『桜の護王』

segakiyui

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2.護王(1)

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 暗闇に、白く見えるほどの満開の桜が浮かんでいる。
 風が鳴る。
 ごうごうと風が鳴っている。
 耳の中、いや、頭の中に無数の音が閉じ込められている。うわんうわんうわん。遠くなり近くなり、重なり合い交じり合う幾つもの声。
 遠くの闇から誰かが誰かを呼んでいる。
 ヒメサン……ヒメサン…。
 切なげに喘ぐ、吐息まじりに繰り返す声。
 入り乱れる音の中で、その囁きだけは繰り返し繰り返し、消えそうになりながら、呑み込まれそうになりながら、けれども次第に鮮やかな艶を帯びて。
 ヒメサン……ドコヘイッテ…シモタンヤ……オレヲオイテ……マタオイテ……トキノナガレニ…オキザリニシテ………。
 声は啜り泣いている。掠れた甘い響き。
 イツマデ……ヒトリデオッタラエエノ……イツマデ……アンタヲサガセバエエンヤ……。
 うぉんうぉんと泣く声は遠くの地鳴りのような音と重なり、まるで暗夜に呻く獣の声のよう。
 ヒトリハイヤヤ………ヒトリハイヤ……。
(綾子…?)
 小さな細い肩を震わせて、桜の根元で泣きじゃくっているのは、小学生のころの綾子だ。両親が交通事故で一度に死んで、遠くの山奥の村に住む親戚に引き取られることになったから。
(大丈夫、大丈夫だよ、綾子、私いっぱい手紙を書くから)
 洋子だって胸が痛くて辛くて、けれど何とか慰めたくて話しかける。
(綾子綾子、大丈夫だから)
 ううん、大丈夫じゃない、もう間に合わない。だって、ほうら、洋子ちゃん。
 俯いて両手で顔を覆っていた綾子が、ふいに泣きやんで体を起こした。
 こんなになっちゃったんだもん……。
 おどけて両手を広げてみせる姿はみるみる成長して白衣の看服姿、首元の濡れた妙な赤黒いマフラーをくすくす笑いながら解くと、押さえられていた鮮血が吹きこぼれる。
(!)
 ひく、と息を引いてたじろいだ。瞬間に、綾子は駆け寄ってきた看護師達の白衣に呑み込まれていく、幾十、幾百、幾千もの白衣が、まるで綾子の死骸にうなりをあげてたかっていく羽虫のようで、そしてまたそれは、頭上に咲き誇った桜の散り落ちた花弁が綾子の体に張りつき、包み込み、そこからすっくり綾子の精気を抜き取るようで。
(やめて、やめて、やめてーっ!)
 声を限りに叫んで綾子に駆け寄れば、桜の花びらがどっと洋子を取り巻いて視界を奪い息を塞ぐ。
 その中で、再びごうごうと鳴る、風の音。
 ああああ。
 すぐ目の前で看護師達に囲まれた綾子が不安定な声を上げて、がくんがくんと崩れていった。必死に洋子が差し伸べた手の、遥か先で地面に横たわる白衣姿、首元の紅が地面に広がるや否や、遠くから響いていた人の怒声とも何ともつかぬうなりが風と一緒に洋子を襲う。
(んんっ!)
 瞬間目を閉じて体を竦めた後に、ぼう、と空気の擦れる音が響いた。はっとして目をあげると、地面に倒れた綾子の体があっという間に炎に包まれていた。
(綾子、綾子!)
 燃え上がる、燃え上がっていく。綾子の姿が桜の根元で荼毘に伏されていく。
(そんな、だって、そんな!)
 一人っきりになってしまうと泣いていた綾子を、守ると言った、支えると約束した、遠くどんなに離れても、友達でいようと指切りしたのに。
 悲鳴を上げて駆け寄った洋子に、綾子を焼いた火が燃え移ってきた。
(わ、あ!)
 指先からぢぢぢと音をたてて一気に燃え広がる紅蓮の炎。耳から聞こえているとは思えない、体全部から吹き出すざわめき。洋子を包み、肌を髪を手足を目を、焼き焦がしながら食い尽くしていく灼熱の炎。ごうごうとうなっているのは、風か人か、それとも洋子のこの体か。
(うわああああっ)

「…あっ!」
 悲鳴を現実に持ち越して、洋子は目を開けた。
 荒い呼吸音が響いている。口元を覆った手は細かく震え、体は汗でびっしょりだ。
 洋子は震える手をそっと離して、まじまじと見た。
 小さな白い手、指輪の跡一つもない、マニキュアさえも塗っていない、そっけない女の手。
 だが、そこにはやけど一つ見当たらない。
(夢よね、夢なんだ)
 少し息を止めて、両手をそれぞれ包むように交互にあわせてから固く握り締め、洋子は目を閉じ、細く長く空気を吐き出した。
(そうだ、全部夢だったんだ)
 魔法のようにうまくいった発表会も、白衣を深紅に染めて倒れていた綾子の姿も。今日はまだ発表会の朝で、桜の夢のかわりに自分が焼かれる悪夢を見ただけだ。
 だが、すぐにそれは、儚い願望だったと気がついた。
 目を開けて、ゆっくりと周囲を見回せば、見覚えのある白くて無機質な天井、部屋の隅にモニターの無骨で冷たい箱が見える。何より側で眠っているはずの綾子の姿がない。部屋は夕暮れを過ぎた青い光でひたひたと満たされている。
(ああ…そうか)
 失望とともに目を閉じる。
 そこは病棟の緊急治療室だった。個室は確か満床だった。かといって、総室に白衣姿で気を失っている看護師を運び込むわけにもいかず、とりあえずここへ入れられたのだろう。
(どうして、綾子……いったい、何があった?)
 高校を卒業してすぐ綾子はこの街に戻ってきた。洋子が進む看護学校が全寮制なのを知って同じ学校を受験したのだと言った。それから5年、お互いに彼氏ができるまでだよと笑いながら、それでもずいぶん長く一緒に居た。
(もう…いないんだ)
 まっすぐ天井を向いたまま、両手で顔を覆った。
 脳裏にくるくると笑う綾子の顔が蘇る。それに白衣が寄り集まる場面が重なって、微かな吐き気を感じた。胃の腑が竦む。体が硬直する。加熱した頭が耐えかねたのか、視界が熱でにじむ。
「ひどいよ…」
 呻いた。
「ひどい…」
(誰があんなことしたんだ)
 綾子に何の罪があったというのだろう。
「なんで…?」
 今まで何度も聞いた問い、今まで何度も口にした問い。
(こんなに急に失う、なんて)
 溢れた涙を洋子は拭わなかった。
 閉められたドアの向こうでは、いつも通りの夜勤が始まっている。夕食時のざわめきが行き交う。夕飯ですよー……今日はどうだった? ……検査は明日……眠れるといいね……あ、おいしそう……。その温かさに助けられるように、洋子はしばらく声を殺して泣き続けた。
 やがて、ふわりとクリームシチューの匂いが漂ってきた。
(綾子の好きなメニュー…)
 それに気づいて、洋子は瞬きし、顔を掌で拭った。一つ大きく息をつく。
 がんばって、洋子ちゃん。
 そう呼び掛けられた気がした。もう決して聞くことはない、笑いを含んだ甘い声で。
(そうだ)
 洋子は唇を噛みしめた。胸の奥深くに言い聞かせる。
 人は死ぬ。
 いつか必ず、そして、時には突然に死ぬ。
 そんなことは重々わかっていたことなのに、それでもこうして突き付けられると、これほど容易く人は傷つく。
(しっかりしないと)
 伊達や酔狂で看護師してるわけじゃねーだろ。
 自分でへたな気合いをいれる。
(しっかりして)
 綾子を殺した犯人をこの目で見てやる。どうして殺したのか、その理由を聞いてやる。そのためにできることがあるなら、何だってやる。
(そうだ、あの得体の知れない男について、警察は知らないかもしれない)
 黒ずくめの妙な男。
 ひょっとして、あの男が綾子を付け回していたのだとしたら。今朝も綾子を探していたのだとしたら。
 ひょっとして、綾子の部屋に盗聴器とかつけていて、それで綾子がいないのに焦れて苛立っていたとしたら…ここのところ、発表のかげんで洋子の部屋に居ることが多かったから。
(泣いてる間にやれるだけのことをやろう)
 気持ちが定まってくると気力が戻ってきた。
 顔を思いっきり両手でこする。そんなことをしたら、肌が荒れるってよ、と綾子がよく笑った仕草だ。
 なんでもすぐに綾子に結び付けてしまうあたり、また涙が溢れそうになったのを堪えて、もう一度大きく息をつく。目を擦り、なにげなく窓の外を見やって……洋子は動きを止めた。
 薄闇に沈む空間、ベランダのすぐ側には大きな木が枝を延ばしていて、黒々とした枝をまだ淡い潤むような緑が飾っている。風は今は止まっているのだろう、葉の一枚も揺れていない。動かない光景が、窓を額縁として仕上げた絵画のように見える。
(なに…?)
 その木の枝に、何かが居る。
「…」
 息を呑んで目を凝らす。
 木の枝に、1人の男が、まるで駅のホームのベンチで電車でも待っているような無造作な様子で、だらんと足を垂らして座っていた。両手は膝の上、軽く指を組んでいる。真っ黒なTシャツに真っ黒なジーンズ、黒のスニーカー。黒ずくめの服装は夜闇に男の輪郭を融けいらせている。神経質そうな薄い唇は横一文字、そいだような頬と細い鼻筋。回りの新緑がなければ、そこだけモノクロ映画の一コマだと勘違いしそうなほど、整った美しい光景。
 けど。
(ここ、3階なのに)
 声にならない声で、洋子は胸の中で呟いた。
(なぜ、こんなところに…こいつがいる……?)
 その声が聞こえたようだった。
 男はうっすらと笑った。
 滑らかな頬がゆっくり緩む。両端をつり上げると一層きれいに見える形の唇が、今にも穏やかな挨拶にほころびそうだ。なのに、それは、親しげにも優しげにも見えなかった。むしろとてつもなく冷ややかな、細めた目の奥にガラスのように無情な色をたたえた微笑だ。
 凍りついている洋子の反応を楽しんででもいるような表情で、男は枝からゆっくりとベランダに移ってくる。
(危ないってば)
 体重がないのか、それとも男が幻なのか。
 声も出せないままの洋子をじっと見据えたまま、するするとベランダを移動して、部屋に続くドアをわずかに開けた透き間から入り込んでくる。しなやかに逸らせた体躯、伸びやかな首筋、まるで風が通り抜けたような滑らかな動き。
  場合が場合でなければ、そしてこの、部屋全体を圧迫してくるような緊張感さえなければ、ぽかんと口をあけて見愡れてしまったに違いない。
 男はごく自然な気配で、窓際から洋子のいるベッドに近づいてきた。ゆっくりとした動作で手を伸ばし、枕に広がった洋子の髪を意外に大きな骨張った左手でそっと一房、掬い上げる。
(声が…)
 出ない。
 洋子は瞬き一つできずに見守った。相手の動作は緩やかできれいだったが、その一つ一つが儀式のように張りつめていて、洋子もまた同じように緊張する。
 しばらく無言のまま目を伏せて、男は掬い取った洋子の髪の毛を静かに握っていた。数分、あるいは数秒か。ようやく得心がいったように、手の中の髪から瞳を動かして、洋子を見つめてくる。
 黒い瞳。虹彩も瞳孔も一体化してしまっているような、真っ黒で深い瞳。洋子を捉えなければ、光が宿っているのか疑ってしまいそうな、妙に間遠な視線。ふわ、と唇が開いた。
「どうして…殺した」
 低く掠れた柔らかな声だった。
(…え?)
 ごくりと唾を飲み込んだ。相手の言っていることがよくわからない。
 その洋子の表情をじっと見つめながら、男は冷ややかな微笑を浮かべた。
「20年、捜し回った。どこにもいなくて、イヌワラワも見つけられなかった。このままどうにかなるんかと思った。けれど見つけた。ようやく見つけた。なのに、声もかけられへんまま、お前に殺された」
(なに…?)
 男はどうやら綾子を殺したのは洋子だと思っているらしい。
 戸惑う洋子になおもひんやりとした笑みを注ぎながら、答えを待っている間の暇つぶし、そんな様子で、今度は洋子の髪を指先で弄び始める。
 男が手にしている自分の髪が、次の瞬間にも激しい勢いで引かれそうで体が震える。男の激情が髪の一筋一筋を伝ってぴりぴりと洋子の中へ流れてくる。へたに動くと刺激しそうだ。
 何とか答えようとするのだが、干上がった喉が許してくれない。
「お前には…わからへんやろ……永遠に…一人で生きることのつらさなんて………ようやく見つけた姫さんが……どれほどかけがえなく…大切かなんて…」
 男はそっと囁いた。
 今度はわずかにその声に、甘く切なげなものが漂った。
(この声…)
 聞いたことがある。
(あの…夢の…)
「俺が…どんな思いで探したかなんて…………わからへんやろ」
 洋子は男を見上げた。相手はどこか遠い瞳で低く囁き続けている。
(でも…どうして…いったい……)
「…あなた………誰…?」
 ようやく出せた囁き声に、その瞬間、男はひどく傷ついた顔になった。冷笑を消し、ぐっと眉根を寄せ、まるで、一番弱い部分で鋭いガラスを踏みつけた、そんな幼い顔になる。
「誰、やと?」
 黒い瞳が潤んで光を帯びた。奥歯を噛み締めるように顎の線が強ばっていく。
「俺が…誰か、やと」
 視界の端で、洋子の髪を男がゆっくり握り締めるのが見えた。こぶしが白くなるほど力をいれている。もし髪に感覚があったなら、千切られそうな痛みだったはずだ。
「俺は………護王や…姫さんを護る…護王や………そやけど」
 きり、と男のことばの合間に歯が鳴った。
「間に合わへん…かった……っ!」
 端整な顔が歪んで今にも泣き出しそうになった。
「護王…? 間に合わへん…?」
「そうや、お前のせいで!」
「あ!」
 ふいに、が、っと男は洋子にのしかかった。左手で髪の毛を引き、洋子の身体を引き寄せると一緒に右手を首に滑り込ませて握り込む。
「俺は…俺は………また…一人や!」
 押えつけた悲鳴のような叫びをもらして、男は唇を噛んだ。自分が口にした事実を認めたくないように、ニ、三度幼い仕草で顔を横に振る。わん、と窓の外で小さく犬の吠える声がした。
「うるさいっ、イヌワラワ! 俺はこいつだけは、許せへんのや、黙っとれ!」
「あ…ぐっっ」
 男の手の中に自分の首がすっぽり入り込む、その驚きが去った後にはみるみる容赦ない力が首に加えられて、洋子は身もがいた。
「もう、もたへんのに…もう……俺…もたへんのに……っ!」
 男はなおも悲鳴じみた泣き声を上げながら、洋子の首に力を込める。
(一人…? もたない………?)
 みるみる加熱してくる頭の隅に、護王のことばが微かに残る。暴れて抵抗する洋子に苛立ったのか、男が髪の毛から手を放した。両手で一気に締め落とそうとしたのだろうが、その瞬間僅かに相手に隙ができた。
「ふ、くっ!」
「わっ!」
 一瞬息を詰めて身体にかかっていた布団を蹴り飛ばし、足を必死に曲げる。渾身の力を込めて、洋子は相手の腰のあたりを思いっきり蹴った。思わぬ反撃だったのだろう、バランスを崩し、それでも洋子の蹴りを巧みにかわした護王が、とっさに窓近くまで飛び離れる。
 洋子は急いでベッドに起き直った。大声で悲鳴を上げようとしたのだが、これは逆効果、むせ返って咳き込み、ベッドに俯せてしまう。
「は、しつこいやんか…!」
 嘲笑うような声を上げて、護王が再び近づく気配がした。激しく咳き込みながらナースコールを探して握る、その意図を察していち早く、相手が洋子の手からナースコールをむしりとり、一連の動作で洋子の両手を縛め、仰向けに引き倒す。蹴りを警戒したのか、護王は今度は洋子の足を膝で押さえた。
「くう!」
(殺されるっ)
 さすがに一瞬覚悟して顔を背けた洋子だったが、ふいに妙な静けさが降りた。
「…え…」
 不安定な声が漏れる。
 相手が動かない。
 閉じていた目をそろそろと開いた。首に手が触れる様子もないし、何か刃物を取り出しているという気配でもない。両手はまだ上に伸ばされて縛められたままだが、足に乗っている膝からは体重が消えている。
「そんな…何でや……?」
 そっと横目で見ると、相手は茫然とした表情になっていた。瞬きを繰り返す顔からは冷笑が消え、身体を満たしていた殺気も失せて、何かにひどく驚いている。やがて、そろそろと片手を首に伸ばしてきて、そっと左の首筋に触れた。
「…花王…紋……やんか……」
「……花王、紋?」
(あのあざ、だよね?)
 思わず繰り返した途端、護王は我に返ったようだった。あ、と小さく悲鳴を上げ、洋子の身体の上から飛び退いてしまう。そればかりか、とんでもないものに触れたと言わんばかりに、一気に窓際まで引き下がってしまった。
「…この…あざのこと?」
 殺されかけた怖さも怖さだったが、それよりも相手の急変の理由が知りたくて、洋子は首を押さえながら何とか起き上がった。洋子が動いても相手は再び襲ってくる様子はない。むしろ、真っ青になるほど血の気の引いた顔で、細身の体をかたかたと震わせてさえいる。
「何で…何でや……何で…お前が……いや…あんたが…姫さんの徴を持ってんねん…」
「姫さんの徴?」
「そんなこと…一度もなかった……そやから…俺…おれ…あ…」
 護王は今度こそ完全に顔色をなくしてしまった。紙か鑞のように真っ白になった顔で、虚ろな視線を彷徨わせながら、洋子の首を凝視している。
「なに…?」
 洋子は相手のパニックにつられて部屋の鏡を覗き込んだ。部屋の隅、洗面台の鏡の端に髪を乱してベッドに座り込んでいる洋子が映っている。そして、今しがた締められたせいだろう、点々と赤い五つのあざが浮かび上がっている首も。
「これ…」
「お…俺…姫さんを……殺すつもりなんて…そんなこと…するわけ…」
 不安定で弱々しい弁解が響いて洋子は振り返った。護王はよろめくように窓によりかかっていて、今にも崩れてしまいそうだ。
「護王…?」
「!」
 呼び掛けた洋子の声は相手を鞭打ったようだ。びくっと怯えた顔で跳ね上がった護王が体を翻し、あっという間にベランダへ続くドアをすり抜け、外へ逃げ去る。そのまま、飛ぶように枝へと身を踊らせたかと思うと、体を軽く捻って幹を滑り、姿を消してしまった。
「…何…なんだ……いったい…」
 窓の外の樹はもうゆらとも揺れていない。男が一人滑り降りた気配を呑み込んで、宵闇は深く濃度を増しつつあるだけ、喉の痛みがなければ、今の出来事も夢も続きだと思ってしまいそうだ。
 けれども、まだ激しい勢いで打っている心臓と、引っ張られた髪と喉の痛みは今の出来事が現実であることを教えてくれている。
(姫さん? 護王? 花王紋? 間に合わない? 一人?)
 洋子はのろのろと髪の毛をかきあげた。髪の毛一本一本に、まださっきの護王の気配が残っているようで、ざわざわとそそけだった感覚がある。
 何がなんだか、まったくわからない。
 わかっているのは、あの男が綾子を殺したのではないらしい、ということだ。むしろ、綾子を殺したのを洋子だと思っていて、それで襲いかかってきたように思える。
(…何が…どうなって………)
 わけがわからなくなってきた。
 と、そこへ、ふいに、控えめなノックの音がした。
「あの、すみませんが」
「は、はい」
 洋子の掠れ声に相手はためらったようだが、やがてそっとドアが押し開けられた。
 入ってきたのは、灰色の背広の30前後の男、けれど、サラリーマンとは少し感じが違う。
「あの、谷崎署のものですが」
 男はベッドに座り込んでいる洋子にわずかに眉をしかめた。フレームのない眼鏡の奥から探るようにこちらを見つめ、考え込むような顔になったが、洋子の反応が鈍い理由を綾子の死と結びつけたらしい。
「あの、ショックだったとは思うんですが、できれば事情聴取をさせていただければと」
 洋子は窓を振り返った。
 護王は戻ってくる気配がない。
 とにかく、とりあえずは助かったらしい。無意識にチャックを首の上まで引き上げ、体を抱きかかえる。そうしてようやく、自分が体を小刻みに震わせていることに気がついた。
「わかりました」
 何とか気力を奮い起こして頷き返す。
「そうですか」
 ほっとした顔で入り込んでくる刑事に、洋子は頼んだ。
「すみません、ベランダのドアの鍵をかけてくださいますか?」

「とすると、大西綾子さんがいなくなったのは、その発表をする、20分ほど前だったわけですね?」
 洋子のベッドの側にパイプ椅子を置いて、谷崎署の刑事、村上はメモを取った。
「はい、それまでは、近くにいたので」
 村上が部屋に入って数分、相手は扱い慣れた様子で洋子が落ち着くまで待っていてくれた。表情の若々しさとは中身が違う、そのずれを如才ない対応が物語る。
「そして、あなたは、その間、舞台の上に座っておられて、大西さんが戻ってくる前に発表を始めておられた、と」
 メモをポケットにしまい、ゆっくりとため息をついて椅子の背にもたれた。
「では、アリバイは十分ですね」
「あの…綾子は…死んだんですか」
 洋子の問いに、
「殺害された、と考えています」
 村上は静かに訂正した。
「あなたの隣から会場の外へ出て行かれて、戻ってこられるまでの数十分の間に。彼女の首にはタオルが巻きつけられていました。どこにでもある、白いタオルです」
(あれ、マフラーじゃなかったんだ)
 洋子は綾子の首の毒々しい赤を思い出し、唇を噛んだ。
「タオルを巻きつけたのは、傷から流れる血が飛び散るのを防ぐためだったと考えています。頚動脈が傷ついていました。かなりの出血になると予想していたんでしょう」
 村上はもたれたまま、両手の指を丁寧に組んだ。眼鏡のせいだけではない、感情が見えない目を洋子から離さないまま、
「あの会場に綾子さんが来る予定だったことも知っていた様子ですし、いくらタオルで覆っても多少の血はついたでしょう。けれど、ここは病院ですし、関係者なら、白衣に血がついていてもそんなに異常な状況ではありませんね」
「あの?」
(それって、つまり)
 洋子の問いかけを村上はじっと待っていたようだった。緩やかにうなずいて、
「ええ、私達は、この病院の、それも大西綾子さんとつながりの深い人間を探しているところです」
「綾子が、知り合いに、殺されたっていうんですか」
 声が裏返った。
 村上は答えない。
 どこか底光りのする目で、洋子のことばが続くのを引き出そうとでもするように黙っている。
「でも、そんな」
 いいかけて、洋子は口をつぐんだ。
 つい、背後の窓を振り返る。
 窓の外はほとんど真っ暗になっていた。木の枝も緑も、ベランダさえあまり見えない。
 明るく照らされた室内とベッドに座った洋子の白い姿が、幽霊のようにガラス窓に映っているだけだ。
(カーテンも引いておいてもらえばよかった)
 洋子は護王が、まだどこか枝の暗い影に身を潜めて、密かに部屋の様子を伺っているような気がした。
「葛城さん?」
「あ、ご、ごめんなさい」
 呼びかけられて洋子は我に返った。
「何か、思い当たることが?」
「いえ、あの」
「そうですか。では」
 村上は疑うような視線で洋子を見ていたが、ふ、と吐息をついて立ち上がった。
「またお尋ねするようなことがあるかも知れませんが。寮にお住まいでしたよね」
「あ、はい」
 村上に確認されて、洋子はぞっとした。
(そうだ、寮に戻らなくちゃいけないんだ)
 寮に戻れば、みんなそれぞれの仕事や生活に忙しい。いくら男子禁制の場所とは言え、管理人がいて目を光らせているわけでもない。
 病棟の3階まで枝伝いにやってきた護王ならば、忍び込んでくることも簡単だろう。
 洋子はまた、窓を振り返った。
 そのとたん、再び部屋のドアをノックする音が響いた。
 びくりとして振り返った洋子のかわりに、村上が席を立ってドアを開ける。
「嵯峨さん」
「お話は終わりました?」
 開いたドアの透き間から、ひょいと白くて優しい顔がのぞいた。村上が気を呑まれたように立ち竦むのに、にっこりと笑いかける、その仕草も自然で美しい。
「あなたは?」
「嵯峨、良子、といいます。葛城さんと同じ病棟で働いています……綾子さんとも一緒でした」
「ああ…」
 村上は頭の中の資料を当たっているような顔をしていたが、やがて明るい顔になって頷いた。
「ああ、あなたが、師長さんがおっしゃっていた、病棟で一番の看護師、ですか」
「ありがとうございます」
 突然の賛辞にも、嵯峨はたじろぐふうもなかった。にこやかに応じて、ちらりと洋子を見る。
「もし、お話が終わったのでしたら、葛城さんと一緒に寮に帰りたいんですけど。彼女も今日はいろいろなことで疲れ切っています。一人で帰すのは無理かと思ったので」
「嵯峨さあん」
 洋子はすがるような声を上げてしまった。散々泣いたはずなのに、また目のあたりが熱くなってくる。けれど、今度の涙は嵯峨の優しさにほっとしたせいだ。
「話は終わりました。そうですね、そのほうがいいでしょうね」
 村上は洋子を振り返った。
「彼女も何かに脅えているようだし」
「当然でしょう」
 嵯峨がかばうように答えてくれた。
「目の前で同僚があんな殺され方をしたなら、誰だって不安になります」
「ええ、誰だってね」
 村上は曖昧に笑った。
 だが、それ以上は追及せず、洋子に軽く頭を下げた。
「ありがとうございました。では、何か思い出されたら教えてください。谷崎署の村上、でわかりますから」
 洋子が無言で頭を下げると、入ってくる嵯峨とすれ違うように部屋を出て行った。
 嵯峨がその後ろで、丁寧にドアを閉める。
「嵯峨さん……」
「大変なことになったわね」
 整った白い顔が珍しく緊張していた。
「綾子、あの、…殺されたって」
「そう、らしいわね」
 嵯峨は頷いた。
「ひどいことよね。師長さんの話では、頚動脈をメスのようなもので切られていたらしいわ。でも、ここは病院だし、そういうものなら山ほどあるし、使っていても問題のない人間ばかりだし、ね」
 ふう、と嵯峨らしくない重いため息をついた。
「メスって、じゃあ、ドクターがってことですか」
「可能性が高いのはね」
 嵯峨はじっと洋子を見た。
「でも、どうして大西さんが、というところが問題よね……間違われたわけでもないでしょうに」
 相手のことばに、護王のことを思い出して、洋子は体をすくめた。
(間違われて、殺される、なんて)
 第一、いったい綾子を誰と間違えたというのだろう。いくらみんな同じような白衣を着ているからといっても、殺そうとまで憎んでいる相手なのだから、見分けぐらいつくはずだ。しかも、さっきの村上刑事の話によれば、病院関係者が犯人だということになる。
(なおさら間違えるなんて、ないよね)
 そうすると、犯人は、綾子だと知っていて殺したことになる。
(でも、どうして?)
 綾子が殺されるような理由など、洋子には思いつかない。
「何か、大西さんから聞いてる? ドクターと付き合っている、とか、何かに悩んでいる、とか」
 穏やかな嵯峨の問いかけに、どくん、と心臓が固まった気がした。
「付き合ってる…ですか?」
 洋子の頭の中に日高の姿が浮かぶ。優しく笑う『かかし先生』。綾子が寝ぼけて名前を呼んだ相手。
「そういう人が…犯人かも……って?」
 声が掠れないようにするのが難しかった。
「そういう可能性もあるってことらしいわ。何か知ってるの?」
「…いいえ」
 洋子が首を振ると、嵯峨は悲しそうに笑った。
「同期はあなたと二人だけだから、何か知っているかと思ったんだけど」
 それがまるで、自分の心の冷たさを指摘されたように聞こえて、洋子はぐっと胸が詰まった。
「知っていれば…よかったんですけど」
(知っていれば、綾子は死ななかったのかな)
 あれほど近くに居て、あれほど長く居たのに、こうなってみると、綾子が誰と付き合っていたか、付き合っていた人間が居たのかさえ確証がない。
 唇を噛んでうつむいた洋子の肩に、嵯峨はそっと手をのせた。
「ごめんなさいね、そうよね、誰だって、本当は何を考えているかなんて、わからないのよね、どんなに長く一緒に居ても」
(嵯峨、さん?)
 そのことばに、なぜかふいに、相手がそこから消えてなくなったような気がして、洋子は顔を上げた。
 だが、それは一瞬のこと、嵯峨は見上げた洋子にやっぱり優しく笑いかけて、
「さ、帰りましょう」
「はい、嵯峨さん」
 洋子はあわててベッドから滑り降りた。
 床に足を降ろしたとき、一瞬ゆらめいてこけそうになったのを、必死に足を踏んばってこらえる。
 よく慣れているはずのナースシューズの感触が頼りない。まるで床を踏み抜いてしまいそうな危うさだ。
「大丈夫?」
 嵯峨が支えてくれたのに、かろうじて微笑み返した。
「何だか、情けないですよね、いつも血なんか見慣れてるのに」
「患者の処置と殺人は違うわ」
(嵯峨さん?)
 ふいと、あの男の殺意に似たひんやりしたものを感じて、洋子は嵯峨の横顔を見た。
 そういえば、どこか疲れているようだ。朝見たときより、顔が青いし、目の下にうっすらと隅があるようにも見える。
「それでも、よかったわね」
 嵯峨は洋子の不審感には気づかなかったようにことばを続けた
「発表がうまくいって。あの土壇場で、あれほど頑張れるなんて、すごいわ」
「いえ、そんな…すごくなんか、ないです」
 洋子は苦笑いした。
「居直ってただけです」
(綾子がうまくまとめてくれていたから、私はあの発表を怯まずにできた………綾子と一緒にやって何度も確かめて考え直して作り上げた、ものだから)
 言いながら、洋子は本当にそうかもしれないと思った。
(あの拍手は、本当は綾子がもらうはずだったのかもしれない)
 朝出かけるときに、綾子はどこかおかしかっただろうか。何か隠しているふうだっただろうか。それさえ気づかなくて、友達だなんて言えたのだろうか。
(だから、綾子は私に何にも話してくれなかったのかな)
 思ってもみなかった不安が胸に黒い渦を巻く。
「そんなこと、ないわよ」
 また俯いてしまった洋子に、嵯峨は低い声で言った。
「大西さんは確かにいろんなことができるけど。少なくとも、今日のあなたはとてもよく頑張った。今日ぐらいは自分を褒めてもいいんじゃない?」
 嵯峨は柔らかく笑って、ふと思いついたように付け加えた。
「そう、師長さんにあいさつして帰りましょう。心配されていたから」
「はい」
(やっぱり嵯峨さんは優しい)
 落ち込んでいる洋子の気持ちをすぐに覚って抱きかかえてくれる。
 ナースキャップを外して長い髪の毛をばらけたままにして廊下を歩く洋子に、患者の数人が大丈夫、と声をかけてくれた。看護師が患者に気遣われていては世話はないが、今日ばかりは院内で起こったことだけに耳の早い者にはすっかり知れ渡っているのだろう。
「嵯峨です」「葛城です」
 病棟の端、ナースステーション前の師長室のドアをノックし、嵯峨と洋子は入ってすぐに扉を閉めた。
「ああ、もう大丈夫なの」
 正面の机についていた倉敷が、かけていた老眼鏡を外して洋子を見る。
「はい、あの、ご迷惑おかけしました」
「いいえ、今日は大変だったわね」
 一瞬、聞き間違いかと思えたほど、それは優しい響きのねぎらいだった。
「難しい役を立派にやってのけたわね。案外、あなたはああいう場面は強いのかもしれないわね。認識不足だったわ」
 にっこりと笑った相手が、まぎれもなく洋子を評価しているのだと気づいても、普段が厳しい倉敷だけに何だか騙されているような気がして、洋子は強く首を振った。
「いえ、そんな」
 嵯峨の前と同じことばを繰り返す。
「大西さんが…頑張ってくれてた…んで………」
 ことばが詰まって熱い塊になったのを、洋子は必死に飲み下した。その様子をじっと見ていた倉敷師長は手元に置いていた勤務表に目を落とし、静かな声でゆっくりと言った。
「主任とも話し合っていたのだけれど、3日ほど勤務に都合をつけました。少し休みなさい。今のままでは勤務が難しいでしょう」
「え…」
「そうさせてもらった方がいいわ」
 嵯峨が側からことばを添えて、洋子はああ、と納得した。嵯峨が洋子を連れてきたのは、この話のためでもあったのだ。
「大西さんの御遺族はすぐに来られないかもしれないからと…こちらである程度まで対応することになりましたから」
「綾子…大西さん……家族はいないんです……遠い親戚ばかりで」
(こちらである程度対応する)
 司法解剖が済んだ後に骨だけを遺族が引き取りに来ることになっているらしい。
「あの…」
 洋子は顔を上げた。
「綾子、私が連れていきたいんですけど。親戚もずいぶん山奥の村だって聞いてるし…私なら身軽ですから」
「…わかりました、御遺族と話し合ってみます」
 こちらを覗き込むようにしていた倉敷師長は一つ大きな溜息をついて頷いた。
「よろしくお願いします」
「じゃあ、いきましょう、葛城さん。私が送って帰りますから」
「ああ、お願いするわね」
 頭を下げた洋子を促して、嵯峨がそっと肩を押してくれる。
 綾子が親戚の家であんまり幸せでなかったのは、それとなく聞いたことがあった。閉鎖的な村で自給自足でやっていけており、街ともほとんど行き来がない。そこにいきなり綾子が入り込んで、村の人間はかなり困惑したらしい。
 綾子の両親の骨も結局はそこにあるお墓に入ってると聞いていたから、綾子もできれば一緒にしてやりたい。
(そうでないと…淋しすぎるよね)
 洋子はきゅ、と唇を噛んだ。
 師長室を出たとたんに、廊下を歩いてきた日高とぶつかりそうになった。
「ああ…葛城さん………」
 日高が細面に心配そうな色を浮かべて見下ろしてくる。
「大変だったね。僕はずっと上で研究室に入ってて…今知ったんだよ」
 声を潜めて話しかけてくる日高の様子にわざとらしさはない。
「ずっと…上に…」
「ああ、大塚先生の実験に付き合わされて………夜勤明けからずっとなんで、へとへとだったんだけど、事件のことを聞いて………ひどいね」
 眉をしかめてきつい口調でつぶやいた。
 大塚教授は厳密な実験を繰り返すことで有名な医師だ。その実験に付き合っていたというなら、日高も研究室から離れることなどできなかっただろう。
 嵯峨のことばを聞いたときに一瞬日高のことが頭を掠めたが、それは杞憂だったようだ。第一、ケーキを一度贈ったぐらいで殺意を抱かれるような関係になるとは思えない。
(じゃあ…一体…誰が……)
 洋子は唇を噛み締めた。
 何一つ、手がかりらしいものにさえ近付けない自分がくやしい。
「日高先生」
 嵯峨が尖った声で割って入った。
「ちょっと無神経すぎませんか。葛城さんは大西さんと同期なんですよ」
「ああ…そうだね」
 珍しい嵯峨の剣幕に日高がたじたじと体を引いた。
「行きましょう、葛城さん」
「あ、はい……」
 ぺこ、と日高に頭を下げて、洋子は身を翻した嵯峨に急いで追いついた。
「いくら先生だからって、こういうときに大人しく付き合ってることなんて、ないのよ」
 廊下を急ぎ足に日高から遠ざかりながら、嵯峨が低い声で言う。
「…ありがとうございました」
 洋子はそっとことばを返した。
「今は正直言って、日高先生の話を聞いてるの、つらいです」
「そうでしょ」
「でも………やっぱり嵯峨さんですね」
 しみじみと呟いた。
「言うべきことは先生にだって言うんだ……私はいつになったら、そうなれるんだろう」
「大丈夫よ」
 笑い出すかと思った嵯峨は、ふいに歩速をゆるめて、不思議な目の色で洋子を見た。ゆっくりと病棟を抜けて、ぼんやりとした電灯の下を、寮へ向けて歩きながら、
「大丈夫よ。あなたは十分若いもの。まだ、いろんな力が伸びてくるわ、これから、ずっと」
 静かな深い声で言った。
「そうだったら、いいけど」
 洋子はため息をついた。
「せめて、嵯峨さんに迷惑かけないぐらいにはなりたいです」
「なれるわ」
 打てば響くように、嵯峨が応じた。
 電灯の光の陰に入ったせいで、嵯峨の表情ははっきり見えない。
 どこからか、生暖かい風がゆるゆると吹き寄せてくる。
「なれるわ、すぐに」
 嵯峨が繰り返した。
「そして、すぐに私を追い抜いていくわ、きっと」
「そんな…」
 洋子はへへ、と笑った。
「冗談です、嵯峨さんを抜けるわけない」
「抜けるわ、抜くのよ、そう言いながら」
 突然、嵯峨が立ち止まった。
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