない証拠だ。これじゃあいくら攻撃をしてもラチがあかない。
――負ける。
一瞬、頭にその言葉がよぎった。
セツキのときとは違う圧倒的実力差。魔導も剣技も今の私では彼に叶わず、戦うというよりもあしらわれている感覚が強い。
このまま戦っても勝機は薄い……。
なら、私も覚悟を決めるしかないだろう。
勝機が無いのであれば……無理やり作ってやる。
私は帰る。力を得るためだけじゃない。
彼を倒して、フレイアールの、ケットシーの……アシュルの元に必ず帰る……!
待っていてくれる人がいるから……守りたい人が、大切な人がいるから、私は必ず帰ってみせる……!!
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