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スローライフ始めます?
その3
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気取った仕草でスカートを摘まんでお辞儀をした私だけど、頭の中は?マークでいっぱいだった。
思ってたのと違う。
盗賊というよりも冒険者か傭兵といった感じだった。
そして襲われていたのは商人のオジサンではなく若い騎士らしき男の人。
男の人、というより男の子、というべきか。
まだ12、3あたりだと思う。
ま、けど。
この三人組が男の子を襲っていたのは間違いないっぽい。
だったら私がすることは決まっているよね?
本の中でも『てれび』のアニメの中でも、複数が一人を襲っているってのは悪者と相場が決まっている。
「……な、んだぁ」
「どこから来たんだ?」
「って、あの瞳の色。頭の角--まさか」
おや、魔族の身体的特徴を知ってるんだね。
ということは戦争に駆り出されたこともある傭兵ってところかな?
気が遠くなるほど長く長く戦争をしている人間と魔族。
だけれど実のところ魔族領は大陸の中でも端っこの端っこにある半島で、境には深い谷が存在しているため、人間が魔族の姿を見る機会ってのはほとんどない。唯一まともに行き来できる道が国境の峠道で、そこは常に戦地になっている。
魔族は基本的に軍人以外は国の外に出ない。
国境近くの街や村の人間ならともかく、遠く離れたこの付近の人間なら一度も見たことがない方が多いだろうと思うのだ。
だけど傭兵なら国境の戦地に赴いたことがあっても不思議じゃない。
私はそんなことを思いながらチラリと背後を伺う。
二頭立ての馬車に背をもたれさせて気を失っている少年。
傭兵たちと同じく人間。
淡い金の髪に肌は白い。
右の肩から腹にかけてを浅く切られていて、結構な出血をしている。
残念ながらまぶたは固く閉じられていて瞳の色はわからないけど、キレイな顔をしているのは確か。
「私、キレイなものって好きなの」
キレイな宝石も
キレイなドレスも
キレイな景色も
キレイな顔も好き
「でも醜いものはキライ」
特に内面の卑しさや醜さが外面に出ている人なんて、最悪。
「しかも期待を裏切ってくれたし。私はもっと盗賊らしいのが見たかったのに」
だから--。
「消えて」
私はそっと自分の耳たぶに触れた。
指先が、丸い石に触れる。
蒼いピアス。
暗い蒼。
指先で石を外す。
そして、
ポイっと傭兵たちのそばに落とした。
「『ルーシア』」
名を呼ぶ。
私のかわいいお人形。
「食べて」
全部。
一つ残らず。
骨一つ。
髪の毛一本。
残さず。
「全部食べて」
ぞろり、と。
暗い蒼が膨れ上がった。
私は魔王軍四天王だ。
正確には戻るつもりがないから元、になるけれど。
四天王の地位に上り詰めるためには、研究や開発、改良という裏方の仕事だけでは足りなかった。
だけど、戦場に私の仕事はない。
指揮をとるだけの頭はなく、チマチマとした戦いができるタイプでもない。
私にできるのは周りへのサポート的役割と大規模殲滅魔法。
だから私は私の代わりを作った。
私の代わりに戦場で仕事をしてくれるお人形。
それは『てれび』や『らのべ』の中で見る『すらいむ』に似ている。
本当はどちらかというとホムンクルスなんだけど。
暗い蒼は3つに分裂すると、瞬きを一つする間に傭兵たちの足下にどろりとした水溜まりを作り、呑み込んだ。
暗い蒼の粘液が悲鳴を上げる間もなく三人の傭兵たちを足下から頭まで全部呑み込んで溶かして消し去る。
私はそれを眺めてから、「あ、」と声を出した。
もったいないことをしたかも。
悲鳴を上げる時間を与えてあげれば「あべぶっ!」とか言ってくれてたかも知れないのに。
いや、あれはアニメだからこそのもので、実際はないか。
でも今度機会があれば試してみよう。
「さって、こっちはどうしようかな?」
気を取り直して気を失ったままの少年の前にしゃがみこむ。
傷自体は深くはない。
だけど血を流し過ぎている。
このままなら意識を戻すことはなく、死んでいくだろう。
「キレイな顔」
さらりとした髪を指で撫でる。
「んー、どんな色なんだろ」
青?緑?薄茶?
髪や肌の色からして色素は薄めっぽい。
「うっし、治して見るか」
私の動機なんてそんなものだ。
瞳の色が気になるから。
だから助ける。
あとは一応情報収集と。
思ってたのと違う。
盗賊というよりも冒険者か傭兵といった感じだった。
そして襲われていたのは商人のオジサンではなく若い騎士らしき男の人。
男の人、というより男の子、というべきか。
まだ12、3あたりだと思う。
ま、けど。
この三人組が男の子を襲っていたのは間違いないっぽい。
だったら私がすることは決まっているよね?
本の中でも『てれび』のアニメの中でも、複数が一人を襲っているってのは悪者と相場が決まっている。
「……な、んだぁ」
「どこから来たんだ?」
「って、あの瞳の色。頭の角--まさか」
おや、魔族の身体的特徴を知ってるんだね。
ということは戦争に駆り出されたこともある傭兵ってところかな?
気が遠くなるほど長く長く戦争をしている人間と魔族。
だけれど実のところ魔族領は大陸の中でも端っこの端っこにある半島で、境には深い谷が存在しているため、人間が魔族の姿を見る機会ってのはほとんどない。唯一まともに行き来できる道が国境の峠道で、そこは常に戦地になっている。
魔族は基本的に軍人以外は国の外に出ない。
国境近くの街や村の人間ならともかく、遠く離れたこの付近の人間なら一度も見たことがない方が多いだろうと思うのだ。
だけど傭兵なら国境の戦地に赴いたことがあっても不思議じゃない。
私はそんなことを思いながらチラリと背後を伺う。
二頭立ての馬車に背をもたれさせて気を失っている少年。
傭兵たちと同じく人間。
淡い金の髪に肌は白い。
右の肩から腹にかけてを浅く切られていて、結構な出血をしている。
残念ながらまぶたは固く閉じられていて瞳の色はわからないけど、キレイな顔をしているのは確か。
「私、キレイなものって好きなの」
キレイな宝石も
キレイなドレスも
キレイな景色も
キレイな顔も好き
「でも醜いものはキライ」
特に内面の卑しさや醜さが外面に出ている人なんて、最悪。
「しかも期待を裏切ってくれたし。私はもっと盗賊らしいのが見たかったのに」
だから--。
「消えて」
私はそっと自分の耳たぶに触れた。
指先が、丸い石に触れる。
蒼いピアス。
暗い蒼。
指先で石を外す。
そして、
ポイっと傭兵たちのそばに落とした。
「『ルーシア』」
名を呼ぶ。
私のかわいいお人形。
「食べて」
全部。
一つ残らず。
骨一つ。
髪の毛一本。
残さず。
「全部食べて」
ぞろり、と。
暗い蒼が膨れ上がった。
私は魔王軍四天王だ。
正確には戻るつもりがないから元、になるけれど。
四天王の地位に上り詰めるためには、研究や開発、改良という裏方の仕事だけでは足りなかった。
だけど、戦場に私の仕事はない。
指揮をとるだけの頭はなく、チマチマとした戦いができるタイプでもない。
私にできるのは周りへのサポート的役割と大規模殲滅魔法。
だから私は私の代わりを作った。
私の代わりに戦場で仕事をしてくれるお人形。
それは『てれび』や『らのべ』の中で見る『すらいむ』に似ている。
本当はどちらかというとホムンクルスなんだけど。
暗い蒼は3つに分裂すると、瞬きを一つする間に傭兵たちの足下にどろりとした水溜まりを作り、呑み込んだ。
暗い蒼の粘液が悲鳴を上げる間もなく三人の傭兵たちを足下から頭まで全部呑み込んで溶かして消し去る。
私はそれを眺めてから、「あ、」と声を出した。
もったいないことをしたかも。
悲鳴を上げる時間を与えてあげれば「あべぶっ!」とか言ってくれてたかも知れないのに。
いや、あれはアニメだからこそのもので、実際はないか。
でも今度機会があれば試してみよう。
「さって、こっちはどうしようかな?」
気を取り直して気を失ったままの少年の前にしゃがみこむ。
傷自体は深くはない。
だけど血を流し過ぎている。
このままなら意識を戻すことはなく、死んでいくだろう。
「キレイな顔」
さらりとした髪を指で撫でる。
「んー、どんな色なんだろ」
青?緑?薄茶?
髪や肌の色からして色素は薄めっぽい。
「うっし、治して見るか」
私の動機なんてそんなものだ。
瞳の色が気になるから。
だから助ける。
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