日々の欠片

小海音かなた

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7/10『建設的討議』

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 制限された時間内でしか戦えないヒーローがいる。
 限られた時間の中で決着がつくよう計算された戦い。それを競技にできないだろうか。
 というのも、襲ってくる怪獣や未知の存在に壊された建物なんかの保険料がバカにならなくなってきて、早急に対策が必要になったから。
 倒産を免れるように【怪獣被害】を保険項目から消す保険会社も出てきているし、このままだと我々はただ壊されないよう祈るしかできなくなってしまう。
 ならばいっそ競技としてルールを決め、場所を設けたほうがいいのではないだろうかと考えた。しかし果たして、襲ってくる存在たちがそのルールを把握し、承諾し、遵守するだろうか。
 とりあえずやってみよう。
 誰かが言った。
 世界中すべての言語を用いて意見書を書き、図表化、ピクトグラム化までして資料を作成。時限式ヒーローに預けてみた。中身は小型メモリだが、包装は彼らの身体に合わせた大きさだ。過剰包装というやつかも。
 海から上陸しようとしていた怪獣を、ヒーローが止めた。ジョアジョア言いつつ身振り手振りで説明して荷物を差し出すと、怪獣はうなずいてその包みを受け取り、水に浸からないよう持った手を挙げて保護しながら海の向こうへ戻っていった。
 防水加工してあげればよかったね、との声に、モニターでその光景を見ていた皆が賛同した。
 しばらくして、人間サイズの怪獣が大型ドローンに乗ってやってきた。
 戦う気はないという意思表示なのか、右手に白旗を持っている。左手には長方形の封筒。
 出動したヒーローは怪獣に合わせて人間大に留まり、封筒を受け取って自国防衛軍の隊長に託した。渡したメモリの中に新たなファイルが作成され、世界各国の言語で競技に参加する旨の意思が示されていた。
 驚いたのは、襲ってくる怪獣たちに【上司】がいたこと。怪獣たちはその上司の指示で我が国を襲っていたらしい。悪の総統、というやつか。
 上司には人間同様の知力があるようで(実際人間なのかもしれないが)、我々が怪獣に託した意見書の意図を理解し、受け入れた。怪獣とはいえ命ある生き物だし、命を無駄にするのはよろしくない、という意見が一致したのだ。
 リアルな話、破壊された建物の瓦礫を撤去するより、命尽きた怪獣を処理するほうが大変だ。
 構造は違えど同じ生き物。放っておけば腐敗が進み、処理が難しくなる。生態系に悪影響を及ぼす害を保有しているかもしれず、早急に埋葬しなければならない。
 国民の生活も大事だが、そちらを優先させなければ二次被害が広がる確率が高い。
 広くはない我が国で埋められる土地などたかが知れているし、でかいし重いし正直つらい。

 小型怪獣は伝令担当のようで、定期的にドローンに乗ってやってくる。お互いに危害を与えないことがわかり、意思の疎通もできるようになって徐々に打ち解けてきた。
 見ようによっては愛らしく、メモリの受け渡し時に労うための食べ物と飲み物を渡すことが恒例になった。
 小型怪獣が喜んで飛び跳ねる姿は愛嬌があり、世界各国のニュースで放映されるとたちまち人気になった。

 総統とのやりとりは暫く続いた。競技へ昇華させるための会場や建設費用、ルールの設定などなど……。
 対面して直接意見交換したいレベルでの細かい要求もあったが、客を入れた競技として収益化できそうだからこちらも尽力した。我が国の損失をその収益で補いたいというのが本音だ。
 やりとりしているうちに、怪獣が我が国を襲う理由がわかった。
 彼らは遠い惑星で暮らしている知的生命体。生活の中で行われる【試合】が彼らの最大の楽しみだという。
 あの漫画やあの漫画に於ける【武術会】【武道会】のようなものらしいその試合を繰り返す中で、トップクラスの面子がある程度決まってしまい、盛り上がりに欠けて来た。
 マンネリズムを打破するため、宇宙規模で有名な我が国の時限式ヒーローに戦いを挑むようになった。とのこと。
 おいおい。昔の少年漫画じゃあるまいし、雌雄を決するために他人の生活を脅かすのはやめてくれよ。大体こちらの国の了承を得ずにそんな戦い挑まれても……。などと言ってももう過去の話なので仕方ないのだが、もし大会開催時に【上司】とやらが来るのであれば、一言言ってやろう。
 相手の都合も考えろよ、と。
 自国の言語が通じるかはさておき、そのくらい言わないといままでの苦労が報われない。
 様々なやりとりをして契約を交わし、宇宙史上初なのではないかと思われる異星間の格闘大会を、我が国で開催することになった。
 しかも、どちらが勝とうと負けようと、【征服】されることのない健全な勝負。
 さぁ、書面の準備は整った。
 あとは向こうチームが送り込んできた【作業もできる怪獣】の協力も得て、巨大な身体で戦うための専用競技場を建設し始めよう!
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