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251・ドワーフの激震②(レイアside)
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「な……!? 『人造命具』……!?」
突然現れたフォルスが呼び出した【フュレットンチャーガ】に驚いた少女を無視して、フォルスは迫りくるハンマーに相対する。
その直前に【フュレットンチャーガ】の赤い部分が淡く光り、盾状の魔力の塊が出現する。受け止めたハンマーがフォルスの想像以上に重く、踏ん張った足に力を込めても、地面を擦りながら大きく後退する事になったが……なんとか防ぐ事に成功した。
フォルスが受け止めている間にレイアは邪魔にならないように避けていたが、彼の使った『人造命具』に驚きを禁じ得なかったようだ。
「フォルス、いつの間に『人造命具』なんて……」
「俺だって、一応特待生なんだぜ? いつまでもエールティアに頼ってばかりはいられないってな」
にやりと格好の良い事を言ったフォルスは、内心『決まったな』などと思っていた。
そんな心を見透かすように、微妙に呆れた表情でウォルカが見ていた視線を気付かずに、胸を張っているフォルスは滑稽でもあった。
「フーワロ隊長のハンマーが止められるなんて……」
「学生が『人造命具』を……」
「狼狽えない!」
ざわつきが兵士達の中に広がる中、いつの間にか手元にハンマーを戻していたフーワロと呼ばれた少女は、思いっきりハンマーを振り下ろして地面を揺らした。
ドォォンッ、という激しい音共に、この場にいる全員の視線を集めたフーワロは、好戦的な笑みを浮かべてレイア達三人を見た。
「たかだか一回の攻撃が防がれただけ。一々馬鹿みたいに動揺しないでよ」
「し、しかし……」
「敵がここにいる! ならあんた達がしなきゃいけない事はなに!?」
「はっ……はっ! 目の前の敵を倒すことにあります!」
「だったらさっさとしなさい! 魔導兵はあたしのサポートと『収束光砲』のチャージッ!」
フーワロの一喝で士気を取り戻した兵士達は、再び攻撃を開始した。その攻撃はフーワロにフレンドリーファイアをしかねない程の密度と範囲だったが、フーワロはそれに満足して、ハンマーを握り締めて三人に向かって走り出した。
「あんなちっさいのに、よくまとめ上げてるよな」
「聖黒族だって同じようなものでしょ。見た目だけで判断しちゃだめだよ」
「わかってる、さ!」
上手く魔導を避けながら会話をするフォルスとウォルカに割って入るように、フーワロはハンマーを振り下ろす。
「話なんて随分余裕ね!」
「そっちだって話をしてたじゃないか。油断しなけりゃ、問題ねぇだろ」
「いいじゃない。その減らず口、叩きのめしてあげる! 【ファストアップ】!」
フーワロは魔導を発動させると同時に自身の速度を上昇させ、フォルス、ウォルカ、レイアの順に攻撃を加える。防御に回ったが為に一瞬動きが止まった三人に、魔導兵が生み出した炎の矢が雨のように降り注ぐ。
「このっ……【リフレクトディアブレリー】!」
フォルスは盾状の光を。レイアは魔導を反射する壁を。そしてウォルカは……フーワロの攻撃は避けられたが、その風圧で吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる形で難を逃れていた。
「あ、くっ……なんで僕だけこんな目に……」
「あんなに勢いよく叩きつけられたのに、よく無事だったわね」
「咄嗟に体中の魔力をより強く纏ったからだよ。それに、魔導で衝撃を和らげたからね」
小妖精族であるウォルカにとって、他の種族の攻撃はどんな軽いものでも致命的な隙になりやすい。だからこそ、普通は当たらない事を重視する傾向にあるのだが……ウォルカは更に上を目指した。
当たりにくい小妖精族でも、それを上回る攻撃を放つ敵は必ず存在する。だからこそ、それを補うための戦略だった。
「だけど……このままじゃ、いずれやられる。あの隊長の動き、尋常じゃないよ」
三人ともなんとか攻撃を防ぐ事出来たが、フーワロの一撃は重く鋭い。それでいて振り回している本人は自由自在にそれを操る。加えて魔導兵の援護とも言えない攻撃の中でそれが行われている。はっきり言って異常だった。
それは言葉にしたウォルカ以外の二人もよくわかっている。
フォルスの【フュレットンチャーガ】は、その武器を用いた攻撃と防御をサポートする効果は持っているが、素早い動きができるようには出来ていない。
まだ効果を知らないフォルスとレイアでも、それが薄々と分かっていた。だからこそ、このままでは不味いと思ったのだ。
「……私がなんとかする」
決意に満ちた表情のレイア。それだけで、彼女が何をしようとしているのかわかるほどに、真剣な顔だった。
「最初に言ったはずだよ。僕達じゃ、君の攻撃に巻き込まれるって」
「だったら、ここで死ぬ? ティアちゃんの役にも立たずに? 私はそんなの、絶対嫌」
エールティアの為にここまで来た。彼女が好きだから。大好きだから。
ただそれだけの思いで、レイアはこの場に立っている。
そんな彼女の想いを止める事が出来るほどの熱を持っている仲間は……この場のどこにもいなかった。
「私は勝つ。この場も、その先も! ティアちゃんが……エールティア姫様が、皇太子に相応しい御方なんだ! 誰の邪魔も……させない!!」
愛しい人の為に、今最後の楔が解き放たれる。
それは純粋な想い。火竜と闇竜の血と力を正しく受け継ぐ、始竜レイア・ルーフの姿だった。
突然現れたフォルスが呼び出した【フュレットンチャーガ】に驚いた少女を無視して、フォルスは迫りくるハンマーに相対する。
その直前に【フュレットンチャーガ】の赤い部分が淡く光り、盾状の魔力の塊が出現する。受け止めたハンマーがフォルスの想像以上に重く、踏ん張った足に力を込めても、地面を擦りながら大きく後退する事になったが……なんとか防ぐ事に成功した。
フォルスが受け止めている間にレイアは邪魔にならないように避けていたが、彼の使った『人造命具』に驚きを禁じ得なかったようだ。
「フォルス、いつの間に『人造命具』なんて……」
「俺だって、一応特待生なんだぜ? いつまでもエールティアに頼ってばかりはいられないってな」
にやりと格好の良い事を言ったフォルスは、内心『決まったな』などと思っていた。
そんな心を見透かすように、微妙に呆れた表情でウォルカが見ていた視線を気付かずに、胸を張っているフォルスは滑稽でもあった。
「フーワロ隊長のハンマーが止められるなんて……」
「学生が『人造命具』を……」
「狼狽えない!」
ざわつきが兵士達の中に広がる中、いつの間にか手元にハンマーを戻していたフーワロと呼ばれた少女は、思いっきりハンマーを振り下ろして地面を揺らした。
ドォォンッ、という激しい音共に、この場にいる全員の視線を集めたフーワロは、好戦的な笑みを浮かべてレイア達三人を見た。
「たかだか一回の攻撃が防がれただけ。一々馬鹿みたいに動揺しないでよ」
「し、しかし……」
「敵がここにいる! ならあんた達がしなきゃいけない事はなに!?」
「はっ……はっ! 目の前の敵を倒すことにあります!」
「だったらさっさとしなさい! 魔導兵はあたしのサポートと『収束光砲』のチャージッ!」
フーワロの一喝で士気を取り戻した兵士達は、再び攻撃を開始した。その攻撃はフーワロにフレンドリーファイアをしかねない程の密度と範囲だったが、フーワロはそれに満足して、ハンマーを握り締めて三人に向かって走り出した。
「あんなちっさいのに、よくまとめ上げてるよな」
「聖黒族だって同じようなものでしょ。見た目だけで判断しちゃだめだよ」
「わかってる、さ!」
上手く魔導を避けながら会話をするフォルスとウォルカに割って入るように、フーワロはハンマーを振り下ろす。
「話なんて随分余裕ね!」
「そっちだって話をしてたじゃないか。油断しなけりゃ、問題ねぇだろ」
「いいじゃない。その減らず口、叩きのめしてあげる! 【ファストアップ】!」
フーワロは魔導を発動させると同時に自身の速度を上昇させ、フォルス、ウォルカ、レイアの順に攻撃を加える。防御に回ったが為に一瞬動きが止まった三人に、魔導兵が生み出した炎の矢が雨のように降り注ぐ。
「このっ……【リフレクトディアブレリー】!」
フォルスは盾状の光を。レイアは魔導を反射する壁を。そしてウォルカは……フーワロの攻撃は避けられたが、その風圧で吹き飛ばされて、地面に叩きつけられる形で難を逃れていた。
「あ、くっ……なんで僕だけこんな目に……」
「あんなに勢いよく叩きつけられたのに、よく無事だったわね」
「咄嗟に体中の魔力をより強く纏ったからだよ。それに、魔導で衝撃を和らげたからね」
小妖精族であるウォルカにとって、他の種族の攻撃はどんな軽いものでも致命的な隙になりやすい。だからこそ、普通は当たらない事を重視する傾向にあるのだが……ウォルカは更に上を目指した。
当たりにくい小妖精族でも、それを上回る攻撃を放つ敵は必ず存在する。だからこそ、それを補うための戦略だった。
「だけど……このままじゃ、いずれやられる。あの隊長の動き、尋常じゃないよ」
三人ともなんとか攻撃を防ぐ事出来たが、フーワロの一撃は重く鋭い。それでいて振り回している本人は自由自在にそれを操る。加えて魔導兵の援護とも言えない攻撃の中でそれが行われている。はっきり言って異常だった。
それは言葉にしたウォルカ以外の二人もよくわかっている。
フォルスの【フュレットンチャーガ】は、その武器を用いた攻撃と防御をサポートする効果は持っているが、素早い動きができるようには出来ていない。
まだ効果を知らないフォルスとレイアでも、それが薄々と分かっていた。だからこそ、このままでは不味いと思ったのだ。
「……私がなんとかする」
決意に満ちた表情のレイア。それだけで、彼女が何をしようとしているのかわかるほどに、真剣な顔だった。
「最初に言ったはずだよ。僕達じゃ、君の攻撃に巻き込まれるって」
「だったら、ここで死ぬ? ティアちゃんの役にも立たずに? 私はそんなの、絶対嫌」
エールティアの為にここまで来た。彼女が好きだから。大好きだから。
ただそれだけの思いで、レイアはこの場に立っている。
そんな彼女の想いを止める事が出来るほどの熱を持っている仲間は……この場のどこにもいなかった。
「私は勝つ。この場も、その先も! ティアちゃんが……エールティア姫様が、皇太子に相応しい御方なんだ! 誰の邪魔も……させない!!」
愛しい人の為に、今最後の楔が解き放たれる。
それは純粋な想い。火竜と闇竜の血と力を正しく受け継ぐ、始竜レイア・ルーフの姿だった。
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