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呪いと真実
その6
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家が決まって住めるようになるまでにクルドと同じ宿屋に泊まることになった。
部屋は別々。
お金はクルドが出してくれた。
クルドは旅の間に狩った獣の皮や牙なんかを売ってお金にしていた。
騎士なのに剣よりも弓の方が得意みたいだ。
武器はナイフを一つと弓矢のセット、短剣を私が魔法で作ってあげた。
お肉は私たちのお腹に収まった。
塩胡椒で焼いただけとかなのに、やたらとうまかった。たぶん気分的なものが良い調味料になったのだろう。
宿屋の部屋に入ると、私はさっそく『空間収納魔法』から一つの魔法具を取り出す。
備え付けのテーブルの上に置いて、軽く魔力を流す。
すると、魔法具から若い女性の声が聞こえてきた。
「よかったんですか?」
不動産屋のカウンターには受付嬢らしい女性がいた。最初、その女性に条件を伝えて、案内はオヤジだった。
この声は受付嬢のものだ。
「何がだ?」
ちょっぴり不機嫌そうなオヤジの声。
うん。ばっちり盗聴できてます。
ぐふふ。
私がオヤジの襟に仕込んでおいたのは『盗聴』の魔法具だ。
半径2メルほどと範囲は狭いけれど、範囲内の声はしっかり拾ってくれる。
テーブルに置いたのは対の魔法具。
『すぴーかー』である。
「さっきのお客さんに勧めてたの、例の物件ですよね?」
ほほう、例の!
私は興味津々で『すぴーかー』に耳を寄せる。
口元が緩んで仕方ない。
なんともバッチグーなタイミングである。
さすが私!
クルドを急かして大急ぎで宿に駆け込んだかいがあったというものだ。
「ああ。それが何だ?客の要望に応えて案内しただけだろう」
「ですが……」
少しだけ咎めるような声を上げて、女性が口を噤んだ気配が伝わってきた。
オヤジに睨まれでもしたかな?
いかんよ!『ぱわはら』わ!
「それに他の物件だって案内してるんだ。なんの問題もない」
わずかに気持ち悪い笑い声がした。
うえぇキッモ!
「借り手のない不良物件を世間知らずのお嬢さんが借りてくれるかも知れないんだ。まったくありがたい話じゃないか」
「でも」
「だいたいなんだ。怪我でもする危険があるわけでもないだろう?ちょっとおかしな噂があるってだけで。その分賃料だって格安なんだ。それともいちいちここにはこういう噂があるんですとでも説明しろって言うのか。その噂だって大したものでもない。たかが夜な夜な女の声が聞こえるとかだったか?どうせ隣近所の声が聞こえてるんだよ」
はあん、女の声ねぇ?
それって、もしかして?
あれですか。
ゆがつく四文字だったり?
「でも若い女性なんですよ?きっと……」
「いいじゃないか。見ただろ?あの二人組。どうせ金持ちのお嬢さんが庶民の暮らしを体験してみたいとか言って家出してきたんだよ。あの子供はきっと小間使いか何かか。お嬢さんの我が儘につきあわされてるのに違うない。少しばかり怖い思いをすればサッサと家に泣いて帰るに違いない。親御さんからすればむしろ感謝されてもいいくらいじゃないか」
「……」
ザザザ。
と雑音が入り始める。
これは便利道具だけど、込められる魔力がまだ少ないものであまり時間がもたない。
「もういいだろ。ああ、お茶でも入れてくれ」
雑音に紛れて小さくなったオヤジの声。
私はパチンと指を鳴らした。
面白い情報をくれたのはいいけど、受付嬢への『ぱわはら』といい、私を我が儘扱いしたことといい、お仕置きは必要だろう。
『すぴーかー』の向こうからオヤジの切羽詰まった悲鳴が聞こえた。
別に暴力的なことは何もしていない。
役目を終えた魔法具が一つポン、と火花を散らして燃え尽きただけ。
ただその場所が襟の裏からオヤジの頭頂部に移動するようにしただけだ。
被害はおそらく頭頂部のちびっとな円形ハゲくらいのものだろう。
サイズはたぶん小皿一つ分くらいかな?
カッパみたいな素敵頭になっていてほしい。
部屋は別々。
お金はクルドが出してくれた。
クルドは旅の間に狩った獣の皮や牙なんかを売ってお金にしていた。
騎士なのに剣よりも弓の方が得意みたいだ。
武器はナイフを一つと弓矢のセット、短剣を私が魔法で作ってあげた。
お肉は私たちのお腹に収まった。
塩胡椒で焼いただけとかなのに、やたらとうまかった。たぶん気分的なものが良い調味料になったのだろう。
宿屋の部屋に入ると、私はさっそく『空間収納魔法』から一つの魔法具を取り出す。
備え付けのテーブルの上に置いて、軽く魔力を流す。
すると、魔法具から若い女性の声が聞こえてきた。
「よかったんですか?」
不動産屋のカウンターには受付嬢らしい女性がいた。最初、その女性に条件を伝えて、案内はオヤジだった。
この声は受付嬢のものだ。
「何がだ?」
ちょっぴり不機嫌そうなオヤジの声。
うん。ばっちり盗聴できてます。
ぐふふ。
私がオヤジの襟に仕込んでおいたのは『盗聴』の魔法具だ。
半径2メルほどと範囲は狭いけれど、範囲内の声はしっかり拾ってくれる。
テーブルに置いたのは対の魔法具。
『すぴーかー』である。
「さっきのお客さんに勧めてたの、例の物件ですよね?」
ほほう、例の!
私は興味津々で『すぴーかー』に耳を寄せる。
口元が緩んで仕方ない。
なんともバッチグーなタイミングである。
さすが私!
クルドを急かして大急ぎで宿に駆け込んだかいがあったというものだ。
「ああ。それが何だ?客の要望に応えて案内しただけだろう」
「ですが……」
少しだけ咎めるような声を上げて、女性が口を噤んだ気配が伝わってきた。
オヤジに睨まれでもしたかな?
いかんよ!『ぱわはら』わ!
「それに他の物件だって案内してるんだ。なんの問題もない」
わずかに気持ち悪い笑い声がした。
うえぇキッモ!
「借り手のない不良物件を世間知らずのお嬢さんが借りてくれるかも知れないんだ。まったくありがたい話じゃないか」
「でも」
「だいたいなんだ。怪我でもする危険があるわけでもないだろう?ちょっとおかしな噂があるってだけで。その分賃料だって格安なんだ。それともいちいちここにはこういう噂があるんですとでも説明しろって言うのか。その噂だって大したものでもない。たかが夜な夜な女の声が聞こえるとかだったか?どうせ隣近所の声が聞こえてるんだよ」
はあん、女の声ねぇ?
それって、もしかして?
あれですか。
ゆがつく四文字だったり?
「でも若い女性なんですよ?きっと……」
「いいじゃないか。見ただろ?あの二人組。どうせ金持ちのお嬢さんが庶民の暮らしを体験してみたいとか言って家出してきたんだよ。あの子供はきっと小間使いか何かか。お嬢さんの我が儘につきあわされてるのに違うない。少しばかり怖い思いをすればサッサと家に泣いて帰るに違いない。親御さんからすればむしろ感謝されてもいいくらいじゃないか」
「……」
ザザザ。
と雑音が入り始める。
これは便利道具だけど、込められる魔力がまだ少ないものであまり時間がもたない。
「もういいだろ。ああ、お茶でも入れてくれ」
雑音に紛れて小さくなったオヤジの声。
私はパチンと指を鳴らした。
面白い情報をくれたのはいいけど、受付嬢への『ぱわはら』といい、私を我が儘扱いしたことといい、お仕置きは必要だろう。
『すぴーかー』の向こうからオヤジの切羽詰まった悲鳴が聞こえた。
別に暴力的なことは何もしていない。
役目を終えた魔法具が一つポン、と火花を散らして燃え尽きただけ。
ただその場所が襟の裏からオヤジの頭頂部に移動するようにしただけだ。
被害はおそらく頭頂部のちびっとな円形ハゲくらいのものだろう。
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