かなり遅れたクリスマス～最悪な出逢いから始まる、人生の大逆転と恋の予感の物語

第２５７話 即興かつ、急場しのぎで絞り出す

「……そんなに俺の趣味って、悪いのかな」
 ユキは佐野とオーナーの当惑した顔を目の当たりにして、気落ちした声で言う。
「いいえ！」
　佐野は慌てて否定する。そして、どのように表現したらユキが傷つかないか、猛スピードで考える。
「その、何と言ったら良いか……部分的に、ばらつきがあるというか……」
　即興かつ、急場しのぎで絞り出す。
「ばらつき？」
　ユキが佐野の顔をじっと見る。　
「はい。全部が全部、悪いのではないと」
　佐野は内心はらはらしながら言葉を返す。
「そうか。なら、いいや」
　ユキの表情に落ち込みや動揺はない。
　よかった。落ち込んではいなさそうだ。佐野はホッと胸をなで下ろす。オーナーも佐野の言葉に大きくうなずいている。
　そして佐野は、さらに補足する。
「なぜなら今、身につけているネクタイやワイシャツの趣味や組み合わせに何ら問題はありません。むしろ素敵です」と。