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第304話 これはもう、先が見えている
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その一方で工事部の社員達は、過去に取引のあった会社へ営業で回っているうちに、自分達の勤務先が、どれほど忌み嫌われているのかを身をもって分かってくる。
また、他社の穏やかな雰囲気や、笑みを交えた人間関係を端から見ているうちに、自社の異常さにようやく気づくのであった。
結果、工事部員達は次から次へと会社を辞めていき、ついには星崎とレイナだけになってしまったのだと。
また、当然のことながら、社長は社員達の在籍時までの賃金を佐野と同じく踏み倒し、失業保険の受給に必要な書類もわざと作成せずに放置しているという。
とはいえ、受注はないものの、工事部に技術者がいなくなったら会社は成り立たない。
そこで、求人情報誌へ募集を出すのだが、案の定、一人も来ない。悪い噂が隅々まで行き渡っているからだ。
「これはもう、先が見えていますね」
鈴木が、ため息混じりに言う。
「はい。ですので――私は今日付けで、この会社を辞めます。これ以上ここにいたら、ろくなことにならないので」
今の話を説明していた女性社員が、そう言って苦笑する。
「じゃあ、私もそうしようかな。変な話だけど、今日のことでふんぎりがついたわ」
もう一人の女性社員が言う。
「私もそうするわ。こんな不景気だから、次の職場を見つけるのが難しいのもあって、この会社に無理していたけれど、もう限界。私も今日付けで辞めるわ」
「そうね。たとえお金のためとはいえ、あの一家の奴隷扱いにはもうこりごり。私もさっさと退散するわ」
他の女性社員達も、そのように小さく笑って互いにうなづき合う。
するとそこで、佐野が、おずおずと口を開く。
「あの……すみませんが、こんな時に話す内容ではないのですけれど、ちょっとお聞きしたいことがありまして――」
また、他社の穏やかな雰囲気や、笑みを交えた人間関係を端から見ているうちに、自社の異常さにようやく気づくのであった。
結果、工事部員達は次から次へと会社を辞めていき、ついには星崎とレイナだけになってしまったのだと。
また、当然のことながら、社長は社員達の在籍時までの賃金を佐野と同じく踏み倒し、失業保険の受給に必要な書類もわざと作成せずに放置しているという。
とはいえ、受注はないものの、工事部に技術者がいなくなったら会社は成り立たない。
そこで、求人情報誌へ募集を出すのだが、案の定、一人も来ない。悪い噂が隅々まで行き渡っているからだ。
「これはもう、先が見えていますね」
鈴木が、ため息混じりに言う。
「はい。ですので――私は今日付けで、この会社を辞めます。これ以上ここにいたら、ろくなことにならないので」
今の話を説明していた女性社員が、そう言って苦笑する。
「じゃあ、私もそうしようかな。変な話だけど、今日のことでふんぎりがついたわ」
もう一人の女性社員が言う。
「私もそうするわ。こんな不景気だから、次の職場を見つけるのが難しいのもあって、この会社に無理していたけれど、もう限界。私も今日付けで辞めるわ」
「そうね。たとえお金のためとはいえ、あの一家の奴隷扱いにはもうこりごり。私もさっさと退散するわ」
他の女性社員達も、そのように小さく笑って互いにうなづき合う。
するとそこで、佐野が、おずおずと口を開く。
「あの……すみませんが、こんな時に話す内容ではないのですけれど、ちょっとお聞きしたいことがありまして――」
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