公女は祖国を隣国に売ることに決めました。

彩柚月

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王太子の事情

11 婚約解消

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「婚約の解消だ。」

とうとうロザリアに告げた。あれからも散々考えたが、これがいちばん良い解決方法だと結論付けた。

ーー私達と私達の家とその家族と…そして、この国に誓った約束です。

そうロザリアは言うが、私はそんな約束をした覚えはない。ロザリアもないと言う。

やはり、お互い、この婚約を良しとは思っていなかったのだ。

嫌だと思っているのに、その立場に縛り付けられることは不幸なことだ。私達は、お互いが嫌だと思っているのだから、解消をすることで、ロザリアを解放することもできる。

破棄ではなく解消だから、ロザリアの面目も保たれるだろう。


父上は少し怒っている風だったが、よく考えた結果だと強調したら納得してくれたようだった。

ただ、確かにと伝えたはずなのに、になっていたことには、ロザリアに裏切られた気持ちになった。

おまけに、ロザリア側からの破棄で、多額の慰謝料を要求されているらしい。幸い、国庫を崩すことはないものの、王室の資産は枯渇したようで、私の個人資産も取り上げられてしまった。

まあいい。
金はまた時期がきたら予算がつくはずだ。それまでの我慢であるし、とにかく、ロザリアとの婚約はなくなったのだ。この後、マリアを側に置く為に動くことができる。



…と、思っていたのだが、何故かすんなりとマリアを側に置くことが許された。

そして、隣国クレイドの皇女がやってくるという。私の新しい婚約者ということか?

資金もクレイドが支援してくれるようだ。金で私を操ろうとされては困ると思っていたら、王女は新しいーー後宮に手を加えて生まれ変わったように美しい建物になった離宮に閉じ籠っている。


そこで女だてらに政務をこなしているのだと側近達が教えてくれた。クレイドが金を出すのだから、金の使い方を見直すとかなんとか…。私の側近なのに、皇女を手伝っているのだという。

なんだ?私の知らないところで何かが動いている気配がするものの、元々私はあまり国政には携わっていないので、今も傍観するしかなかった。しかしそれでも今までは情報や報告だけはされていたのだが。今はそれさえも中途半端にしか知らされていないような気がする。

私は父上に呼び出され、やっと事情を教えて貰えるのかと思ったのだが。

「皇女は王妃になるために、ここへ来てくださった。丁重に応対し失礼のないように。時が来るまで不必要に近づくな。」


王妃に?ならやはり私の婚約者と言うことか。近づくなだと。金を出したからと、お高く止まっているようだ。しかしこの国に嫁ぐのなら、私を立ててもらわなくては。

愛はマリアにだけ注ぐということを知って貰わねばならない。これを伝えることは不必要ではないはずだ。早速、話し合いの場を設けて…と、考えていたら、

「そして、お前はマリアとやらと、子作りに励むが良い。」

「え?は?」

父上の言った言葉がすぐに飲み込めなかった。

「望んでいたのだろう?わかっているとは思うが、婚姻とは違うので、式を挙げることはない。愛人契約の書類にサインをする場を設ける。その日から必死に励め。」


その時の私の喜びを表現する言葉はない。全てが上手く丸く収まるようだ。

こんなことなら、もっと早くにロザリアとの婚約をなかったことにしておけば良かった。

その嬉しさに浸っていた私は、その後の父上の言葉は聞こえていなかった。


ーーカートレット家から、令嬢が認める女性に限り、愛妾を認めるという条件変更の申し出があったというのに。
ーー子ができてもできなくても、マリアは一年で解放する。
ーーバカ息子め。


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