【改訂版】元保育士の異世界物語〜子どものためなら魔王もワンパン!?天職保育士!?創造魔法と神獣召喚で世界の子どもたちを救います〜

イル

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第五章〜悲しき戦い〜

第78話 〜新たな不安〜

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 ヒイロが家族で世界旅行をしてから約一ヶ月後、トキオ文明国が、いきなり全ての国境を閉鎖した。各国とのすべての国境付近にトキオ文明国の軍隊が駐屯し、無断で国境を超えようものなら、即時攻撃とのことだった。

 また、その少し前から音信不通になっていたヴァンジャンスはもちろん、天職《賢者》のイスカリオテとも連絡がつかなくなっているとのことだった。その頃、ニイガル国のエングのところに修行に来ていた勇者のロイを含め、その他のSSランク及びSランクの冒険者達については連絡が取れたのだが、その突然の鎖国に、各国は不安を感じるのだった。

 ヒイロ自身も、孤児院はもちろん、最近では最もトキオ文明国が、乳児院や障害者施設、ヴァンジャンスの老人ホームなどに対し、積極的に設立してくれており、今度はそれをまとめる福祉ギルドの代わりになるようなものを、トキオ文明国と相談しようとしていたため、福祉事業も全て頓挫してしまった。

 とりあえず、現在のトキオ文明国の情報を聞こうと、イバール国の首都ミトのギルド本部にいる、ギルドマスターのナットのところへとヒイロは訪ねに来ていた。

 するとそこに、ちょうどニイガル国から戻った、天職《勇者》のロイの姿もあった。

「あ、ヒイロさん!お久しぶりです!あの……最近、ヴァンジャンスさんやイスカリオテ君と連絡を取ったりしましたか?」

「お、ロイか!いや、アイツも老人施設の見通しができたら、急に任せきりにしやがって……頭が痛いとかで全く来なくなってからはほとんど連絡を取れていないんだ。イスカリオテについては魔王との戦い後会ってはない。」

「そうですか、僕はイスカリオテさんとは魔王討伐後、少し一緒にいたりしたのですが、僕がニイガル国に修業に行ってる間にこんなことになってしまっていて……」

「ナットさんも何か事情を聞いていますか?」

「いや、特に。今の情報は同じように国境が封鎖され、行き来が出来なくなったことぐらいしかな。それに元々秘密主義の国で、ギルドの存在もなかったから、情報の取りようがなくてな。冒険者もだが、商人や職人もトキオ文明国だけは国で管理されているから、あまりギルドにも情報のツテになる者もいない……」

「そうですよね。その唯一のツテがヴァンジャンスとイスカリオテだったんだが、そことも連絡がつかないんだもんな」

「なんでまた急に国境を閉鎖したのでしょう?」

「うーん、ギルドや国としても、別に国家間での衝突もなかったんだがな……」

「ただ……思い過ごしかも知れないですが、俺はちょうど一ヶ月ぐらい前に旅行でトキオ文明国に行ったんですが、その時は特別変わった様子がなかったけど……ただ、いつもより兵器の数や訓練の数が多かったような気がしたのはありました……。」

「そうか……だが、それも魔神対策といえば当たり前の対策になるからな、不自然ではない気がする……か」

「……国境を封鎖することで、トキオ文明国はなんのメリットがあるのでしょう?」

 そのロイの言葉にヒイロもナットも答えが見つけられなかった。それもそのはずで、この世界において、ヒイロの認識では国家間の争いは皆無に等しい。だから、トキオ文明国以外の国では、軍隊など国の強力な武器、武装を持たず、冒険者ギルドが対魔物、対魔王に対しての要として機能していた。

 何故、国家間の争いがなかったのか……。ナットやロイなど、この世界の住人からしたら極めて自然のことだが、ヒイロからしたら、まずそこからおかしい。ヒイロの前世では歴史の中で幾度ととなく、国家、人種、宗教など様々な理由で戦争が起こっていた。だがこの世界では《戦争》という二文字はなかったのだ。もちろん、盗賊と冒険者などの争いはあったが、国同士の規模では全くと言っていいほどない。

 ヒイロの中でその答えとして、一つに考えられたのは、魔王の存在。魔王が人々の負のエネルギーを吸って復活するから大きな負の発生する戦争まで、負のエネルギーが発達しないと考えていた。そして同時に魔王という、全世界にとって、絶対的な共通の敵がいるからということ。それについてはほぼ確定だとヒイロは思っていた。魔王という巨大な敵がいるのに国ごとで争っていては、すぐにでも魔王に支配されてしまうためだ。

 戦争の最大の理由の一つに侵略の必要性が考えられたが、それは自らの国で何かが枯渇しているため、それを理由に他の地域の資源や金、土地を求めることである。だが、それもそれぞれの国である程度完結しているため、侵略して奪うほどの必要がない。

 他にも宗教関係もあったが、この世界では天職が神から直接もらえるという、どの国も共通してイメージしやすい神が身近にいるため、宗教観の違いからの紛争や種族間の争いがない。

 では何故、トキオ文明国は鎖国に踏み切ったのか……他の国も人の行き来がなくなり、個人レベルでの問題は、会いたい人に会えなくなるなどのデメリットはあるが、国家レベルではないに等しい。逆にいえば、トキオ文明国にとってもメリットはない。

 何か国家レベルで鎖国をしてまで隠したいことがあるのか?確かに他の国に比べて、秘密主義であり、国の力そのものも他国に比べ圧倒的に強い。冒険者を必要としない分、国家の力の統制も取れているから情報統制もしやすい……。

「!?戦争?……トキオ文明国は戦争を起こそうというのか……!?」

「戦争《せんそう》……?」

「ヒイロ!なんだそれは!?」

「トキオ文明国が他国を攻めるということです!」

「な、なんだと!?なんのために!?」

「わからない。俺もいくらその理由を探しても、全く見当たらないんです……」

「でも、確かに他の国に攻めると考えた時に、一旦国境を封じることで、戦力の規模や進軍先、全ての手の内を隠せる……。どこから、どれくらいの規模で攻め込まれるか分からない他の国は圧倒的に不利です……」

「そうか、それが国境を塞ぐ唯一と言っていいほどのメリット……ということですね!」

「では、イスカリオテとヴァンジャンスは、それに協力をしているか、またはさせられている……ということになるのかヒイロ!?」

「そこまではわかりません。ただ……」

 ヴァンジャンスは前世からの記憶で、戦争がどれだけ虚しく、意味のないことか、嫌となるほどわかっているはず……。

「イスカリオテ君だって、そんなことには賛成しないはずです!」

「とりあえずナットさんは各国のトップ及びギルドにその可能性を伝えてください。特にトキオ文明国の隣国になる、イバール国とフクール国、トチギル国は、警戒を強めて、国境付近にそのような動きがないかをよく監視するように!!」

「わ、わかった!他のSSランクの冒険者にも直接連絡だけはしとく!」

「なんでですか……?まだ魔神だっていつ誕生するか分からないのに……人同士で争うことになんの意味が……」

「そうだな、できればただの思い過ごしであってほしいと思うよ……」

 ヒイロとロイは改めて、イスカリオテとヴァンジャンスに接触を図ろうとするが、連絡が取れず、ヒイロは転移魔法で直接ヴァンジャンスの家に行くも、姿はなく消息も不明だった。街中の方も国境を塞いでいるのにも関わらず、一般の人々は状況がわからないのか、いつものと変わらない様子だった。

 こうして原因不明のトキオ文明国による鎖国が始まり、世界はまた新たな不安に包まれる。魔神がいつ誕生するかわからない時に、更なる不安がヒイロ達を襲うのだった。
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