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エリスローズは切望する
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「嘘つき! 皆で一緒にご飯食べるって言ったじゃねぇか!」
家に帰るまでに二人は涙を止めた。
シオンとメイにはまだわからなくともロイは大人顔負けの鋭さを持っており、なにより賢いため不安にさせたくなかった。
話すことで泣かせてしまうだろうが、親の涙だけは見せないというのが二人の意地でもあった。
シオンに理解できるかわからないが、子供たち全員にエリスローズが話をしていると兵士が条件をのむと王から出た許可を持ってきた。
紙には何が書いているかわからなかったものの、空き家の使用許可を得たから急いで引っ越すようにと言われた。
家を確認したらエリスローズはそのまま入城というのが聞こえたことにロイが起こっている。
「ごめんね」
「なんでエリーが行かなきゃいけないんだよ! 俺が働くって言ってんだろ!」
「ロイ、これが皆のためなの」
「皆のためってなんだよ! 勝手に決めんなよ! エリーはいっつもそうだ! なんでも一人で決めるんだ! 俺だって働けるのに! 俺だってエリーを助けられるのに!」
ボロボロと涙を流すロイにエリーも苦しくなる。
いつもロイには我慢を強いてきた。ごめんねと謝ることで無理矢理許しを得て、そしてまた我慢をさせる。
今回もそうだ。勝手に決めてしまったことを事後報告にして許しを得ようとしている。
「ロイ、ロイ。聞いて」
「嫌だ! 勝手に決めたことなんて聞きたくない! 絶対嫌だ!」
「ごめんね」
耳を押さえて拒絶するロイを抱きしめると声を上げて泣き始める。
今まで涙を見せないようにしてきたロイが声を上げて泣く姿に両親もエリスローズも涙を堪えきれない。
しがみつく強さにロイの思いを感じてエリスローズの力も強くなる。
「どうした!?」
ロイの泣き声に幼馴染のスペンサーが駆けつけた。
「ロイが泣いてるの?」
一緒にいたのだろう幼馴染のゾーイも顔を覗かせる。
「エリーお前なんで泣いてるんだよ」
スペンサーが慌てて駆け寄りエリスローズの頬を伝う涙を拭う。
「スペンサー……ゾーイ……」
貧しいながらに助け合ってきた幼馴染の顔を見ると余計に涙が溢れた。
二人には説明しておかなければならない。だが、二人は無関係の人間。王太子妃がいなくなったことも身代わりを立てていることも話すわけにはいかない。
これが外に漏れれば大変なことになる。
なにより、家族がどうなるかわからない。
「引っ越すの」
「引っ越すって……どこにだよ……」
スラム街の人間に引っ越しは無縁のもの。
引っ越すときは国を逃げ出すとき。
そんな気力がスラムの人間にあるはずもない。
ましてや家族五人でどこへ引っ越すというのか。
「上に」
「上って……結婚、すんのか?」
「そうじゃないけど……」
「じゃあなんで上に引っ越すんだよ。無理だろ」
「色々あって……」
言おうとしないエリスローズに苛立ったように腕を掴むスペンサーをゾーイが慌てて止めようとするが、それよりも先にロイがその腕を払わせた。
「エリーに乱暴すんな。ぶっ飛ばすぞ、スペンサー」
さっきまで泣いていたロイが今は怒りの表情でスペンサーを見ている。
「婚約者ができたならそう言えよ」
「違うよ」
「ならなんで上に引っ越すんだよ! 俺らはここから一生出られねぇはずだろ! 」
「なんだっていいでしょ! スペンサーには関係ないじゃない!」
「関係ねぇってなんだよ……俺ら一緒に生きてきた仲だろ……」
苦しいときはいつも助け合ってきた。
関係ないなんてことはない。
だが、上手い言い訳が思いつかない以上、そう言うしかない。
嫌われるしかないのなら嫌われてもいい。
「でも一生一緒なわけじゃないから」
突き放すような言い方をするエリスローズを真っ直ぐ見つめるスペンサーの目が怖かった。
そこにあるのは怒りではなく悲しみと絶望。
「また戻ってくる?」
「……わからない……」
「そっか……」
ゾーイは冷静で静かだった。
「ゾーイ、スペンサーのこと──」
「わかってる」
少し強めに答えるゾーイにエリスローズが口を閉じて頷く。
ゾーイはスペンサーが好きだ。だからスペンサーを傷つけたエリスローズに頼まれることではないと遮った。
言えない事情があることはわかっていても、スペンサーが傷ついたのは事実。
許せない思いではないが、笑顔で送り出すこともできない。
「戻ってきたら教えてね」
「うん」
スペンサーの背中に手を当ててゆっくりと手を引くゾーイについていくスペンサーにエリスローズは心の中で何度も謝った。
「もういいか?」
隠れていた兵士が顔を出して一緒に来るように手で促す。
エリスローズは昨日買った食料を棚の奥から取り出して皆の後をついていく。
「ロイ……手、繋いでくれるの?」
ギュッと握られた手に眉を下げるエリスローズの顔を見はしないが、今という時間を惜しむように強く握っている。
「ありがと」
手を握り返すだけでロイの鼻がスンッと鳴る。
我慢させるのはこれが最後にしたい。
お金を稼いでもっと自由に過ごさせたい。
食べる物も学ぶことも我慢しなくていいようにと。
できれば両親も無理して働くことなく家できょうだいと一緒にいてほしい。
でも二人の性格を考えると娘を犠牲にして自分たちが働かないという選択はしないだろう。
だが、これで五人はちゃんとした食事ができる。それだけでも安心だった。
「ゴミ扱いなのね」
「そんな状態で馬車に乗せるわけにはいかないからな」
「歩いて入城させられるってわけね」
階段を上がって初めて出た街は想像以上に人が多く賑やかだった。
化け物でも見るかのような目を向けられることも貧民街の人間が向けてくるより強いものだったが似ているためさほど気にはならなかった。
こんなものか。そう思えるぐらい弱く感じた。
裏道を通って街から離れたところで馬車ではなく荷馬車に乗って目的地へ向かう。
エリスローズの嫌味に苦笑しながら運転する兵士が黙って三十分ほど走ると馬車が止まった。
「ここだ」
降りた先にあった屋敷は立派なもので、周りも緑に溢れた空気の良い場所だった。
「ここに家族が住んでいいの?」
「ああ」
エリスローズは喜びに震え上がりそうになった。
「中を確認してもらって構わない。お前の要望した物はほとんど揃っているはずだ」
「先に入ってて」
入ろうとしたが、エリスローズは立ち止まり、両親に先に入るよう促した。
戸惑いながらも中へと入っていく両親を見た後、振り返ってしゃがみ込む。
ロイが動こうとしないのだ。
「ローイ、どうしたの? 気に入らない?」
「……あの家がいい……」
「そうね。わかるわ。でもあの家はダメなの。これからたくさんお金が入ってくる。あの家にお金を置いておくわけにはいかないから」
王宮の人間が来ている時点で何か金になることだとバレてはいるだろう。
大臣の大声で金が入ることはわかっているだろうし、狙われるのは間違いない。
あの家で生まれ育ったのは自分も同じだから離れたくない気持ちはわかる。
これもまた我慢させなければならないのだと両手を伸ばして抱きしめた。
「ロイには我慢させてばっかりだね」
「我慢してんのはエリーだろ……」
「お姉ちゃんの仕事は我慢と頑張ることだからいいの」
「俺だって兄ちゃんなんだぞ」
「そうだね。だから弟と妹のために頑張ってあげて」
背中に回る小さな手が服を掴む。
「エリーのためにも頑張らせろよ」
声を震わせるロイにエリーは笑う。
「ロイはホントに良い子に育ったね。優しくて、逞しくて、我慢強い。大好きだよ」
「誤魔化すなよ……」
「誤魔化してないよ。ホントに大好き」
肩に顔を埋めたロイが小さくしゃくり上げる。
「一緒に新しいお家入ろ?」
首を振るロイ。
「どうして?」
「入ったらエリーが行っちゃう……」
エリスローズは神様に感謝したいぐらい幸せだった。
優しい両親に優しいきょうだい。
幸せだと感じる瞬間を何百回では足りないほど味わってきた。
こんな姉をこんなにも慕ってくれる弟がいる幸せを自分以上に感じている人間がいるだろうかと今の幸せを噛みしめずにはいられない。
ロイを抱きしめたまま地面に座ってそのまま背中から倒れるとロイが涙で潤んだ瞳でエリスローズを見つめる。
「毎月帰ってくるから待っててくれる?」
「エリーはすぐ約束破る……」
「ロイが待ってるって言ってくれたら守るよ」
「嘘つきだし……」
「嘘つきでごめん。でも今回はちゃんと守るから」
「指切り……」
差し出された小さな小指に小指を絡めると約束の歌を歌う。
歌が終わっても離れない小さな指が愛おしい。
「ロイ、ちゃんとお父さんとお母さんに甘えるんだよ?」
「ん……」
五歳と七歳離れたきょうだいがいると甘えにくくなる。それはエリスローズも経験しているためわかる。
父親がメイを抱っこして、母親がシオンを抱っこする。二人はまだまだ甘えんぼで抱っこが好きだからよくねだるため両親がそうするのもわかるが、ロイのことも抱っこしてやってほしいとエリスローズは思う。
ロイがそれを望んでいないと言っても無理矢理抱っこすれば大人しく抱っこされるのがロイ。
兄として情けない姿を見せないようにしている部分は絶対あるのだ。
ロイだって甘えんぼ。それはエリスローズが一番よくわかっている。
「帰ってきたら甘えてくれる?」
「別にいいけど……」
「約束ね」
結んだままの小指をもう一度揺らして一緒に歌う。
この何気ない瞬間が最も幸せだった。
「エリスローズ、中を確認しなくていいのか?」
「ロイ、一緒に入ってくれる?」
「…………うん……」
乗り気ではないが、足は前に進む。
中を確認したら手を離すときが来る。
その瞬間が来なければいいと願わずにはいられなかった。
家に帰るまでに二人は涙を止めた。
シオンとメイにはまだわからなくともロイは大人顔負けの鋭さを持っており、なにより賢いため不安にさせたくなかった。
話すことで泣かせてしまうだろうが、親の涙だけは見せないというのが二人の意地でもあった。
シオンに理解できるかわからないが、子供たち全員にエリスローズが話をしていると兵士が条件をのむと王から出た許可を持ってきた。
紙には何が書いているかわからなかったものの、空き家の使用許可を得たから急いで引っ越すようにと言われた。
家を確認したらエリスローズはそのまま入城というのが聞こえたことにロイが起こっている。
「ごめんね」
「なんでエリーが行かなきゃいけないんだよ! 俺が働くって言ってんだろ!」
「ロイ、これが皆のためなの」
「皆のためってなんだよ! 勝手に決めんなよ! エリーはいっつもそうだ! なんでも一人で決めるんだ! 俺だって働けるのに! 俺だってエリーを助けられるのに!」
ボロボロと涙を流すロイにエリーも苦しくなる。
いつもロイには我慢を強いてきた。ごめんねと謝ることで無理矢理許しを得て、そしてまた我慢をさせる。
今回もそうだ。勝手に決めてしまったことを事後報告にして許しを得ようとしている。
「ロイ、ロイ。聞いて」
「嫌だ! 勝手に決めたことなんて聞きたくない! 絶対嫌だ!」
「ごめんね」
耳を押さえて拒絶するロイを抱きしめると声を上げて泣き始める。
今まで涙を見せないようにしてきたロイが声を上げて泣く姿に両親もエリスローズも涙を堪えきれない。
しがみつく強さにロイの思いを感じてエリスローズの力も強くなる。
「どうした!?」
ロイの泣き声に幼馴染のスペンサーが駆けつけた。
「ロイが泣いてるの?」
一緒にいたのだろう幼馴染のゾーイも顔を覗かせる。
「エリーお前なんで泣いてるんだよ」
スペンサーが慌てて駆け寄りエリスローズの頬を伝う涙を拭う。
「スペンサー……ゾーイ……」
貧しいながらに助け合ってきた幼馴染の顔を見ると余計に涙が溢れた。
二人には説明しておかなければならない。だが、二人は無関係の人間。王太子妃がいなくなったことも身代わりを立てていることも話すわけにはいかない。
これが外に漏れれば大変なことになる。
なにより、家族がどうなるかわからない。
「引っ越すの」
「引っ越すって……どこにだよ……」
スラム街の人間に引っ越しは無縁のもの。
引っ越すときは国を逃げ出すとき。
そんな気力がスラムの人間にあるはずもない。
ましてや家族五人でどこへ引っ越すというのか。
「上に」
「上って……結婚、すんのか?」
「そうじゃないけど……」
「じゃあなんで上に引っ越すんだよ。無理だろ」
「色々あって……」
言おうとしないエリスローズに苛立ったように腕を掴むスペンサーをゾーイが慌てて止めようとするが、それよりも先にロイがその腕を払わせた。
「エリーに乱暴すんな。ぶっ飛ばすぞ、スペンサー」
さっきまで泣いていたロイが今は怒りの表情でスペンサーを見ている。
「婚約者ができたならそう言えよ」
「違うよ」
「ならなんで上に引っ越すんだよ! 俺らはここから一生出られねぇはずだろ! 」
「なんだっていいでしょ! スペンサーには関係ないじゃない!」
「関係ねぇってなんだよ……俺ら一緒に生きてきた仲だろ……」
苦しいときはいつも助け合ってきた。
関係ないなんてことはない。
だが、上手い言い訳が思いつかない以上、そう言うしかない。
嫌われるしかないのなら嫌われてもいい。
「でも一生一緒なわけじゃないから」
突き放すような言い方をするエリスローズを真っ直ぐ見つめるスペンサーの目が怖かった。
そこにあるのは怒りではなく悲しみと絶望。
「また戻ってくる?」
「……わからない……」
「そっか……」
ゾーイは冷静で静かだった。
「ゾーイ、スペンサーのこと──」
「わかってる」
少し強めに答えるゾーイにエリスローズが口を閉じて頷く。
ゾーイはスペンサーが好きだ。だからスペンサーを傷つけたエリスローズに頼まれることではないと遮った。
言えない事情があることはわかっていても、スペンサーが傷ついたのは事実。
許せない思いではないが、笑顔で送り出すこともできない。
「戻ってきたら教えてね」
「うん」
スペンサーの背中に手を当ててゆっくりと手を引くゾーイについていくスペンサーにエリスローズは心の中で何度も謝った。
「もういいか?」
隠れていた兵士が顔を出して一緒に来るように手で促す。
エリスローズは昨日買った食料を棚の奥から取り出して皆の後をついていく。
「ロイ……手、繋いでくれるの?」
ギュッと握られた手に眉を下げるエリスローズの顔を見はしないが、今という時間を惜しむように強く握っている。
「ありがと」
手を握り返すだけでロイの鼻がスンッと鳴る。
我慢させるのはこれが最後にしたい。
お金を稼いでもっと自由に過ごさせたい。
食べる物も学ぶことも我慢しなくていいようにと。
できれば両親も無理して働くことなく家できょうだいと一緒にいてほしい。
でも二人の性格を考えると娘を犠牲にして自分たちが働かないという選択はしないだろう。
だが、これで五人はちゃんとした食事ができる。それだけでも安心だった。
「ゴミ扱いなのね」
「そんな状態で馬車に乗せるわけにはいかないからな」
「歩いて入城させられるってわけね」
階段を上がって初めて出た街は想像以上に人が多く賑やかだった。
化け物でも見るかのような目を向けられることも貧民街の人間が向けてくるより強いものだったが似ているためさほど気にはならなかった。
こんなものか。そう思えるぐらい弱く感じた。
裏道を通って街から離れたところで馬車ではなく荷馬車に乗って目的地へ向かう。
エリスローズの嫌味に苦笑しながら運転する兵士が黙って三十分ほど走ると馬車が止まった。
「ここだ」
降りた先にあった屋敷は立派なもので、周りも緑に溢れた空気の良い場所だった。
「ここに家族が住んでいいの?」
「ああ」
エリスローズは喜びに震え上がりそうになった。
「中を確認してもらって構わない。お前の要望した物はほとんど揃っているはずだ」
「先に入ってて」
入ろうとしたが、エリスローズは立ち止まり、両親に先に入るよう促した。
戸惑いながらも中へと入っていく両親を見た後、振り返ってしゃがみ込む。
ロイが動こうとしないのだ。
「ローイ、どうしたの? 気に入らない?」
「……あの家がいい……」
「そうね。わかるわ。でもあの家はダメなの。これからたくさんお金が入ってくる。あの家にお金を置いておくわけにはいかないから」
王宮の人間が来ている時点で何か金になることだとバレてはいるだろう。
大臣の大声で金が入ることはわかっているだろうし、狙われるのは間違いない。
あの家で生まれ育ったのは自分も同じだから離れたくない気持ちはわかる。
これもまた我慢させなければならないのだと両手を伸ばして抱きしめた。
「ロイには我慢させてばっかりだね」
「我慢してんのはエリーだろ……」
「お姉ちゃんの仕事は我慢と頑張ることだからいいの」
「俺だって兄ちゃんなんだぞ」
「そうだね。だから弟と妹のために頑張ってあげて」
背中に回る小さな手が服を掴む。
「エリーのためにも頑張らせろよ」
声を震わせるロイにエリーは笑う。
「ロイはホントに良い子に育ったね。優しくて、逞しくて、我慢強い。大好きだよ」
「誤魔化すなよ……」
「誤魔化してないよ。ホントに大好き」
肩に顔を埋めたロイが小さくしゃくり上げる。
「一緒に新しいお家入ろ?」
首を振るロイ。
「どうして?」
「入ったらエリーが行っちゃう……」
エリスローズは神様に感謝したいぐらい幸せだった。
優しい両親に優しいきょうだい。
幸せだと感じる瞬間を何百回では足りないほど味わってきた。
こんな姉をこんなにも慕ってくれる弟がいる幸せを自分以上に感じている人間がいるだろうかと今の幸せを噛みしめずにはいられない。
ロイを抱きしめたまま地面に座ってそのまま背中から倒れるとロイが涙で潤んだ瞳でエリスローズを見つめる。
「毎月帰ってくるから待っててくれる?」
「エリーはすぐ約束破る……」
「ロイが待ってるって言ってくれたら守るよ」
「嘘つきだし……」
「嘘つきでごめん。でも今回はちゃんと守るから」
「指切り……」
差し出された小さな小指に小指を絡めると約束の歌を歌う。
歌が終わっても離れない小さな指が愛おしい。
「ロイ、ちゃんとお父さんとお母さんに甘えるんだよ?」
「ん……」
五歳と七歳離れたきょうだいがいると甘えにくくなる。それはエリスローズも経験しているためわかる。
父親がメイを抱っこして、母親がシオンを抱っこする。二人はまだまだ甘えんぼで抱っこが好きだからよくねだるため両親がそうするのもわかるが、ロイのことも抱っこしてやってほしいとエリスローズは思う。
ロイがそれを望んでいないと言っても無理矢理抱っこすれば大人しく抱っこされるのがロイ。
兄として情けない姿を見せないようにしている部分は絶対あるのだ。
ロイだって甘えんぼ。それはエリスローズが一番よくわかっている。
「帰ってきたら甘えてくれる?」
「別にいいけど……」
「約束ね」
結んだままの小指をもう一度揺らして一緒に歌う。
この何気ない瞬間が最も幸せだった。
「エリスローズ、中を確認しなくていいのか?」
「ロイ、一緒に入ってくれる?」
「…………うん……」
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