『桜の護王』

segakiyui

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4.幻燈夜(2)

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  洋子の回復には二週間を要した。
 もっとも、それは回復、とは呼べなかったのかもしれない。

「おはよう」
 ノックの後で病室に入ってきた倉敷師長を、洋子は一瞬緊張して振り返った。相手が白衣の上に冬物の紺色のセーターを重ね着し、ケア用エプロンをつけてきてくれているのに、ほっと力を抜く。
「…すみません」
「いいえ」
 倉敷師長は複雑な顔で笑った。
「無理もないこと、そうでしょう? あなたが白衣に耐えられないこと…わかるわ…いえ、わかるつもりですよ」
「…」
 洋子は無言でうつむいた。
 自分の黒のトレーナーに紺のジーパン姿を見下ろし、改めて決心を固めて顔を上げる。不安そうにこちらを見る倉敷師長に、
「勝手なことをして、申し訳ありませんでした」
 頭を下げると、まとめていない長い髪が視界を遮った。病棟では決してしなかった髪型だ。
「本当は…もっと居てほしかった…みんなが期待してたのよ」
(はい、綾子にも)
 そのことばは口に出せずに、頭を下げたまま唇を噛み締める。
「顔を上げて、葛城さん」
「はい」
「無茶なことを言っているとはわかってます、でもね」
 倉敷は目を潤ませて洋子を凝視した。
「それでも、看護師は生き方をそう選んだ、ということなのよ、もし、あなたが元気になって、もう一度看護を目指そうとしたら、この病棟に…」
「…」
 だんっ!
 洋子が口を開きかけたとたんに、激しい音が戸口で響いた。ぎくっと体を震わせた倉敷師長が振り返る。ドアに右手のこぶしを叩きつけ、顎を上げた威圧的な態度のまま、目を細めた護王が口を開く。
「何アホぬかしとんねん」
 顔よりも冷たい声が害意に満ちた辛らつな調子で零れた。
「姫さんに、もう一回、死ね、言うんか」
「護王」
「あんたらはええよな」
 洋子の制止を相手は聞く耳持たなかった。
「人殺しの医者も捕まって、ややこしい看護師も一通りカタがついて」
「…護王」
「ここは安泰、へえへえ、奉仕と愛を胸に患者救済に存分に走ったって」
 すたすたと部屋に入ってくると、倉敷師長を無視して、ベッドの上の荷物を手にしていた鞄に詰め始めた。
「…姫さんがどんな目に遭うたんか、知ってて言うてんのか?」
 続けた声音がますます冷えている。
「どんな気持ちで看護師やめよ思たんか、わかってそんなこと言うんか?」
 くる、と護王は唐突に振り向いた。瞳がぎらぎらと殺気を帯びて光っている。
「…護王、もういいから」
「ようない、こいつらは!」
 護王は伸ばした指先を倉敷師長の鼻先にまっすぐ向けた。
「あれだけの想いしてようやく動けるようになったあんたを、看護師やないから言うて、あっさり寮から放り出すような奴らやねんぞ!」
「それは…」
「…しかたないよ」
 洋子は倉敷師長のことばを引き取った。むっとした顔で睨み返す護王に苦笑する。相手が僅かに赤くなり、手を下げて洋子の視線から目を逸らせる。
「あそこは看護師の寮だし…それに、私も、もう、あそこには居たくないから」
「…ふん」
 護王は盛大に鼻息をもらすと、荷物をまとめてさっさと部屋を出て行きながら、
「外にいるわ、こんな腐った奴らと同じ空気吸うてられへんしな」
 皮肉な口調で言い捨てた。
 結構な重さになっているだろう鞄を軽々と肩にして振り返りもせずに部屋を出ていく。
「…いい人なのね」
 見送った倉敷師長の声が笑みを含んだ。病棟にはいろんな患者が、患者だけではない、いろんな人間がやってくる。師長がそれらを統括し病棟を混乱させない技量を備えているのは当然のこと、護王の罵倒程度にはたじろがない。
「彼があなたに付き添うと聞いて、驚いたけど」
「…ええ…はい」
 洋子はわずかに頬が熱くなった。
 唇を覚えている。
 錯乱し我を失い、自分がどこで何をしているかわからなくなった瞬間に、この現実へ引き戻してくれた腕を、胸を覚えている。
 日高のマンションで倒れてから、三日意識が戻らなかったのだという。護王はその間、洋子の側を離れなかった。関係を不審がる看護師達に「身内だ」の一言ですませ、着替えから何からかいがいしく世話を焼いた。一度意識が戻ってからは、点滴をしようとしても触れるだけで悲鳴を上げる、抵抗する、暴れ出す、その洋子をそれこそ自分の体で庇い護り押しとどめた。始めは妙な怪しい男だと警戒していた病棟の人間も護王を認めざるを得なかった。
「結婚…するの?」
「え?…ええ…まあ」
 洋子は曖昧に言葉を濁し、微笑んだ。
 倉敷師長を始めとする病棟の人間には、事件の衝撃がまだおさまらない、それに結婚も考えたい、と辞める理由を告げている。
(人を傷つけてもいいと思ったから…っていうのは言えないよね)
 それは今に芽吹いた気持ちではない。ずっと昔から、あやこを失った時から、洋子の中に密やかに育っていた闇だ。ずっと見ないふりをしてきた。事実、看護師として生きる中で昇華できたと思っていた。
 けれど、あの、日高に追いつめられたぎりぎりの瞬間に考えていたのは、自分の失われる命への傷みでも、綾子や嵯峨の命への悲しみでも、ましてや何が原因かはわからないが、そこまで切羽詰まってしまった日高の命への哀れみでもなかった。
(相討ちにしてでも)
 最悪ならば日高の命を奪ってでも、自分の思いを成就する。
 激しく昏い魔性の炎の気配を、洋子ははっきり覚えている。
 看護の仕事は命の尊厳を問われる仕事だ。心身共に過酷な業務の中で、どこまで患者の命も自分の命も等分に守り抜けるかという問いを常に投げられる。
 今までならば、大丈夫だと言える。患者が如何に理不尽な要求をしても、病が為せる業なのだと一歩ひいて考えもできる。けれど今、己の欲求を通すためだけに他人を踏みにじっていいと考える人間の性、それにわずかでも揺らされたなら、正直堪える自信がない。
 それこそ、生き方として、看護を全うできる自信がない。
「わかったわ…幸せになってちょうだいね」
 倉敷師長は振り向いてまばゆそうに洋子を見た。今までこうして何人も、職場を去る看護師を見つめてきたのだろう、瞳の奥に深い疲れがにじんでいた。
「ああ、それから」
 エプロンに手を入れて、一枚の紙を取り出す。
「これ…大西綾子さんの実家の住所よ。お骨はもうかえってしまったけど…」
「はい」
 洋子は頷いた。
「お墓参りさせてもらいます」
 通常ならばあり得ない情報開示は傷すぎた洋子への配慮、師長の範囲を踏み越えてくれたものと知れる。ゆっくり頷き返した倉敷師長は、今度は少しためらいながら、
「それから……これは、村上刑事さんの携帯電話ですって」
「は?」
 洋子はきょとんとして、渡されたもう一枚の紙を見た。意外に整ったきれいな文字で、番号が並び『村上瞬』と名前が入っている。
「何か…あるんですか?」
「少し気になることがあるとか…」
 倉敷師長は眉をしかめて首を傾げた。
「あなたが知っているようなことを言ってらしたけど?」
「いえ…知りません…」
「できたら、桜里へ行く前に電話が欲しいっておっしゃってましたよ」
「はい…」
 洋子は眉をしかめた。日高のことだろうか。
 確かに入院してしまったし、元気になってきたのはつい数日前、新聞には日高が余罪を問われて捜査が進められているとあったが、村上が再び洋子に事情聴取することはなかった。
「一度は来られたんだけど…」
「え?」
「あの人がね」
 倉敷師長は苦笑いした。
「追い返したから。無理だと諦められたみたいよ」
「ああ…」
 護王がどんな対応をしたか想像がつく。
「わかりました。電話入れてみます」
「よろしくね」
「……師長さん…」
 洋子は二枚の紙をポケットに入れ、改めて頭を下げた。
「…お世話になりました」

「遅い」
 病棟の玄関で今にも駆け戻ってきそうな表情で、護王はいらいらして待っていた。
「何をとろとろしとんのや、病み上がりのくせに」
「病み上がりって…」
 思わず微笑んでしまう。
「もう大丈夫。大丈夫だから退院できたんだし」
「…夜…眠れてへんくせに」
 まばゆそうに目を細め、そうやって洋子を見ている自分に唐突に気がついたように、護王は顔を背けた。思わぬ指摘に体が震えてしまい、軽く舌打ちしてしまう。
「…どうして知ってるの?」
「知ってる、わかる、あんたのことなら、何でも」
 ごまかすように空を見上げて護王は軽くつぶやき、口調を変えて洋子を見下ろした。
「これから、どうするん?」
「うん…」
 洋子は溜息をついた。
 幸い事情が事情だけに、寮から荷物を引き上げるのに一週間余裕はもらえた。
「とりあえず、住むところを探して…もし、それが時間がかかりそうなら、先に綾子のお墓参りをかねて桜里に……あ、そうだ」
 ふいに思い出して護王を見上げる。
「護王、桜里に来てほしいって行ってたよね?」
「あ…ああ」
 黒めがちの瞳が大きく見開かれ、続いてうっすらと微かな紅が護王の頬を染める。
「そう…やな…そう…やけど…」
 口ごもって顔を背け、
「どうしたら…ええのんか……俺…このままでもいいし…」
「何?」
「いや…その…」
「?」
「…」
 護王ははぴたりと足を止めた。洋子もつられて立ち止まる。護王は洋子の荷物を持ったまま、看護師寮の入り口近くから動かない。
「あ、着いたのか、うん、荷物ありがとうね」
 洋子ははっとして慌てて護王の手から荷物を引き取ろうとした。だが、相手は無言のまま、のそっと突っ立っていて、荷物も渡さなければ動こうともしない。
「…あのな」
「…はい?」
「…俺と…」
「はい?」
 洋子は首を傾げた。
 ふいに思いついて、うろたえる。
「あ、そうか、ごめんなさい」
「え?」
 期待を込めたように顔を上げる相手に、どうしてこんなことに気づかなかったのだろうと洋子は唇を引き締めて、姿勢を正した。
「護王、さん」
「はい」
 向こうも慌てたように体を起こす。緊張した顔で洋子を見下ろす。大きな背が、これから叱られる子どものようにぴりぴりとして固まっている。
「いろいろと経緯があったでしょうけど、二週間もお世話して頂き、ありがとうございました」
「…は…?…」
「綾子、なんでしょう?」
「え…?…??」
「綾子を探していたんでしょう?」
 ずき、と小さく洋子の胸が痛む。けれども首を一つ振って気合いを入れ直す。
「よくはわからないけど、護王、さんは綾子を探しに桜里からきたんでしょう? けれど、綾子がああいうことになったし、巻き込まれた形になって」
(厳密には突っ込んだ、だよね)
 胸の中の苦笑いは顔に出さない。
「なのに、私のほうまで面倒みてもらって、すみません、ありがとうございました」
 頭を下げると、師長とのやりとりが耳に戻った。
『結婚…するの?』
『え?…ええ…まあ』
(しない、よなあ)
 きっとしばらく男性と付き合うなんて考えられない。あのキスは。
(幻だ)
 パニックになった洋子をおさめるためのもの。緊急対処。そういう類のものだ。
(よし!)
 きゅ、と唇を一瞬噛んで、洋子は顔を上げた。にっこり、心配させないように笑いかける。
「あの、とりあえず、少し落ち着いたら桜里に行きます。それから、護王、さんへの御礼をどうしたらいいか考えることにして」
「…んや…それ…」
「…は…?」
 明るくしっかりと御礼を告げたはずなのに、相手がいつの間にか微妙に青くなっているばかりか、微かに体を震わせてこちらを睨みつけていて、洋子はぎょっとした。
「…何…ふざけたこと…ぬかしとる」
「あ…れ」
 鞄を握りしめた護王のこぶしが白い。青くなった顔がじりじりと赤くなっていく。
(怒ってるように…見える…けど…)
「あんたは…」
「はい…」
「あんたは…俺を…誰やと……!」
「誰って…」
 そう言われると返答に困る。
 何せ洋子の知っている護王というのは、突然現れて洋子を殺そうとし、逃げ出していなくなり、部屋に忍び込んできて眠ってしまい、殺されかけたときに助けてくれ、二週間もの間、側にいて看病してくれた男であって…。
「誰って…言われても…」
「…あ…ああ…」
 ふしゅう、と空気が抜ける音がしたんじゃないかと思った。護王はいきなりへたへたとそこへ座り込んでしまい、頭を抱えている。
「なんやー…こいつは…」
「…えっと…」
 情けないほど掠れたうめき声が恨めしげに続く。
「こんなん…今まで…なかったで…?…」
「こんなんって……私のこと、かな…?」
「他に誰がおんねん!」
「わ」
 いきなり相手が立ち上がって、洋子は驚いた。ふるふると顔を真っ赤にして体を震わせている相手が今にもどこかの血管を切ってしまいそうな気がして、おそるおそる尋ねかける。
「…だいじょう…」
「誰のせいやと思とんねん!」
「!」
「あ…」
 大声に体が竦んで声がでなかった。一瞬無意識に身構えて体を引いていた。洋子の反応にはっとした顔で護王もことばを切る。そのままじっと洋子を見据えていたが、やがてのろのろと肩を落として、
「すまん…怒鳴る…つもりや…なかったんや…けど…あんたがあんまり酷いこと言うし…」
 弱々しい声でつぶやいた。
「酷いこと?」
 ちろっと上目遣いに洋子を見て、眉をしかめて目を逸らせ、独り言のように続ける。
「…俺は護王や…姫さんの護王やないか…姫さんも…それ、わかってくれたて…思てたのに」
「わかって…?」
「そやから、あのとき…口つけても、逃げへんかったんやないんか…?」
「口つけてもって…」
 すううっと護王が見る見る別種の赤みに頬を染めて、洋子もそれに煽られたように体が熱くなった。端正な顔を戸惑った子どものように歪ませて、護王は不安そうに洋子を見ている。いまどき、キスの話題でこれほど居心地悪くなるなんておかしい、そう思いながらも、洋子も相手の照れ方の激しさに、ついつい微妙にことばを失いうつむいてしまう。
(困った…なあ)
 胸の底に微かな柔らかいものが動いて、洋子はくすぐったくほころびかける顔を必死に制した。
(かわいい、よね)
 どう見ても一人前の男が、キスの解釈一つを判じあぐねて拗ねているのがかわいらしくてならない。
(それだけ護王には、大切なことで)
 胸の内側が妖しく揺れる。今まで感じたことのない、甘い快さに何だか惚けたまま護王を見つめていると、はあ、と突然護王は深い溜息をついた。
「も…ええわ」
「え?」
「…ほら、いこ」
「いこって…どこに?」
「俺の家」
「…へ…?」
 洋子は瞬きした。頭の中が展開についていけない。護王はすたすたと道の奥に足を進める、洋子の鞄を持ったまま。
「あ、あのね、それ…」
「ええか」
 私のなんだけど、と言いかけた矢先に、相手はくるっと振り返った。冷ややかな殺気を目に見たして、
「姫さんは、しばらく俺の家で暮すんや。その間に桜里のこと、教える。俺が何で来たんかも教える。それから俺と一緒に桜里へ行く。質問は?」
「あの…私の意志っていうのは…」
「ない」
 きっぱりと言い切られて洋子はことばを失った。
 必要なことは言ったと言いたげにさっさと歩いていく護王を、吐息一つついて追いかける。ことさら張った肩に気合いを感じるなあと思いながら茫然としていると、歩きながらちら、と護王が目を流してきた。
 ついてくるとは思っている。鞄を持っているのだし、満更嫌われてはないはずだし。そう思いながらも、でもひょっとして立ち去ってないか、そんな不安を隠そうとして隠しそこねた、揺れる瞳。
 その瞳の表情の豊かさにまた見愡れた。
(どうせ、どこにも帰れないんだし)
「ねえ」
「なんや」
 打てば響くように返ってきた声は僅かに掠れている。
「こっちって大きなマンションしかないよ? ファミリータイプの」
「あのマンションのハチマルサン」
 どこかほっとした顔で半身振り返った護王は、洋子の微笑に気づくと憮然とした表情で顎で場所をさした。
「俺の家や」

「広いなあ…」
 案内されたロビーも、エレベーターも廊下も、どこもかしこもゆとりがあった。看護師寮とは全く違う。エレベーターを降り、各階五部屋ずつある場所の中ほどのモスグリーンのドアを開くと、そこもまた広々としていた。
「左の部屋は俺が使てるけど、右っかわは空いてるし、そこ使て。流しと居間と台所は一緒やけど、風呂とトイレは別やし、ええやろ」
「あ…うん…」
 中央にダイニングキッチンと居間と玄関、奥の居間から左右に扉が繋がって個室部分があるらしい。その奥には最上階の特権なのか、ベランダまでついていて、左右の個室からも中央の居間からも出入りできるようになっているようだ。
「見かけとは大違いだなあ」
「…え?」
 先に奥の右側の扉から入った護王が顔を出す。
「ううん、もっと小さな部屋かと」
「ああ、バブルんときに作ったもんの、買い叩かれたみたいやな…ニ世帯可能っていうところもまずかったんやろう」
「って…これ、分譲?!」
「ああ、安かったで」
(安かったって…)
 マンション一つあっさり買えるような男には見えないのだけど、と洋子は思わず瞬きした。
「こっちや」
 護王が促すのに、慌てて荷物を持ち直し、右側の扉からはいる。
 そこはちょうど1DKマンションの造りに似ていた。
 白が基調のシンプルなベッドと寝具、奥の右にトイレとユニットバス、左にクローゼットがある。キッチンが別室にある分より広く感じるのだろう。
 部屋に入ると、護王はカーテンを開き、窓を開け、風を入れた。ベッドカバーを取り外す。部屋には小さな木製の洋タンスまである。電灯をつけ、灯がともるのを確認している相手の真剣な顔に、ふいに気がつく。
(これ…姫さんの部屋、なんだ)
 随分前から用意されていたのだろう。部屋には新居特有の浮いた気配がない。それでも埃もかぶらず、家具などに傷んだ気配がない。
(大切に…用意して…ずっと探し回っていた?)
 さっき通った居間や台所にはそれほど使った気配はなかった。日高のマンションは作り込まれた嘘寒さはあったが、このマンションには本当に何もない。がらんとしていて、人の気配がしない。なのに、この部屋は別だ。十分に気をつけて手をかけられていたという感じがある。
「なんや?」
 風に翻ったカーテンをまとめている護王がじっと見つめていた洋子の視線を感じたらしく振り返った。
「ううん…荷物、いれていいかな」
「ああ。片付いたら飯食いに行こ」
 護王は嬉しそうに笑った。
「俺、腹減った」
「…うん…」
 邪気のない笑みに笑い返しながら、桜里や『姫さん』のことを、いや、護王のことをもっと知りたい、と思った。
 
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