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スローライフ始めます?
その4
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まずは治癒魔法で傷を塞ぐ。
私の使う魔法の多くは人間の使う『錬金術』によく似ている。
何かを成すには何かを捧げる。
等価交換。
『ドラゴ』を作った時には魔鉱石と魔力を捧げ、『名前』を与えることで私と絆を結んだ。
『ドラゴ』が何かを行う時は私の魔力が消費される。
治癒魔法に捧げるのも私の魔力。
ただし失った血を戻すのには私の血を捧げる。
血は命そのもの。
命を一部とはいえ与えるなら、代償もそれなりのものが必要になる。
魔力だけでは足りない。
そのため私は空間収納魔法からナイフを取り出して自分の指先に小さな傷を付けた。
その様子を後ろで見ていた『ルーシア』が「マイロード!」と非難の声を上げる。
「そのようなどこの者とも知れぬ輩のために御身に傷を付けるなど!」
『ルーシア』は粘液状の身体から、人の姿に見た目を変えている。水色の髪に蒼い瞳の女性体。
声もそれに合わせて女性らしい高い声だ。
「こんなの舐めときゃ治るわよ。ぎゃんぎゃん喚かないの」
私はそう『ルーシア』を宥めて僅かに血の滲んだ指先を少年の唇に押しあてる。
「『造血』」
失った分の血を、魔法で造る。
少年自身の身体が持つ治癒力を高めて増血させるという手もあるけど、それだと少年の身体に負担がかかる。だから、魔族で造った。
すぐにほんのりと頬が染まって、
数分もすると、少年はうっすらと瞳を開いた。
「……魔族?」
「あ、」
少年の呟きに、私はしまった。と自分のミスを悟った。
--瞳の色と角。
そのままだった、と。
それにしてもこんな少年も知っているなんて、人間は魔族の特徴を私の認識よりもしっかりわかってるのかな?
まあ、角のある人間なんていないんだろうけど、それでも角といっても髪に大半は隠れているちっちゃなものだし、瞳の色だって赤はなくても近い色はあるはずだ。
赤茶とか、オレンジとか。
不吉だとか言われてろくな目には合わないって聞くけど。
私の認識からすると人間が魔族だと思っている存在のほとんどは魔族ではなく魔族の使い魔である。
つまり『ドラゴ』とか『ルーシア』のような存在だ。
戦場でも最前線で最初に戦うのは使い魔。
もっとも使い魔を作るのも働かせるにも相当の魔力がいるから、高位の魔族でも持っている数はだいたい1、2体。それも知能の低い獣と変わらないもの。
なので人間にとっての魔族は獣の身体に羽根が生えてたり頭が複数ついてたりする虎だったりする。というのが私の認識。
けれど思ったよりも魔族自体の特徴も知られているみたい。
魔族は魔力が強いほど見た目が人間と変わらない。
ただし必ず頭のどこかに角が生えている。
そして瞳の色が赤い。
私のように。
「……何故魔族がこんな場所にいる?」
あらひどい。
少年はまだ上手い動かせない様子の身体で、それでも立ち上がって私を睨みつけてくる。
私、一応命の恩人なんだけどなあ。
「ん、えーっと」
ところでなんと答えよう。
逃亡中?それとも旅人です?
「……傭兵たちはどこに--?」
少年は顔をこちらに向けたまま視線を彷徨わせる。
「あ、やっぱあれ傭兵だったんだ!あれはー、その悪者っぽかったから退治しました!」
ビシッと腕を振り上げて宣言した私に、向けられるのは少年の胡乱な目。
なんだよ。
なんだよ、その目はなにさ!
「魔族のくせに何を言っている?悪者だから退治しただと?バカなっ」
あ~、ま~そう思いますよね~。
人間にとっては魔族こそが何より存在悪ってか。
「貴様!助けられた分際でよくもそのような!!」
「……助け?」
憤慨して口を挟んだ『ルーシア』の言葉に、少年は訝しげに眉をひそめて私を見た。
思ってた通り淡い色のキレイな瞳。
薄い透き通る色味の青と紫の中間みたいな色。
紫陽花の色だ。
「キレイ」
私は思わずそう口に出していた。
ついでに身を乗り出して見つめる。
宝石みたい。
それか異世界にあるビー玉てかいう丸い石の玉。
少年が顔を赤くして瞳を逸らそうとするから、私は両手を伸ばして頬を挟む。
「……っ」
少年のビー玉の瞳が動揺に揺れる。
「ねえ、少年」
私は深く考えないまま言葉を口にした。
「私のものになる?」
--と。
あとで思い出してなんつー恥ずかしいセリフを口にしてんだと穴を掘りたい気分になるのだが、この時の私はしごく真面目だった。
弁解しておくと、決してエッチい気持ちがあったわけではない。
どらまの中で年上お姉様風女が年下クンに迫るシーンみたいなセリフだけれど、断じてそんなつもりはなかったのだ。
そう、捨てられてた子犬に「うちの子になる?」と言っているような気分であった。
私の使う魔法の多くは人間の使う『錬金術』によく似ている。
何かを成すには何かを捧げる。
等価交換。
『ドラゴ』を作った時には魔鉱石と魔力を捧げ、『名前』を与えることで私と絆を結んだ。
『ドラゴ』が何かを行う時は私の魔力が消費される。
治癒魔法に捧げるのも私の魔力。
ただし失った血を戻すのには私の血を捧げる。
血は命そのもの。
命を一部とはいえ与えるなら、代償もそれなりのものが必要になる。
魔力だけでは足りない。
そのため私は空間収納魔法からナイフを取り出して自分の指先に小さな傷を付けた。
その様子を後ろで見ていた『ルーシア』が「マイロード!」と非難の声を上げる。
「そのようなどこの者とも知れぬ輩のために御身に傷を付けるなど!」
『ルーシア』は粘液状の身体から、人の姿に見た目を変えている。水色の髪に蒼い瞳の女性体。
声もそれに合わせて女性らしい高い声だ。
「こんなの舐めときゃ治るわよ。ぎゃんぎゃん喚かないの」
私はそう『ルーシア』を宥めて僅かに血の滲んだ指先を少年の唇に押しあてる。
「『造血』」
失った分の血を、魔法で造る。
少年自身の身体が持つ治癒力を高めて増血させるという手もあるけど、それだと少年の身体に負担がかかる。だから、魔族で造った。
すぐにほんのりと頬が染まって、
数分もすると、少年はうっすらと瞳を開いた。
「……魔族?」
「あ、」
少年の呟きに、私はしまった。と自分のミスを悟った。
--瞳の色と角。
そのままだった、と。
それにしてもこんな少年も知っているなんて、人間は魔族の特徴を私の認識よりもしっかりわかってるのかな?
まあ、角のある人間なんていないんだろうけど、それでも角といっても髪に大半は隠れているちっちゃなものだし、瞳の色だって赤はなくても近い色はあるはずだ。
赤茶とか、オレンジとか。
不吉だとか言われてろくな目には合わないって聞くけど。
私の認識からすると人間が魔族だと思っている存在のほとんどは魔族ではなく魔族の使い魔である。
つまり『ドラゴ』とか『ルーシア』のような存在だ。
戦場でも最前線で最初に戦うのは使い魔。
もっとも使い魔を作るのも働かせるにも相当の魔力がいるから、高位の魔族でも持っている数はだいたい1、2体。それも知能の低い獣と変わらないもの。
なので人間にとっての魔族は獣の身体に羽根が生えてたり頭が複数ついてたりする虎だったりする。というのが私の認識。
けれど思ったよりも魔族自体の特徴も知られているみたい。
魔族は魔力が強いほど見た目が人間と変わらない。
ただし必ず頭のどこかに角が生えている。
そして瞳の色が赤い。
私のように。
「……何故魔族がこんな場所にいる?」
あらひどい。
少年はまだ上手い動かせない様子の身体で、それでも立ち上がって私を睨みつけてくる。
私、一応命の恩人なんだけどなあ。
「ん、えーっと」
ところでなんと答えよう。
逃亡中?それとも旅人です?
「……傭兵たちはどこに--?」
少年は顔をこちらに向けたまま視線を彷徨わせる。
「あ、やっぱあれ傭兵だったんだ!あれはー、その悪者っぽかったから退治しました!」
ビシッと腕を振り上げて宣言した私に、向けられるのは少年の胡乱な目。
なんだよ。
なんだよ、その目はなにさ!
「魔族のくせに何を言っている?悪者だから退治しただと?バカなっ」
あ~、ま~そう思いますよね~。
人間にとっては魔族こそが何より存在悪ってか。
「貴様!助けられた分際でよくもそのような!!」
「……助け?」
憤慨して口を挟んだ『ルーシア』の言葉に、少年は訝しげに眉をひそめて私を見た。
思ってた通り淡い色のキレイな瞳。
薄い透き通る色味の青と紫の中間みたいな色。
紫陽花の色だ。
「キレイ」
私は思わずそう口に出していた。
ついでに身を乗り出して見つめる。
宝石みたい。
それか異世界にあるビー玉てかいう丸い石の玉。
少年が顔を赤くして瞳を逸らそうとするから、私は両手を伸ばして頬を挟む。
「……っ」
少年のビー玉の瞳が動揺に揺れる。
「ねえ、少年」
私は深く考えないまま言葉を口にした。
「私のものになる?」
--と。
あとで思い出してなんつー恥ずかしいセリフを口にしてんだと穴を掘りたい気分になるのだが、この時の私はしごく真面目だった。
弁解しておくと、決してエッチい気持ちがあったわけではない。
どらまの中で年上お姉様風女が年下クンに迫るシーンみたいなセリフだけれど、断じてそんなつもりはなかったのだ。
そう、捨てられてた子犬に「うちの子になる?」と言っているような気分であった。
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