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第12話 「君が欲しい」その言葉の意味を教えてください
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「……エルナ」
「はい、レオン様」
「こっちを向いてくれないか」
「今はダメです。この計算が終わるまでは」
午後の執務室。
私はレオン様の隣に設えられた専用のデスクで、領内の収支報告書の計算をしていた。
先日収穫された「エルナ様野菜」の売上や、今後の増産計画に伴う予算組みなど、やるべきことは山積みだ。
聖女時代に培った事務処理能力が、まさかこんなところで役に立つとは思わなかったけれど、レオン様の補佐ができるのは嬉しい。
けれど、問題が一つ。
私の主君であり婚約者である公爵様が、ちっとも仕事に集中してくれないのだ。
「計算など、セバスチャンか文官にやらせればいい。君が眉間に皺を寄せる必要はないんだ」
レオン様は不満げにペンを置き、私の椅子ごと自分の方へ引き寄せた。
クルリと回転させられ、私は彼と向かい合う形になる。
「皺なんて寄せていません。……レオン様こそ、王都軍の動きが怪しいのですから、防衛予算の確認を急がないと」
先日、隣領のロベルト様がもたらした情報によれば、王都軍が国境付近に集結しつつあるという。
表向きは魔獣討伐だが、その真意が私たちへの圧力であることは明白だ。
「対策はすでに打ってある。国境の結界密度を上げたし、ロベルトにも協力を要請した。……それに、奴らが動くにはまだ時間がかかる」
彼は私の手を取り、指輪の上から口付けた。
「だから今は、そんな無粋な連中のことより、君との時間を優先したい」
「もう……。公爵様がそんなにサボり魔だとは知りませんでした」
「サボっているわけではない。これは君への愛の確認作業だ。私の精神安定上、極めて重要な任務だ」
彼は真顔で言い切る。
最近のレオン様は、以前にも増して私への執着……いえ、愛情表現がストレートになっている。
「呪いが解けた反動」と本人は言っているけれど、それにしても限度というものがあるのではないだろうか。
「エルナ。……好きだ」
不意打ちのように紡がれる言葉。
その蒼い瞳に見つめられると、私は反論もできなくなってしまう。
「は、はい……私もです」
「『も』では足りないな。……君の口から、ちゃんと聞きたい」
彼は私の顎を指先で持ち上げ、顔を近づけてくる。
吐息がかかる距離。
心臓がうるさいほどに高鳴る。
コンコン。
絶妙なタイミングで、扉がノックされた。
「チッ……」
レオン様が露骨に舌打ちをして離れる。
入ってきたのはセバスチャンだった。彼は慣れたもので、主人の不機嫌オーラを華麗にスルーして一礼した。
「失礼いたします。旦那様、城下町の商人組合長がお目通りを願っております。例の野菜の取引価格について、ご相談したいとのことで」
「……分かった。応接室に通せ。すぐに行く」
レオン様は渋々立ち上がった。
そして、私の方を振り返り、名残惜しそうに頭を撫でた。
「すまない、エルナ。少し席を外す。……戻ったら、続きをしよう」
「続きなんてありません。いってらっしゃいませ」
私は真っ赤になって彼を送り出した。
パタンと扉が閉まると、私は大きく息を吐き、机に突っ伏した。
「……心臓に悪いわ」
このままでは、王都軍が来る前に、私の身が持たないかもしれない。
嬉しい悲鳴ではあるけれど、少しクールダウンが必要だわ。
私は気分転換に、図書室へ行くことにした。
***
アイスバーン城の図書室は、静寂に満ちていた。
高い天井まで届く本棚、重厚な革張りのソファ、そして窓から差し込む柔らかな午後の日差し。
私はお気に入りの窓際の席に座り、一冊の本を開いた。
それは、以前こっそりと見つけた恋愛小説だった。
タイトルは『氷の騎士と薔薇の姫』。
堅物で冷徹な騎士が、天真爛漫な姫君に振り回されながらも恋に落ちるという、王道にして鉄板のストーリーだ。
(ふふっ、なんだかレオン様みたい)
主人公の騎士が、不器用に姫君にプレゼントを贈るシーンを読んで、私はくすりと笑った。
レオン様も、あの歪な形の指輪をくれた時、あんな風に緊張していたっけ。
物語の中の二人は、障害を乗り越え、少しずつ距離を縮めていく。
そして、クライマックスの舞踏会のシーン。
騎士は姫君の手を取り、バルコニーで愛を告げるのだ。
『君が欲しい。……私のすべてを懸けて、君を手に入れたい』
「……きゃっ」
思わず変な声が出てしまった。
活字で読むと、なかなかに刺激的だ。
「欲しい」という言葉の響き。
それは単に「そばにいてほしい」という意味なのか、それとももっと深い、大人の意味を含んでいるのか。
私はパタンと本を閉じ、熱くなった頬を手で扇いだ。
いけない、こんな昼間から変な想像をしてしまっては。
私は聖女だったのだ。清廉潔白でなければ。
……まあ、今は元聖女だし、婚約者もいるのだから、少しおませな知識があってもバチは当たらないだろうけれど。
「何を読んでいるんだ? そんなに顔を赤くして」
「ひゃあっ!?」
突然背後から声をかけられ、私は本を取り落としそうになった。
振り返ると、いつの間にか戻ってきていたレオン様が、ソファの背もたれに手をかけて覗き込んでいた。
「レ、レオン様! い、いつの間に!」
「今戻ったところだ。執務室に君がいなかったから、ここだと思ってな」
彼は私の手から本を取り上げ、表紙を見た。
「『氷の騎士と薔薇の姫』……? なんだ、君はこういう物語が好きなのか?」
「か、返してください! ただの暇つぶしです!」
私は慌てて奪い返そうとしたが、彼は意地悪く本を高く掲げてしまった。
身長差があるせいで、背伸びをしても届かない。
「へえ……。騎士が姫に求愛する話か。ふむ、『君が欲しい』……か」
彼はパラパラとページをめくり、私が読んでいた箇所を正確に読み上げてしまった。
「や、やめてください! 恥ずかしいです!」
「なぜ恥ずかしがる? 恋人同士なら、これくらいの言葉は普通だろう」
彼は本をパタンと閉じ、私に返してくれた。
そして、そのまま私の隣に座り込み、逃げ場を塞ぐように肩を抱いた。
「それとも、君はまだ、こういう言葉に慣れていないのか?」
「……慣れるわけありません。聖女の教育では、恋愛ごとはご法度でしたから」
「そうか。カイル王子は、君に愛を囁かなかったのか?」
「あの人は……『君は地味だ』とか『もっと笑え』とか、注文ばかりでした。愛の言葉なんて、一度も」
思い出すのも忌々しい。
カイル殿下との思い出の中に、ピンク色のエピソードなんて一つもない。あるのは灰色の説教と、命令だけだ。
「……愚か者め」
レオン様が低く呟いた。
抱き寄せる腕に、力がこもる。
「私なら、一日中でも囁いてやるのに。……いや、言葉だけでは足りないな」
彼は私の髪を一房掬い取り、口付けた。
「エルナ。……先ほどの続きをしてもいいか?」
「つ、続きって……」
「『君が欲しい』という言葉の意味についてだ」
彼は真剣な眼差しで私を見据えた。
その瞳の奥には、図書室の静寂すら焼き尽くすような、青い炎が揺らめいている。
「私は、君が欲しい。……これは、君の聖女としての力を利用したいという意味ではない。もちろん、君がいてくれるおかげで領地は潤ったし、私の呪いも解けた。そのことには感謝している」
彼は言葉を選びながら、ゆっくりと語る。
「だが、たとえ君に聖女の力がなかったとしても……ただの無力な少女だったとしても、私は君を求めたと思う」
「……どうして、ですか?」
「一目惚れだったのかもしれない。あの吹雪の中、死にかけていた君を見た時……不思議と、目が離せなかった。この命を消してはいけないと、魂が叫んだんだ」
彼は私の頬に手を添えた。
ひんやりとした指先が、火照った肌に心地よい。
「そして、共に過ごすうちに確信した。君の優しさ、強さ、そして時折見せる無防備な笑顔。……そのすべてが、私を狂わせる」
「くるわせる、なんて……」
「大げさではない。今も、君に触れたくてたまらない。……君を、私だけのものにしてしまいたいという衝動を抑えるのに、どれほどの理性を総動員しているか」
彼は苦しげに眉を寄せた。
その表情が、あまりにも切実で、色っぽくて。
私は息をするのも忘れて見入ってしまった。
「エルナ。『君が欲しい』というのは……君の心も、身体も、未来も、すべてを私に預けてほしいという意味だ」
彼は一歩踏み込んできた。
「君を、私の妻として。……そして、一人の女性として愛したい」
ドクン、と心臓が跳ねた。
これはプロポーズだ。
あの指輪をくれた時のような契約の意味ではなく、もっと本能的で、情熱的な求愛。
「……教えてくれ、エルナ。君は、私をどう思っている? ただの『呪いを解くためのパートナー』か? それとも……」
彼は答えを待っている。
不安げに揺れる蒼い瞳。
最強の公爵様が、私の言葉一つに怯えている。
私は、自分の胸に手を当てた。
そこにあるのは、温かくて、甘くて、少し切ない感情。
王都にいた頃は知らなかった、これが「恋」というものなのだろう。
私は勇気を出して、彼の手を握り返した。
「……私も、レオン様が欲しいです」
「!」
「ずっとそばにいたいです。貴方の隣で、笑っていたい。……貴方が、私を必要としてくれるなら、私は貴方のものです」
精一杯の告白だった。
これ以上ないくらい、素直な気持ち。
レオン様の顔が、パッと輝いた。
まるで氷河期が終わり、一気に夏が来たような眩しい笑顔だ。
「エルナ……!」
彼は私を抱きしめ、そのままソファに押し倒すような勢いで覆いかぶさってきた。
「れ、レオン様!?」
「すまない、嬉しすぎて加減ができそうにない」
彼の顔が近づいてくる。
逃げ場はない。
というか、逃げたくない。
彼の唇が、私の唇に触れた。
最初は優しく、ついばむように。
次第に深く、熱く。
彼の舌が侵入してきて、私の思考を溶かしていく。
「んっ……」
図書室の静寂の中に、衣擦れの音と、甘い吐息だけが響く。
彼の大きな手が私の背中を這い、腰を抱き寄せる。
その指先から伝わる熱が、私の全身を駆け巡る。
どれくらいの時間が経っただろうか。
彼が唇を離した時、私は息も絶え絶えになっていた。
目を開けると、とろりとした瞳で見下ろすレオン様と目が合った。
「……可愛い」
彼は満足げに呟き、私の乱れた髪を直してくれた。
「これ以上は、結婚式まで我慢しよう。……ここで君を食べてしまったら、セバスチャンに叱られる」
「そ、そうですね……」
私は真っ赤になって起き上がった。
心臓がまだバクバク言っている。
危なかった。もう少しで、図書室で「大人の階段」を登ってしまうところだった。
「だが、約束だ。……式が終わったら、覚悟しておいてくれ」
彼は悪戯っぽく耳元で囁いた。
その「覚悟」の内容を想像して、私はまた茹で蛸のようになってしまった。
「さて、エルナ。機嫌も直ったことだし、提案がある」
レオン様は私の手を取り、立ち上がらせた。
いつもの自信に満ちた公爵様の顔に戻っている。
「提案、ですか?」
「ああ。……デートをしよう」
「デート?」
「そうだ。今まで城下町や農場には行ったが、あれは視察のついでだっただろう? そうではなく、純粋なデートだ」
彼はポケットから、二枚のチケットを取り出した。
「隣町で、数年に一度の『星祭り』が開かれるらしい。ロベルトから招待状が届いた。……二人で、行かないか?」
星祭り。
聞いたことがある。
北の空にオーロラが現れる時期に合わせて行われる、恋人たちの祭りだ。
星に願いをかければ、永遠の愛が約束されるという伝説がある。
「素敵……。行きたいです!」
「よし、決まりだ。……君には、とびきりのお洒落をしてもらおう。私がエスコートする」
彼は私の手にキスをした。
「楽しみにしているよ、私の可愛い婚約者殿」
***
デートの日取りは、三日後に決まった。
それからの私は、浮かれ気分半分、緊張半分で過ごしていた。
何しろ、「初めてのちゃんとしたデート」なのだ。
王都時代、カイル殿下との「デート」といえば、彼の買い物に荷物持ちとして付き合わされるか、公務の合間に立ち話をする程度だった。
手をつないで歩くなんて、夢のまた夢だった。
「エルナ様、このドレスはいかがですか? 星祭りに合わせて、夜空色のシフォン生地を使ってみましたの」
マダム・ロゼも張り切って、新しいドレスを仕立ててくれた。
深い藍色に、銀の糸で星の刺繍が施された美しいワンピースだ。
露出は控えめだが、歩くたびに裾がふわりと揺れて、とてもロマンチックだ。
「素敵です、ロゼさん! これならレオン様も……」
「ええ、旦那様もイチコロですわ! 当日はヘアメイクも私にお任せくださいね!」
準備は着々と進んでいく。
レオン様も、当日のスケジュールを綿密に練っているらしい。
「最高の夜にする」と張り切っている彼を見ていると、愛されている実感が湧いてくる。
しかし、そんな幸せな時間の裏で、不穏な影もまた動き出していた。
デートの前日。
私は一人で、城のバルコニーで風に当たっていた。
ふと、指輪が微かに振動した気がして、左手を見る。
水色の石が、チカチカと明滅していた。
レオン様からの通信ではない。
これは……「悪意」への警告?
「……誰?」
私はバルコニーから下を見下ろした。
城門の近く、闇に紛れるようにして、数人の人影が動いているのが見えた。
衛兵たちの死角を縫うように、素早く侵入しようとしている。
「侵入者……!」
私はハッとして、指輪に手を当てた。
『レオン様!』
心の中で叫ぶと、即座に頭の中に彼の声が響いた。
『エルナ!? どうした、何かあったか!』
『城門付近に、不審な人影が……! 侵入者かもしれません!』
『なにっ……。分かった、すぐに向かう! 君は部屋に入って鍵をかけろ! 絶対に外に出るな!』
『はい!』
私はバルコニーから部屋に戻ろうとした。
その時。
ヒュンッ!
風を切り裂く音がして、何かが私の頬を掠めた。
鋭い痛みと共に、壁に突き刺さったのは、黒い短剣だった。
「……っ!」
「おや、外しましたか。……元聖女様にしては、勘が鋭い」
バルコニーの手すりに、いつの間にか一人の男が立っていた。
黒い装束に身を包み、顔を布で隠している。
その手には、不気味に光る短剣が握られていた。
暗殺者。
王都からの刺客だ。
「誰……」
「名乗る必要はありませんよ。どうせ死ぬのですから」
男は音もなく飛び降り、私との距離を詰めてきた。
「カイル殿下からの贈り物です。……『北の果てで安らかに眠れ』と」
男が短剣を振り上げる。
逃げる間もない。
私は反射的に目を閉じ、左手をかざした。
(守って……!)
キィィィィン!!
硬質な音が響き渡った。
目を開けると、私の目の前に、透明な氷の盾が出現していた。
男の短剣は、その盾に阻まれて止まっている。
「なっ……氷の結界!? 貴様、魔力はないはずでは……」
男が驚愕に目を見開く。
私の指輪が、青白く輝いていた。
レオン様が込めてくれた、防御魔法が発動したのだ。
「私の婚約者に、何をしている」
地獄の底から響くような声。
次の瞬間、バルコニーの空気が絶対零度まで凍りついた。
バリバリバリッ!
暗殺者の足元から、巨大な氷の棘が突き出した。
「ぐあっ!?」
男は悲鳴を上げて飛び退いたが、片足を氷に貫かれ、床に縫い付けられた。
「レオン様!」
私の目の前に、黒いマントを翻したレオン様が降り立った。
その背中は怒りに震え、周囲には制御しきれないほどの冷気が渦巻いている。
「……よくも。よくも、私のエルナに傷を」
彼は私の頬の傷――短剣が掠めただけの小さな切り傷――を見て、修羅のような形相になった。
「死んで詫びろ」
彼が手を振ると、無数の氷の刃が空中に生成され、暗殺者に切っ先を向けた。
「ひっ、ひぃぃぃ! ま、待て! 俺はただの雇われ……」
「問答無用」
ドシュシュシュシュッ!
容赦ない氷の嵐が、暗殺者を襲った。
男は氷像になる暇もなく、氷の檻に閉じ込められ、意識を失った。
「エルナ!」
レオン様はすぐに私を抱きしめた。
「無事か!? 怪我は……ああ、頬から血が……!」
彼は震える指で私の傷に触れ、すぐに治癒魔法をかけてくれた。
小さな傷は一瞬で消えたが、彼の顔色は戻らない。
「すまない……! 私がついていながら、こんな……!」
「レオン様、大丈夫です。指輪が守ってくれましたから」
私は彼の背中をさすった。
彼の身体は小刻みに震えていた。
それは怒りだけでなく、私を失うかもしれないという恐怖からの震えだった。
「……許さない」
彼は私を抱きしめたまま、低い声で言った。
「カイル……王都の連中……。もう容赦はしない。私の宝に手を出した代償を、骨の髄まで思い知らせてやる」
明後日のデートを前に、最悪の邪魔が入ってしまった。
けれど、この事件はレオン様の「守護本能」と「独占欲」に、完全に火をつけてしまったようだった。
「明後日の星祭りは中止ですか?」
私が恐る恐る尋ねると、彼は顔を上げ、強く首を横に振った。
「いいや、行くぞ。……こんな卑劣な連中に、私たちの楽しみを奪わせてたまるか」
彼の瞳は燃えていた。
「それに、見せつけてやるんだ。私たちがどれほど幸せで、どれほど強い絆で結ばれているかを。……邪魔者はすべて排除する」
こうして、私たちの初めてのデートは、厳戒態勢の中で決行されることになった。
甘いデートになるはずが、なんだか波乱の予感がするけれど。
最強の公爵様と一緒なら、きっと大丈夫。
私は指輪にキスをして、彼の胸に寄り添った。
(第12話 完)
「はい、レオン様」
「こっちを向いてくれないか」
「今はダメです。この計算が終わるまでは」
午後の執務室。
私はレオン様の隣に設えられた専用のデスクで、領内の収支報告書の計算をしていた。
先日収穫された「エルナ様野菜」の売上や、今後の増産計画に伴う予算組みなど、やるべきことは山積みだ。
聖女時代に培った事務処理能力が、まさかこんなところで役に立つとは思わなかったけれど、レオン様の補佐ができるのは嬉しい。
けれど、問題が一つ。
私の主君であり婚約者である公爵様が、ちっとも仕事に集中してくれないのだ。
「計算など、セバスチャンか文官にやらせればいい。君が眉間に皺を寄せる必要はないんだ」
レオン様は不満げにペンを置き、私の椅子ごと自分の方へ引き寄せた。
クルリと回転させられ、私は彼と向かい合う形になる。
「皺なんて寄せていません。……レオン様こそ、王都軍の動きが怪しいのですから、防衛予算の確認を急がないと」
先日、隣領のロベルト様がもたらした情報によれば、王都軍が国境付近に集結しつつあるという。
表向きは魔獣討伐だが、その真意が私たちへの圧力であることは明白だ。
「対策はすでに打ってある。国境の結界密度を上げたし、ロベルトにも協力を要請した。……それに、奴らが動くにはまだ時間がかかる」
彼は私の手を取り、指輪の上から口付けた。
「だから今は、そんな無粋な連中のことより、君との時間を優先したい」
「もう……。公爵様がそんなにサボり魔だとは知りませんでした」
「サボっているわけではない。これは君への愛の確認作業だ。私の精神安定上、極めて重要な任務だ」
彼は真顔で言い切る。
最近のレオン様は、以前にも増して私への執着……いえ、愛情表現がストレートになっている。
「呪いが解けた反動」と本人は言っているけれど、それにしても限度というものがあるのではないだろうか。
「エルナ。……好きだ」
不意打ちのように紡がれる言葉。
その蒼い瞳に見つめられると、私は反論もできなくなってしまう。
「は、はい……私もです」
「『も』では足りないな。……君の口から、ちゃんと聞きたい」
彼は私の顎を指先で持ち上げ、顔を近づけてくる。
吐息がかかる距離。
心臓がうるさいほどに高鳴る。
コンコン。
絶妙なタイミングで、扉がノックされた。
「チッ……」
レオン様が露骨に舌打ちをして離れる。
入ってきたのはセバスチャンだった。彼は慣れたもので、主人の不機嫌オーラを華麗にスルーして一礼した。
「失礼いたします。旦那様、城下町の商人組合長がお目通りを願っております。例の野菜の取引価格について、ご相談したいとのことで」
「……分かった。応接室に通せ。すぐに行く」
レオン様は渋々立ち上がった。
そして、私の方を振り返り、名残惜しそうに頭を撫でた。
「すまない、エルナ。少し席を外す。……戻ったら、続きをしよう」
「続きなんてありません。いってらっしゃいませ」
私は真っ赤になって彼を送り出した。
パタンと扉が閉まると、私は大きく息を吐き、机に突っ伏した。
「……心臓に悪いわ」
このままでは、王都軍が来る前に、私の身が持たないかもしれない。
嬉しい悲鳴ではあるけれど、少しクールダウンが必要だわ。
私は気分転換に、図書室へ行くことにした。
***
アイスバーン城の図書室は、静寂に満ちていた。
高い天井まで届く本棚、重厚な革張りのソファ、そして窓から差し込む柔らかな午後の日差し。
私はお気に入りの窓際の席に座り、一冊の本を開いた。
それは、以前こっそりと見つけた恋愛小説だった。
タイトルは『氷の騎士と薔薇の姫』。
堅物で冷徹な騎士が、天真爛漫な姫君に振り回されながらも恋に落ちるという、王道にして鉄板のストーリーだ。
(ふふっ、なんだかレオン様みたい)
主人公の騎士が、不器用に姫君にプレゼントを贈るシーンを読んで、私はくすりと笑った。
レオン様も、あの歪な形の指輪をくれた時、あんな風に緊張していたっけ。
物語の中の二人は、障害を乗り越え、少しずつ距離を縮めていく。
そして、クライマックスの舞踏会のシーン。
騎士は姫君の手を取り、バルコニーで愛を告げるのだ。
『君が欲しい。……私のすべてを懸けて、君を手に入れたい』
「……きゃっ」
思わず変な声が出てしまった。
活字で読むと、なかなかに刺激的だ。
「欲しい」という言葉の響き。
それは単に「そばにいてほしい」という意味なのか、それとももっと深い、大人の意味を含んでいるのか。
私はパタンと本を閉じ、熱くなった頬を手で扇いだ。
いけない、こんな昼間から変な想像をしてしまっては。
私は聖女だったのだ。清廉潔白でなければ。
……まあ、今は元聖女だし、婚約者もいるのだから、少しおませな知識があってもバチは当たらないだろうけれど。
「何を読んでいるんだ? そんなに顔を赤くして」
「ひゃあっ!?」
突然背後から声をかけられ、私は本を取り落としそうになった。
振り返ると、いつの間にか戻ってきていたレオン様が、ソファの背もたれに手をかけて覗き込んでいた。
「レ、レオン様! い、いつの間に!」
「今戻ったところだ。執務室に君がいなかったから、ここだと思ってな」
彼は私の手から本を取り上げ、表紙を見た。
「『氷の騎士と薔薇の姫』……? なんだ、君はこういう物語が好きなのか?」
「か、返してください! ただの暇つぶしです!」
私は慌てて奪い返そうとしたが、彼は意地悪く本を高く掲げてしまった。
身長差があるせいで、背伸びをしても届かない。
「へえ……。騎士が姫に求愛する話か。ふむ、『君が欲しい』……か」
彼はパラパラとページをめくり、私が読んでいた箇所を正確に読み上げてしまった。
「や、やめてください! 恥ずかしいです!」
「なぜ恥ずかしがる? 恋人同士なら、これくらいの言葉は普通だろう」
彼は本をパタンと閉じ、私に返してくれた。
そして、そのまま私の隣に座り込み、逃げ場を塞ぐように肩を抱いた。
「それとも、君はまだ、こういう言葉に慣れていないのか?」
「……慣れるわけありません。聖女の教育では、恋愛ごとはご法度でしたから」
「そうか。カイル王子は、君に愛を囁かなかったのか?」
「あの人は……『君は地味だ』とか『もっと笑え』とか、注文ばかりでした。愛の言葉なんて、一度も」
思い出すのも忌々しい。
カイル殿下との思い出の中に、ピンク色のエピソードなんて一つもない。あるのは灰色の説教と、命令だけだ。
「……愚か者め」
レオン様が低く呟いた。
抱き寄せる腕に、力がこもる。
「私なら、一日中でも囁いてやるのに。……いや、言葉だけでは足りないな」
彼は私の髪を一房掬い取り、口付けた。
「エルナ。……先ほどの続きをしてもいいか?」
「つ、続きって……」
「『君が欲しい』という言葉の意味についてだ」
彼は真剣な眼差しで私を見据えた。
その瞳の奥には、図書室の静寂すら焼き尽くすような、青い炎が揺らめいている。
「私は、君が欲しい。……これは、君の聖女としての力を利用したいという意味ではない。もちろん、君がいてくれるおかげで領地は潤ったし、私の呪いも解けた。そのことには感謝している」
彼は言葉を選びながら、ゆっくりと語る。
「だが、たとえ君に聖女の力がなかったとしても……ただの無力な少女だったとしても、私は君を求めたと思う」
「……どうして、ですか?」
「一目惚れだったのかもしれない。あの吹雪の中、死にかけていた君を見た時……不思議と、目が離せなかった。この命を消してはいけないと、魂が叫んだんだ」
彼は私の頬に手を添えた。
ひんやりとした指先が、火照った肌に心地よい。
「そして、共に過ごすうちに確信した。君の優しさ、強さ、そして時折見せる無防備な笑顔。……そのすべてが、私を狂わせる」
「くるわせる、なんて……」
「大げさではない。今も、君に触れたくてたまらない。……君を、私だけのものにしてしまいたいという衝動を抑えるのに、どれほどの理性を総動員しているか」
彼は苦しげに眉を寄せた。
その表情が、あまりにも切実で、色っぽくて。
私は息をするのも忘れて見入ってしまった。
「エルナ。『君が欲しい』というのは……君の心も、身体も、未来も、すべてを私に預けてほしいという意味だ」
彼は一歩踏み込んできた。
「君を、私の妻として。……そして、一人の女性として愛したい」
ドクン、と心臓が跳ねた。
これはプロポーズだ。
あの指輪をくれた時のような契約の意味ではなく、もっと本能的で、情熱的な求愛。
「……教えてくれ、エルナ。君は、私をどう思っている? ただの『呪いを解くためのパートナー』か? それとも……」
彼は答えを待っている。
不安げに揺れる蒼い瞳。
最強の公爵様が、私の言葉一つに怯えている。
私は、自分の胸に手を当てた。
そこにあるのは、温かくて、甘くて、少し切ない感情。
王都にいた頃は知らなかった、これが「恋」というものなのだろう。
私は勇気を出して、彼の手を握り返した。
「……私も、レオン様が欲しいです」
「!」
「ずっとそばにいたいです。貴方の隣で、笑っていたい。……貴方が、私を必要としてくれるなら、私は貴方のものです」
精一杯の告白だった。
これ以上ないくらい、素直な気持ち。
レオン様の顔が、パッと輝いた。
まるで氷河期が終わり、一気に夏が来たような眩しい笑顔だ。
「エルナ……!」
彼は私を抱きしめ、そのままソファに押し倒すような勢いで覆いかぶさってきた。
「れ、レオン様!?」
「すまない、嬉しすぎて加減ができそうにない」
彼の顔が近づいてくる。
逃げ場はない。
というか、逃げたくない。
彼の唇が、私の唇に触れた。
最初は優しく、ついばむように。
次第に深く、熱く。
彼の舌が侵入してきて、私の思考を溶かしていく。
「んっ……」
図書室の静寂の中に、衣擦れの音と、甘い吐息だけが響く。
彼の大きな手が私の背中を這い、腰を抱き寄せる。
その指先から伝わる熱が、私の全身を駆け巡る。
どれくらいの時間が経っただろうか。
彼が唇を離した時、私は息も絶え絶えになっていた。
目を開けると、とろりとした瞳で見下ろすレオン様と目が合った。
「……可愛い」
彼は満足げに呟き、私の乱れた髪を直してくれた。
「これ以上は、結婚式まで我慢しよう。……ここで君を食べてしまったら、セバスチャンに叱られる」
「そ、そうですね……」
私は真っ赤になって起き上がった。
心臓がまだバクバク言っている。
危なかった。もう少しで、図書室で「大人の階段」を登ってしまうところだった。
「だが、約束だ。……式が終わったら、覚悟しておいてくれ」
彼は悪戯っぽく耳元で囁いた。
その「覚悟」の内容を想像して、私はまた茹で蛸のようになってしまった。
「さて、エルナ。機嫌も直ったことだし、提案がある」
レオン様は私の手を取り、立ち上がらせた。
いつもの自信に満ちた公爵様の顔に戻っている。
「提案、ですか?」
「ああ。……デートをしよう」
「デート?」
「そうだ。今まで城下町や農場には行ったが、あれは視察のついでだっただろう? そうではなく、純粋なデートだ」
彼はポケットから、二枚のチケットを取り出した。
「隣町で、数年に一度の『星祭り』が開かれるらしい。ロベルトから招待状が届いた。……二人で、行かないか?」
星祭り。
聞いたことがある。
北の空にオーロラが現れる時期に合わせて行われる、恋人たちの祭りだ。
星に願いをかければ、永遠の愛が約束されるという伝説がある。
「素敵……。行きたいです!」
「よし、決まりだ。……君には、とびきりのお洒落をしてもらおう。私がエスコートする」
彼は私の手にキスをした。
「楽しみにしているよ、私の可愛い婚約者殿」
***
デートの日取りは、三日後に決まった。
それからの私は、浮かれ気分半分、緊張半分で過ごしていた。
何しろ、「初めてのちゃんとしたデート」なのだ。
王都時代、カイル殿下との「デート」といえば、彼の買い物に荷物持ちとして付き合わされるか、公務の合間に立ち話をする程度だった。
手をつないで歩くなんて、夢のまた夢だった。
「エルナ様、このドレスはいかがですか? 星祭りに合わせて、夜空色のシフォン生地を使ってみましたの」
マダム・ロゼも張り切って、新しいドレスを仕立ててくれた。
深い藍色に、銀の糸で星の刺繍が施された美しいワンピースだ。
露出は控えめだが、歩くたびに裾がふわりと揺れて、とてもロマンチックだ。
「素敵です、ロゼさん! これならレオン様も……」
「ええ、旦那様もイチコロですわ! 当日はヘアメイクも私にお任せくださいね!」
準備は着々と進んでいく。
レオン様も、当日のスケジュールを綿密に練っているらしい。
「最高の夜にする」と張り切っている彼を見ていると、愛されている実感が湧いてくる。
しかし、そんな幸せな時間の裏で、不穏な影もまた動き出していた。
デートの前日。
私は一人で、城のバルコニーで風に当たっていた。
ふと、指輪が微かに振動した気がして、左手を見る。
水色の石が、チカチカと明滅していた。
レオン様からの通信ではない。
これは……「悪意」への警告?
「……誰?」
私はバルコニーから下を見下ろした。
城門の近く、闇に紛れるようにして、数人の人影が動いているのが見えた。
衛兵たちの死角を縫うように、素早く侵入しようとしている。
「侵入者……!」
私はハッとして、指輪に手を当てた。
『レオン様!』
心の中で叫ぶと、即座に頭の中に彼の声が響いた。
『エルナ!? どうした、何かあったか!』
『城門付近に、不審な人影が……! 侵入者かもしれません!』
『なにっ……。分かった、すぐに向かう! 君は部屋に入って鍵をかけろ! 絶対に外に出るな!』
『はい!』
私はバルコニーから部屋に戻ろうとした。
その時。
ヒュンッ!
風を切り裂く音がして、何かが私の頬を掠めた。
鋭い痛みと共に、壁に突き刺さったのは、黒い短剣だった。
「……っ!」
「おや、外しましたか。……元聖女様にしては、勘が鋭い」
バルコニーの手すりに、いつの間にか一人の男が立っていた。
黒い装束に身を包み、顔を布で隠している。
その手には、不気味に光る短剣が握られていた。
暗殺者。
王都からの刺客だ。
「誰……」
「名乗る必要はありませんよ。どうせ死ぬのですから」
男は音もなく飛び降り、私との距離を詰めてきた。
「カイル殿下からの贈り物です。……『北の果てで安らかに眠れ』と」
男が短剣を振り上げる。
逃げる間もない。
私は反射的に目を閉じ、左手をかざした。
(守って……!)
キィィィィン!!
硬質な音が響き渡った。
目を開けると、私の目の前に、透明な氷の盾が出現していた。
男の短剣は、その盾に阻まれて止まっている。
「なっ……氷の結界!? 貴様、魔力はないはずでは……」
男が驚愕に目を見開く。
私の指輪が、青白く輝いていた。
レオン様が込めてくれた、防御魔法が発動したのだ。
「私の婚約者に、何をしている」
地獄の底から響くような声。
次の瞬間、バルコニーの空気が絶対零度まで凍りついた。
バリバリバリッ!
暗殺者の足元から、巨大な氷の棘が突き出した。
「ぐあっ!?」
男は悲鳴を上げて飛び退いたが、片足を氷に貫かれ、床に縫い付けられた。
「レオン様!」
私の目の前に、黒いマントを翻したレオン様が降り立った。
その背中は怒りに震え、周囲には制御しきれないほどの冷気が渦巻いている。
「……よくも。よくも、私のエルナに傷を」
彼は私の頬の傷――短剣が掠めただけの小さな切り傷――を見て、修羅のような形相になった。
「死んで詫びろ」
彼が手を振ると、無数の氷の刃が空中に生成され、暗殺者に切っ先を向けた。
「ひっ、ひぃぃぃ! ま、待て! 俺はただの雇われ……」
「問答無用」
ドシュシュシュシュッ!
容赦ない氷の嵐が、暗殺者を襲った。
男は氷像になる暇もなく、氷の檻に閉じ込められ、意識を失った。
「エルナ!」
レオン様はすぐに私を抱きしめた。
「無事か!? 怪我は……ああ、頬から血が……!」
彼は震える指で私の傷に触れ、すぐに治癒魔法をかけてくれた。
小さな傷は一瞬で消えたが、彼の顔色は戻らない。
「すまない……! 私がついていながら、こんな……!」
「レオン様、大丈夫です。指輪が守ってくれましたから」
私は彼の背中をさすった。
彼の身体は小刻みに震えていた。
それは怒りだけでなく、私を失うかもしれないという恐怖からの震えだった。
「……許さない」
彼は私を抱きしめたまま、低い声で言った。
「カイル……王都の連中……。もう容赦はしない。私の宝に手を出した代償を、骨の髄まで思い知らせてやる」
明後日のデートを前に、最悪の邪魔が入ってしまった。
けれど、この事件はレオン様の「守護本能」と「独占欲」に、完全に火をつけてしまったようだった。
「明後日の星祭りは中止ですか?」
私が恐る恐る尋ねると、彼は顔を上げ、強く首を横に振った。
「いいや、行くぞ。……こんな卑劣な連中に、私たちの楽しみを奪わせてたまるか」
彼の瞳は燃えていた。
「それに、見せつけてやるんだ。私たちがどれほど幸せで、どれほど強い絆で結ばれているかを。……邪魔者はすべて排除する」
こうして、私たちの初めてのデートは、厳戒態勢の中で決行されることになった。
甘いデートになるはずが、なんだか波乱の予感がするけれど。
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私は指輪にキスをして、彼の胸に寄り添った。
(第12話 完)
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