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第七章 魔法王国の動乱
波打つ紅扉
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「1,000名を超える大部隊、どうやってこの城に入ったのかすこし疑問に思ったので尋問をしていたのですが」
「地下遺跡をつかったって話ではありませんでしたか?」
「それはそうなのですが……やや違和感は残りまして」
ヘンリックはそれだけの部隊を地下遺跡を経由して城内へ侵入させるのは、合理的ではないと思ったそうだ。
俺は地下遺跡の様相を思いだす。
まあ……確かに1,000部隊を移動させるにはすこし悪路すぎるが……。
俺の直観もあんまり納得はしてないし……。
ヘンリックに連れられ、玉座の間のいっかくに捉えられた捕虜のもとへやってきた。城の中でもっとも広い空間なので、ここが一時的な捕虜の集結地となっている。
「俺は、見たんだ……見たんだよ……! 本当だ、信じてくれよ……!」
おかしな様子の捕虜だった。
血走った眼玉は飛び出しそうなほどに見開かれ、いまにも叫びだしそうだ。
なにかに対して強烈に怯えているというのだろうか。
「おい、お前、さっき言ったことを話せ」
男はエフィーリアの姿にひどく慄いていたが次第にぼそぼそと語りだした。
「まず嵐の騎士団が地下遺跡をつかって城を落とすって話をしだして……ほとんどのことは嵐の騎士団が勝手にやってくれるって」
今回、城を襲った主犯はストームヴィルを団長とする精強な騎士団『嵐の騎士団』であった。その人数は200名にも満たない。そのため数的な問題で嵐の騎士団だけでの都市制圧は不可能であった。
そのためポロスコフィン領内から一定の数の騎士が選ばれ、嵐の騎士団の指揮下に組み込まれたという。ポロスコフィンの名のもと貴族院からゴーレムまで連れ出して泣き声の荒野での合戦にかこつけて城を堕とす算段だったという。
「地下遺跡には入ったんだ、確かに入った……平原の向こう、ジュラールの森のなかにある地表の遺跡群から」
「ジュラールの森、ですか?」
エフィーリアはそこで話を遮った。
声はややうわずっていた。
「どうしました」
「いえ、ジュラールの森は王都から馬で早駆けして1日ほどの距離が離れていますので……ちょっと驚いたといいますか」
馬で急いで1日……確かに妙な感じだ。そんな距離をずっと地下を通って、か。
ヘンリックが伝えたかったことはこれか?
「でも、すぐに城には着いたんだ、嵐の騎士団は特別な転移の魔術とか言ってて、紅い波打つ扉をくぐったんだ。そこで見たんだ、真っ赤な荒野を!」
言って男は途端に顔色を蒼白にし、頭をかかえた。
「地獄のようだった……! 死が蔓延しているのに、あそこは温かくて、命が溢れてて、だけど悲しんだ……恐ろしいんだ、真っ赤な血の河が流れているんだ……! おびただし屍が長い年月で山となって大地となって、ああ、どうして俺以外だれも見てないんだ!」
男はだいぶん混乱してきていたので、そこで話は切り上げた。
どうにも要領を得ない話だったが、いくつか参考になることあった。
ほかの捕虜にも質問を判明した事実として、嵐の騎士団はその”紅い波打つ扉”とやらをつかってずっと遠く離れた森から王城へ飛んできたというのだ。
つまるところテレポートということだろうか。
そんな魔術が……にわかには信じられない話だ。
「地下遺跡をつかったって話ではありませんでしたか?」
「それはそうなのですが……やや違和感は残りまして」
ヘンリックはそれだけの部隊を地下遺跡を経由して城内へ侵入させるのは、合理的ではないと思ったそうだ。
俺は地下遺跡の様相を思いだす。
まあ……確かに1,000部隊を移動させるにはすこし悪路すぎるが……。
俺の直観もあんまり納得はしてないし……。
ヘンリックに連れられ、玉座の間のいっかくに捉えられた捕虜のもとへやってきた。城の中でもっとも広い空間なので、ここが一時的な捕虜の集結地となっている。
「俺は、見たんだ……見たんだよ……! 本当だ、信じてくれよ……!」
おかしな様子の捕虜だった。
血走った眼玉は飛び出しそうなほどに見開かれ、いまにも叫びだしそうだ。
なにかに対して強烈に怯えているというのだろうか。
「おい、お前、さっき言ったことを話せ」
男はエフィーリアの姿にひどく慄いていたが次第にぼそぼそと語りだした。
「まず嵐の騎士団が地下遺跡をつかって城を落とすって話をしだして……ほとんどのことは嵐の騎士団が勝手にやってくれるって」
今回、城を襲った主犯はストームヴィルを団長とする精強な騎士団『嵐の騎士団』であった。その人数は200名にも満たない。そのため数的な問題で嵐の騎士団だけでの都市制圧は不可能であった。
そのためポロスコフィン領内から一定の数の騎士が選ばれ、嵐の騎士団の指揮下に組み込まれたという。ポロスコフィンの名のもと貴族院からゴーレムまで連れ出して泣き声の荒野での合戦にかこつけて城を堕とす算段だったという。
「地下遺跡には入ったんだ、確かに入った……平原の向こう、ジュラールの森のなかにある地表の遺跡群から」
「ジュラールの森、ですか?」
エフィーリアはそこで話を遮った。
声はややうわずっていた。
「どうしました」
「いえ、ジュラールの森は王都から馬で早駆けして1日ほどの距離が離れていますので……ちょっと驚いたといいますか」
馬で急いで1日……確かに妙な感じだ。そんな距離をずっと地下を通って、か。
ヘンリックが伝えたかったことはこれか?
「でも、すぐに城には着いたんだ、嵐の騎士団は特別な転移の魔術とか言ってて、紅い波打つ扉をくぐったんだ。そこで見たんだ、真っ赤な荒野を!」
言って男は途端に顔色を蒼白にし、頭をかかえた。
「地獄のようだった……! 死が蔓延しているのに、あそこは温かくて、命が溢れてて、だけど悲しんだ……恐ろしいんだ、真っ赤な血の河が流れているんだ……! おびただし屍が長い年月で山となって大地となって、ああ、どうして俺以外だれも見てないんだ!」
男はだいぶん混乱してきていたので、そこで話は切り上げた。
どうにも要領を得ない話だったが、いくつか参考になることあった。
ほかの捕虜にも質問を判明した事実として、嵐の騎士団はその”紅い波打つ扉”とやらをつかってずっと遠く離れた森から王城へ飛んできたというのだ。
つまるところテレポートということだろうか。
そんな魔術が……にわかには信じられない話だ。
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