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第160話 勤務先に足を引っ張られる
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しかし佐野は、それでもなお沈黙していた。
ここで意気込み勇んで「僕も協力します」とか、「何かお手伝いできますか」などと言っても、みんなから失笑を買うだけだからだ。
現に今朝も現場責任者からピシャリと断られている。かといって、われ関せずな態度も感じが悪い。そこがさじ加減の難しいところだ。
これはもう、流れにまかせるしかない。
佐野は夜間作業の手伝いを申し出たいのと、余計な口を挟まないようにすることの間
を行ったり来たりしながら己に強く言い聞かせる。今の自分の立場では、どちらを選んでも悪く取られるからだ。
悔しい。古山建設に少しでも信用が残っていれば、こんなくだらないことで悩まないのに。勤務先の評判の悪さに足を引っ張られるのが、これほどまでに苛立たしく感じたことはない。
そして、こんな心持ちで窓際に立つ自分をユキはどう思うだろうか。立場を察して肯定するだろうか。それとも失望して軽蔑するだろうか――
思考の中にユキが入り込んだ途端、佐野の決心は激しくぐらついてしまう。
ここで意気込み勇んで「僕も協力します」とか、「何かお手伝いできますか」などと言っても、みんなから失笑を買うだけだからだ。
現に今朝も現場責任者からピシャリと断られている。かといって、われ関せずな態度も感じが悪い。そこがさじ加減の難しいところだ。
これはもう、流れにまかせるしかない。
佐野は夜間作業の手伝いを申し出たいのと、余計な口を挟まないようにすることの間
を行ったり来たりしながら己に強く言い聞かせる。今の自分の立場では、どちらを選んでも悪く取られるからだ。
悔しい。古山建設に少しでも信用が残っていれば、こんなくだらないことで悩まないのに。勤務先の評判の悪さに足を引っ張られるのが、これほどまでに苛立たしく感じたことはない。
そして、こんな心持ちで窓際に立つ自分をユキはどう思うだろうか。立場を察して肯定するだろうか。それとも失望して軽蔑するだろうか――
思考の中にユキが入り込んだ途端、佐野の決心は激しくぐらついてしまう。
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