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第272話 良心の呵責が限界に達する
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ユキは佐野の異変に気づき、すぐさまその顔を覗き込む。次いで背中を優しくさすり、大丈夫かと目で伝えた。
佐野はそこでようやく我に返り、ユキへ小さくうなずくと、視線を再びスマホへ向ける。
「ありがとう、鈴木。僕は――巻き込まれてはいない――その騒ぎには」
佐野は歯切れの悪い口調で言う。その表情は硬く、何かを深く考えているようである。
『そうか。よかった。でも会社に戻ったら、まずは机とロッカーの私物を確認しろよ。警察が来ているとはいえ、このどさくさにまぎれて何かを盗まれていたり、壊されているおそれがあるからな。ほら、さっき、会社の前に不法改造の車が二台停まってるって言ったろ? だから星崎とレイナは当然として、その車の奴らが何かやらかしてるかもしれないからさ』
「……うん」
自分の仕事をそっちのけにして、ここまで自分のことを心配してくれている鈴木に、佐野の目頭は熱くなる。
そうしているうちに涙がドッとあふれ出し、咄嗟にスマホを持っていない方の手で目鼻を覆う。良心の呵責が限界に達したのだ。
一方、ユキは、そんな佐野に寄り添い、黙って成り行きを見守っている。
そして通話の内容から、現在、古山建設には警察と救急車が来ていること、また、不法改造車も停まっていることを把握する。
さらには二人の会話に妙なズレが生じているのも見抜き、もしや佐野は、鈴木に自分が橋本建設へ転職したことを伝えていないのではないか――と、思うのであった。
佐野はそこでようやく我に返り、ユキへ小さくうなずくと、視線を再びスマホへ向ける。
「ありがとう、鈴木。僕は――巻き込まれてはいない――その騒ぎには」
佐野は歯切れの悪い口調で言う。その表情は硬く、何かを深く考えているようである。
『そうか。よかった。でも会社に戻ったら、まずは机とロッカーの私物を確認しろよ。警察が来ているとはいえ、このどさくさにまぎれて何かを盗まれていたり、壊されているおそれがあるからな。ほら、さっき、会社の前に不法改造の車が二台停まってるって言ったろ? だから星崎とレイナは当然として、その車の奴らが何かやらかしてるかもしれないからさ』
「……うん」
自分の仕事をそっちのけにして、ここまで自分のことを心配してくれている鈴木に、佐野の目頭は熱くなる。
そうしているうちに涙がドッとあふれ出し、咄嗟にスマホを持っていない方の手で目鼻を覆う。良心の呵責が限界に達したのだ。
一方、ユキは、そんな佐野に寄り添い、黙って成り行きを見守っている。
そして通話の内容から、現在、古山建設には警察と救急車が来ていること、また、不法改造車も停まっていることを把握する。
さらには二人の会話に妙なズレが生じているのも見抜き、もしや佐野は、鈴木に自分が橋本建設へ転職したことを伝えていないのではないか――と、思うのであった。
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