食堂のおばあちゃん物語

みどり

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じぃじの憂鬱②

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*じぃじの憂鬱②では
おばあちゃんの入浴シーンが出てきます。
そういうのがお好きでない方は
別の回でお楽しみください。




じぃじはいつものように

誰も居ないはずの浴室に入って行った。


誰も居ないのだから

浴用タオルは手に提げていた。


誰も居なくても

浴室は温室のようであった。


じぃじは身体を洗うと

楽しみにしていた大きな湯船の前に来た。



湯けむりの向こうには


3人のおばあちゃんたちがいた。


マツおばあちゃんは大きな湯船で泳いでいた。


じぃじはこの場の状況が理解出来ず

一瞬固まってしまった。


「ぎゃぁ~‼︎セクハラ~‼︎」


じぃじはそう叫ぶと浴室から走って出て行った。



「セクハラって言うけどさ。私たちの方が見せられた被害者よね。」


「私の裸見たんだから、金払え」



じぃじは外に出て男湯に間違いがないか確認すると

浴室に戻って来た。

バスタオルをマントのようにして。


「こら、ババァ共!ここは男湯じゃないか‼︎」


「時間外だから誰も来ないと思ったのよ。」


「謝れ。」


「まぁ、私たちもじじいみたいなもんだし。許してちょ。」


「何が、許してちょ、だ。許すか‼︎」


おばあちゃんたちはタオルで身体を隠すことなく無言で浴室を出て行った。


「コワッ。アレ、何?進撃の○人⁇」



翌日


「じぃじ、昨日女湯に入ったらしいですね。
 遅番をしているのはそういうことだったんですか?」


事務所に呼ばれて注意された。


じぃじは誤解を解くのに苦労した。

一度そういう目で見られたら、取り返しのつかないことになる。

なにより警察のお世話になるのは避けたい。



じぃじがそのことを忘れかけた1ヶ月後



「コラ、ババァ共!」


また同じようなことが起こる。


「24時を過ぎたんだからここは女湯でしょ。先月も。間違っているのはあなたよ。」


「じゃあ、暖簾掛け替えとけよ。紛らわしい。」


「暖簾の掛け替えはオープン前の作業よ。」


「言い訳するな。」


結局じぃじはひとりになれる隣の浴室へ。



翌日


「じぃじ、私も言いたくないのですが、いくらおばあちゃんだからといっても」


「お願いです。警察に通報することだけは!」


「それに、おばあちゃんたちには言葉遣い悪いそうですね。

 仲良くしてもらわないと困ります。大人なんですから。」


じぃじの中で何かが音を立てて崩れていった。

 


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