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105・試験当日

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 ベルーザ先生の話を聞いてから五日後。ファオラの16の日に試験は始まった。午前に学力。午後に実技の二回に分けて行われ、結果発表は五日後の21の日に行われるそうだ。結構急だとも思ったけれど、夏休みに入る前にベルーザ先生が話していたそうだ。
 終業式が終わった直後に軽く触れていたそうだけど……まるで世間話でもするかのようにさらっと流していたとリュネーが教えてくれた。

 私のように五日前のホームルームではっきり知った生徒達はかなり慌ててる子と、冷静に落ち着いてる子の両極に分かれて、終業式の日にしっかりと聞いてた生徒は、比較的リラックスしている子が多かった。
 今の教室で焦って勉強しているのは大体前者で、諦めの視線で達観しているのは後者だろう。

「エールティア様、準備は万端ですか?」
「ええ。ジュールの方は?」
「お任せください! エールティア様と一緒に魔王祭に行くのはこの私です!!」

 ぐっと拳に力を込めてるけれど、まるでデートにでも行くのか様な気合の入れようだ。

「そ、そう。なら、頑張ってね」
「はい!」

 周囲を威圧したり、嫌悪したりはなくなったけれど、私への熱は結局冷めなかった。
 それでもかなりマシになったからいいかもね。

 リュネーの方にも声を掛けようとしたのだけれど……それを遮るようにベルーザ先生が教室の中に入ってきた。

「お前達、そろそろ試験を始めるぞ。各自席に着け」

 その言葉と同時に生徒のみんなが一気に散らばって、自分たちの席に着いた。ベルーザ先生はそれを一瞥すると、前の席の子にテスト用紙を配っていく。それを一枚取っては後ろに回していく。

「よし、それでは今から一時間がテストの時間だ。決して他人の解答用紙を見たり、卑怯な真似をしないように」

 全員に行き届いたのを確認したベルーザ先生は警戒するように見回してから、『試験開始』を宣言した。
 一斉に紙の音が聞こえる中、私の方もテスト用紙と向き合う。きちんと勉強していれば問題ないくらいの内容だけれど、ちょっと意地悪な問題も隠されている。
 慌てず落ち着いて、じっくりと考えればそれなりに点数が取れるだろう。

 ――

 歴史のテストの後には算術に現代学が続いて、昼食後には実技試験の為に闘技場に集まっていた。

「頭使って頭痛すんのに、今度は身体動かすのかぁ……」
「それでも色々悩むよりはよっぽどマシだぜ」

 午前の学力テストで散々だった人や、実技試験に全てを欠けて言うような男たちは、息を取り戻したかのように騒ぎ立ててるけれど、よくもまあ元気なものだ。

「ティアちゃん、どうだった?」
「まあまあ、ね。リュネーの方はどう?」
「私はばったりだよ! ……ジュールちゃんは大丈夫なのかな」

 確かな手ごたえを感じているような素振りを見せているリュネーとは対照的に、ジュールは少し落ち込んでいた。

「あの子、算術の方に少し自信がないみたいでね」
「あー……計算、難しい問題もあったね」

 自分の数式が本当に合っているのか、自信がないようだ。こればっかりはもう仕方ない。ジュールが気持ちを切り替えるのを待つだけだろう。

「それが実技の方にも響かないと良いんだけど……。リュネーはそこのところ大丈夫?」
「うん! ティアちゃんのおかげだね」

 ベルーザ先生からテストの話が出てきた時、五日の間だけ戦闘についてアドバイスをしていた。もちろん、ジュールとレイアの二人も一緒にね。
 短い間だったけれど、それでも十分自信を付けた様子のリュネーを見ると、私も少しは手伝った甲斐があるというものだ。

「よし、お前達全員揃ったな?」

 しばらくの間、軽く身体をほぐしていると、ベルーザ先生を筆頭に複数の先生が動きやすそうな軽装で現れた。

「実技試験は僕達教師と一対一の実戦だ。まずはお前達のクラスから始めるぞ」
「どの先生がしてくれるか選べるんですか?」
「最初が僕。次はエンデュラ先生、ラウロ先生、ルコッティ先生の順で行う。お前達に選ばせていたら試験にならないからな」

 生徒の一人が手を挙げて質問すると、ベルーザ先生はそれに淡々と答えてくれた。
 中には万が一を想定して皮の鎧を着ている先生もいるけれど、基本的に軽装で、これから戦うような姿には見えない。

 ……まあ、私も決闘の時は大概そうだったんだけれど。
 この世界には、魔力を通すと刃を通しにくくなるほどの硬さになる服がある。私達の制服がそれで、先生の服もそれなのだろう。

「それでは早速始めるぞ。まずはエールティアから」
「私ですか?」
「ああ。疲れた状態でお前の相手をするのはここにいる全員がごめんだからな」

 早く来いとでも言うかのような態度を取っているけれど、そんな理由で一番最初になったのか……。
 ここで文句を言っても仕方ないから、いつも通りに戦うとしよう。

「それでは、お手柔らかにお願いしますね」
「……本来はお前のセリフだろうけど、むしろこっちの方がお願いしたいくらいだ」

 軽く笑ったベルーザ先生はゆっくりと剣を構えて私の真正面に立った。堂の入った構えで、生徒とは明らかに違う雰囲気を感じる。戦いの気配を感じながら、私も静かに戦闘態勢に入るのだった――。
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