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418・森の中の闇

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 私、レイア、雪風、ヴァティグ、ベアルの五人は、雪風が敵から教えてもらった場所――ガリュドスと呼ばれている町から森の方へと足を踏み入れていた。
 周囲に三つくらい似たような場所があったけれど、そのどれもがはずれだった。

 森とは呼べない規模だったり、そもそも誰かが入った後がなかったり……本当にあるのか怪しくなってきた時。不自然な道を見つけた。
 ぱっと見た感じでは森の中に入り込んだ木こりや狩人が使っているような道にも見えるのだけれど……そこから少し分かれるように地面が踏みならされている跡があった。
 僅かだからこそ、あまり地面を見ずに歩いてしまう森の中では気付きにくい。だけど一度気付いてしまえばなんで分かれ道の途中で途切れているのか疑問を感じてしまう――そんな塩梅の道だった。

「みんな、こっち」

 目的地が近くにあるかもしれない。静かにするように口元に人差し指を当ててこちらの方に来るように呼び掛ける。
 みんな静かに私が指さしている方を見て、納得した人は驚いて頷き返していた……のだけれど、わかっていない子は不思議そうにしていた。

「そこになにかあるのですか?」
「森の奥へと行く道がある。誰かが常用しているのだろう」

 ベアルの疑問にはヴァティグが答え、彼もそれで納得していた。
 レイアもそれで同じような顔をしていたけれど……こういうのは仕方ない。獣道と間違えてもおかしくないし、こういう場所に慣れていない人はまず見つける事が出来ない。むしろ雪風とヴァティグはよくわかった方だろう。

「ここからは静かに。余計な事は喋らないようにね」

 全員が頷いたのを確認して、より一層奥へと進む。道なき道を行くように歩いて行ったそこには、明らかにこの場に似つかわしくない人工物の砦が姿を現した。周囲には警戒するようにダークエルフ族と思しき兵士が三人いて、砦の上には更に見張りとして二人ほどいる。

「……どうやら当たりのようですね」

 ヴァティグは驚きながら小声でつぶやいていた。やはりいまいち信じ切れていなかったのだろう。これで彼らも本腰を入れるに違いない。

「どうしましょう。魔導を使おうにも人数が少し多いです」

 諦めるようにため息を吐いているレイアの言う通り、広範囲の魔導はたかだか五人では収まらないし、他の敵が気付く恐れがある。かといって一人ずつ魔導で倒すには多すぎる。二人くらい倒した辺りで冷静に戻られるだろう。
 ならこちらも五人なのだから一人一殺という手もあるのだけれど……ヴァティグはともかくベアルの方は不安要素でしかない。見つかる可能性を極力排除したい以上、それはあまり使いたくない。
 私一人ならなんとかなるけれど、たった一人で入ってもあまり意味はない。

「……とりあえずこの周囲を探ってみましょう。どこか入れる場所があるかも知れない」
「他に方法もありません。ここは見つからないように手分けをしましょう。二組に分かれて別々に回れば、どちらかが何かを見つけるかもしれません」

 ここは効率的に……そういいたいのだろう。五人で固まって移動するよりは良いだろうし、最悪どっちかが見つかって騒ぎになっている間に残った側が中に入ればいい。特に否定する要素もないからそれで納得する。

「私とベアルが左側を」
「右側は私達ね」

 ヴァティグとベアルが砦の周囲を左回りに進んでいくのを確認して、私達は右回りにどこか隙がないか確認していく。砦の前方は五人の見張りが存在していたけれど、ただ単に入り口であるあそこだけが厚いようで、こちら側は二人くらいしかいない。これなら彼らの視界の隙をついて入り込むことも、速攻で始末して中に入る事も出来る。

 だけどそれ以外に侵入できる経路がこちらには存在しない。後ろの方に回ってもそれは同じで……結局ヴァティグ達と合流するまでに他の侵入方法は見つからなかった。

「そっちはどう?」
「非常口だと思われる扉がありましたが、そちらは見張りが上と扉前に一人ずついました。排除するのは簡単でしょうが、音を立てずに同時に倒さなければなりません」

 なるほど。それもそれなりに難易度は高いけれど……正直今のメンバーならなんとかなるだろう。

「手早く拠点を潰すのがいいのではないですか? 貴女がたならそれも可能でしょう?」
「それだと拠点の中にある情報が手に入りません。可能ならば、次の拠点の場所を知っておいた方がいいはずです」

 ヴァティグの言う通り、私達が超広範囲の魔導を次々と叩きこめば拠点はあっという間に壊滅する。だけど単にここを潰しただけでは意味がない。次へと続く道筋――別の拠点の情報。それまでは見つけるまでは彼らに知られる訳にはいかない。

「ヴァティグが一刻も早くこの拠点をどうにかしたいのはわかる。だけど、ダークエルフ族は各国に同じような拠点を築いているに違いないの。出来るなら他の場所も潰したい。わかってくれるわね?」
「……わかりました。それなら再び二手に分かれましょう。私はともかく、ベアルは自分の身を守るので精一杯です。出来ればそちらのお二人のどちらかをこちらに付けていただければ――」
「それでしたら私が一緒に行きます。黒竜人族として、必ずお二人を御守りします」

 レイアが力強く胸を張っている。確かに彼女の人造命具は攻めにも守りにも適している。攻撃一辺倒になりがちな雪風よりは彼らを護衛しながら戦う事が出来るだろう。
 ヴァティグ達もどっちでもいいみたいだし……ここは彼女に任せる事にしよう。
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