33 / 120
二人
しおりを挟む
自分の家。外は大雨。空は今にも雷が鳴り出しそうな雲が広がっている。いや、すでに遠くでは鳴り始めている。雲の動きからここら一帯で鳴り響くのもそう遠くないだろう。
大きな窓から覗く外はそれほど景色の良いものではないが、気に入っている。
最上階を選ぶこともできたが、瑞成は三階を選んだ。低すぎず高すぎないこの場所が自分には合っていると思ったから。
「ッ!」
静かな部屋の中で聞こえるドアの開閉音。ここは自分の家であるはずなのに、瑞成はどうにも落ち着かない。
奥から聞こえる音一つ一つに聞き耳を立ててしまう。
「お風呂ありがとう。ぬくぬくや」
傘を持っていなかった雪儿は大雨に打たれた。全身ずぶ濡れだった雪儿に風呂に入るよう促した。
龍瑞成という人間は基本的に自分のテリトリーに誰彼構わず入れはしない。チャラついて見えるが、意外と警戒心が強く、孤独を愛している。
だからこの家に誰かが足を踏み入れたことはない。腹心の雷真ですらないのだ。
それなのに雪儿は今、瑞成のシャツを着て立っている。
「おいで。せっかくぬくぬくになった身体が冷えないようにしないと」
「至れり尽くせりやなぁ」
「でしょ? 俺ね、結構甲斐甲斐しいんだよ」
「それは知っとる」
「あれ? そうなの? 意外だって言われるかと思ってたのに」
毛布を広げて待つ瑞成の前に背を向けて座ると毛布で包まれる。首からかけているタオルで髪を拭いてやる瑞成を見れば雷真は卒倒するだろう。
「これなんていう布? ふわふわやなぁ」
「タオルっていうんだって。輸入品だよ」
「瑞成は色々持っとるんやなぁ」
薄い布ではなくふわふわとした柔らかいものに驚いた。肌触りが良く、吸水性も良い。
「外国人居留地が近いから色々流れてくるんだよね」
「流行り物好きやからやろ?」
「流行り物を取り入れることでイイ男が出来上がるってわけ」
「せなん?」
「俺のことかっこいいって思わない?」
「んー、思うって言わんと追い出される?」
「かもね」
「ほいたら瑞成はかっこええなぁ」
調子の良い相手に瑞成が声を上げて笑う。後ろに座って髪を拭いてくれる瑞成が笑って作る振動を感じながら雪儿も目を閉じて微笑む。
「雪儿の髪を手入れするのは杏儿?」
「わかる?」
「大事にされてるのがわかるよ」
「雪儿かもしれへんで?」
「雪儿は自分の身なりを整えることには興味ないでしょ?」
「うん」
枝毛一つない滑らかな髪の水分を丁寧に吸い取る。頭皮の水分は特にしっかりと拭き、拭き終わった髪に櫛を通す。
新しいタオルを持ってきて首にかけてやると前を向いたまま「ありがとう」と呟いた雪儿に首を傾げる。少し元気がない。
「どうかした?」
かぶりを振って膝を抱える雪儿の顔を横から覗き込むと隠してしまう。
「杏儿のこと考えてる?」
顔を上げた雪儿が苦笑し、そのまま力のない笑みへと変える。
「読心術でも習得しとるん?」
「雪儿はわかりやすいからね」
杏儿の存在は雪儿にとって大きな壁で、それを乗り越えない限り、雪儿は杏儿に囚われたままだろう。何をするにも杏儿のことが頭をよぎり、自分の感情を抑え込む。正しいのは自分の意見ではなく杏儿の意見で、自分は妹として姉に従うべきだと思い込んでしまう。
救ってやりたいと前々から考えているが、雪儿は頑固。杏儿を悪く言えば傷つく。どうすればいいかと、距離を取る宣言をされた日からずっと考えていた。
毛布に包まる小さな身体を抱きしめると一瞬ビクッと跳ねたが、抵抗はなかった。
「杏儿に言われたことまだ気にしてる?」
「姐ちゃんには何も言われてへん。雪儿が自分で思ったって前も言うた」
「そうだったね。でもさ、今は雪儿と俺しかいないんだから気にする必要ないんじゃない?」
「仲良くしてもうとる……。あかんのになぁ……」
マフィアと親しくすることを良しとする一般人はいない。杏儿の言うことは間違っていないと思うからこそ雪儿も守ろうと思うのに、瑞成の優しさに触れ続けている雪儿にとって杏儿との約束を守ることのほうが難しいと感じていた。
瑞成の家に行ったことを知れば悲しむだろう。お風呂を借りて、髪を乾かしてもらって、抱きしめられていることを知れば嘆くかもしれない。世界で最も悲しませてはいけない人なのに、秘密は増えるばかり。それがとても心苦しくてたまらない。
「姐ちゃん悲しませたらあかんのに……」
「雪儿は自分のために生きようとは思わないの? 杏儿にはそれを望んでるのに?」
「……意地悪やなぁ」
たった二人の家族だからこそ自分のために生きてしまうとバラバラになってしまうようで怖い。想像だけでも怖いのに、それが現実となったらと思うと自分勝手には生きられない。従って生きるのはとても楽で、誰も悲しませないと知ってからはずっと杏儿の言うことを聞いてきた。これからもずっとそうしていくつもりだった。
「なんか、瑞成と出会ってから姐ちゃん悲しませる行動ばっか取ってまう」
「俺のことが好きだからじゃない?」
「それはちゃうと思う」
「すごい。こんなにハッキリフラれたの初めてかも」
「ごめんなぁ」
苦笑が濃くなる雪儿に冗談だと言うも抱えた膝は解けないままで、雪儿の瞳は床に向いている。
「……でも、正直な話、自分の感情がわからんときがある。瑞成を好きとか嫌いとか、姐ちゃんの言うこと聞かなとか聞きたないとか、なんかごちゃごちゃしてわからんくなる。誰も悲しませたないって気持ちは確かやのに、二つに一つしかないのが嫌や。姐ちゃんとの約束守れば瑞成を傷つけるし、瑞成を傷つけんとこってすれば姐ちゃんを悲しませる」
「雪儿のこと幸せにしたいって思ってる人間が雪儿傷つけてんだよね。俺と杏儿、どっちも雪儿を苦しめてる」
雪儿の瞳にじわりと涙が滲む。苦しんでないと、傷ついていないと言えばいいのに、その言葉が出てこない。杏儿の気持ちはわかっているし、従うべきだともわかっている。でも親切にしてくれる瑞成を拒めと言われると苦しい。
この涙がなんの意味を含んで溢れ出るものなのかわからない。理解してくれていることへの喜びか。それとも、従えない自分への情けなさか。
ズッと鼻を鳴らして涙を拭くと顔を上げた。
「瑞成はなんでここに走って来たん?」
「え?」
急に振り返った雪儿が笑顔を見せる様子に瑞成が眉を下げる。
「ここは紫雫楼と逆方向やん?」
「あー……」
蜜華坊から走って五分ほどで着く自宅。紫雫楼も同じぐらいで着くのだからそっちに走ることもできたが、そうしなかった。疑問を持って当然だと苦笑する瑞成はまだ濡れている瞳を見つめて答えた。
「雪儿と二人きりになりたかったから」
目を見開く雪儿だが、すぐに首を傾げる。
「なんで?」
「だって、紫雫楼に送ったら杏儿の監視があって喋れないじゃん? ここだと監視の目はないし、二人きりでなんでも話せる」
「監視の目……」
苦笑するのは当たっていると思う気持ちがどこかにあるからだろう。
「というか、まあ、合理的なんだよね」
「合理的?」
「梅雨だからびしょびしょになった洗濯物は雨が止んでも乾かない。でも雪儿は小さいから俺の服が着れる。雨がやめばその服を着て紫雫楼に送れるでしょ? でも紫雫楼に送って風呂に入ったら俺は着る服がない」
「瑞鳳のがあるで?」
「絶対そう言うと思った。でも男が女物を着るのはちょっとね。紫雫楼の中でだけならいいけど、それを着て帰るのは人の目もあるから。ほら、龍家の三男がそんな格好して街を歩いているなんて親父の耳に入ったら何言われるかわかったもんじゃない。避けたかったんだ」
嘘でもあり、本音でもある。
杏儿は気に入らないだろう。今頃、雷真に噛みついているかもしれない。でもそんなことはどうでもいい。大事なのは雪儿との時間を邪魔させないこと。
雪儿は利口だが純粋。だから汚い大人の言葉に騙されてしまう。嘘にほんの少しの真実を混ぜることによってそれは百パーセントの嘘ではなくなるのだから。疑うには雪儿は懐きすぎている。
「雨、止むやろか……?」
「どうしたの? 寒い?」
「大丈夫……」
雪儿の身体が小刻みに震え始めている。どうしたのかと毛布の上から身体を擦ってやるも止まらない。
「は……ッ!」
まだすぐそこまで来ているわけではないが、雷が近くなった。
「怖い?」
「大丈夫……」
わかりやすい嘘に頷きながら瑞成は真正面から雪儿を抱きしめた。
「大丈夫。こうやって俺が守ってあげるから」
「……大丈夫……」
瑞成は雪儿が自分の言葉を繰り返しているのではなく、自分に暗示をかけているように見えた。一点を見つめたまま繰り返すその言葉を微笑ましく感じることはできなかった。
大きな窓から覗く外はそれほど景色の良いものではないが、気に入っている。
最上階を選ぶこともできたが、瑞成は三階を選んだ。低すぎず高すぎないこの場所が自分には合っていると思ったから。
「ッ!」
静かな部屋の中で聞こえるドアの開閉音。ここは自分の家であるはずなのに、瑞成はどうにも落ち着かない。
奥から聞こえる音一つ一つに聞き耳を立ててしまう。
「お風呂ありがとう。ぬくぬくや」
傘を持っていなかった雪儿は大雨に打たれた。全身ずぶ濡れだった雪儿に風呂に入るよう促した。
龍瑞成という人間は基本的に自分のテリトリーに誰彼構わず入れはしない。チャラついて見えるが、意外と警戒心が強く、孤独を愛している。
だからこの家に誰かが足を踏み入れたことはない。腹心の雷真ですらないのだ。
それなのに雪儿は今、瑞成のシャツを着て立っている。
「おいで。せっかくぬくぬくになった身体が冷えないようにしないと」
「至れり尽くせりやなぁ」
「でしょ? 俺ね、結構甲斐甲斐しいんだよ」
「それは知っとる」
「あれ? そうなの? 意外だって言われるかと思ってたのに」
毛布を広げて待つ瑞成の前に背を向けて座ると毛布で包まれる。首からかけているタオルで髪を拭いてやる瑞成を見れば雷真は卒倒するだろう。
「これなんていう布? ふわふわやなぁ」
「タオルっていうんだって。輸入品だよ」
「瑞成は色々持っとるんやなぁ」
薄い布ではなくふわふわとした柔らかいものに驚いた。肌触りが良く、吸水性も良い。
「外国人居留地が近いから色々流れてくるんだよね」
「流行り物好きやからやろ?」
「流行り物を取り入れることでイイ男が出来上がるってわけ」
「せなん?」
「俺のことかっこいいって思わない?」
「んー、思うって言わんと追い出される?」
「かもね」
「ほいたら瑞成はかっこええなぁ」
調子の良い相手に瑞成が声を上げて笑う。後ろに座って髪を拭いてくれる瑞成が笑って作る振動を感じながら雪儿も目を閉じて微笑む。
「雪儿の髪を手入れするのは杏儿?」
「わかる?」
「大事にされてるのがわかるよ」
「雪儿かもしれへんで?」
「雪儿は自分の身なりを整えることには興味ないでしょ?」
「うん」
枝毛一つない滑らかな髪の水分を丁寧に吸い取る。頭皮の水分は特にしっかりと拭き、拭き終わった髪に櫛を通す。
新しいタオルを持ってきて首にかけてやると前を向いたまま「ありがとう」と呟いた雪儿に首を傾げる。少し元気がない。
「どうかした?」
かぶりを振って膝を抱える雪儿の顔を横から覗き込むと隠してしまう。
「杏儿のこと考えてる?」
顔を上げた雪儿が苦笑し、そのまま力のない笑みへと変える。
「読心術でも習得しとるん?」
「雪儿はわかりやすいからね」
杏儿の存在は雪儿にとって大きな壁で、それを乗り越えない限り、雪儿は杏儿に囚われたままだろう。何をするにも杏儿のことが頭をよぎり、自分の感情を抑え込む。正しいのは自分の意見ではなく杏儿の意見で、自分は妹として姉に従うべきだと思い込んでしまう。
救ってやりたいと前々から考えているが、雪儿は頑固。杏儿を悪く言えば傷つく。どうすればいいかと、距離を取る宣言をされた日からずっと考えていた。
毛布に包まる小さな身体を抱きしめると一瞬ビクッと跳ねたが、抵抗はなかった。
「杏儿に言われたことまだ気にしてる?」
「姐ちゃんには何も言われてへん。雪儿が自分で思ったって前も言うた」
「そうだったね。でもさ、今は雪儿と俺しかいないんだから気にする必要ないんじゃない?」
「仲良くしてもうとる……。あかんのになぁ……」
マフィアと親しくすることを良しとする一般人はいない。杏儿の言うことは間違っていないと思うからこそ雪儿も守ろうと思うのに、瑞成の優しさに触れ続けている雪儿にとって杏儿との約束を守ることのほうが難しいと感じていた。
瑞成の家に行ったことを知れば悲しむだろう。お風呂を借りて、髪を乾かしてもらって、抱きしめられていることを知れば嘆くかもしれない。世界で最も悲しませてはいけない人なのに、秘密は増えるばかり。それがとても心苦しくてたまらない。
「姐ちゃん悲しませたらあかんのに……」
「雪儿は自分のために生きようとは思わないの? 杏儿にはそれを望んでるのに?」
「……意地悪やなぁ」
たった二人の家族だからこそ自分のために生きてしまうとバラバラになってしまうようで怖い。想像だけでも怖いのに、それが現実となったらと思うと自分勝手には生きられない。従って生きるのはとても楽で、誰も悲しませないと知ってからはずっと杏儿の言うことを聞いてきた。これからもずっとそうしていくつもりだった。
「なんか、瑞成と出会ってから姐ちゃん悲しませる行動ばっか取ってまう」
「俺のことが好きだからじゃない?」
「それはちゃうと思う」
「すごい。こんなにハッキリフラれたの初めてかも」
「ごめんなぁ」
苦笑が濃くなる雪儿に冗談だと言うも抱えた膝は解けないままで、雪儿の瞳は床に向いている。
「……でも、正直な話、自分の感情がわからんときがある。瑞成を好きとか嫌いとか、姐ちゃんの言うこと聞かなとか聞きたないとか、なんかごちゃごちゃしてわからんくなる。誰も悲しませたないって気持ちは確かやのに、二つに一つしかないのが嫌や。姐ちゃんとの約束守れば瑞成を傷つけるし、瑞成を傷つけんとこってすれば姐ちゃんを悲しませる」
「雪儿のこと幸せにしたいって思ってる人間が雪儿傷つけてんだよね。俺と杏儿、どっちも雪儿を苦しめてる」
雪儿の瞳にじわりと涙が滲む。苦しんでないと、傷ついていないと言えばいいのに、その言葉が出てこない。杏儿の気持ちはわかっているし、従うべきだともわかっている。でも親切にしてくれる瑞成を拒めと言われると苦しい。
この涙がなんの意味を含んで溢れ出るものなのかわからない。理解してくれていることへの喜びか。それとも、従えない自分への情けなさか。
ズッと鼻を鳴らして涙を拭くと顔を上げた。
「瑞成はなんでここに走って来たん?」
「え?」
急に振り返った雪儿が笑顔を見せる様子に瑞成が眉を下げる。
「ここは紫雫楼と逆方向やん?」
「あー……」
蜜華坊から走って五分ほどで着く自宅。紫雫楼も同じぐらいで着くのだからそっちに走ることもできたが、そうしなかった。疑問を持って当然だと苦笑する瑞成はまだ濡れている瞳を見つめて答えた。
「雪儿と二人きりになりたかったから」
目を見開く雪儿だが、すぐに首を傾げる。
「なんで?」
「だって、紫雫楼に送ったら杏儿の監視があって喋れないじゃん? ここだと監視の目はないし、二人きりでなんでも話せる」
「監視の目……」
苦笑するのは当たっていると思う気持ちがどこかにあるからだろう。
「というか、まあ、合理的なんだよね」
「合理的?」
「梅雨だからびしょびしょになった洗濯物は雨が止んでも乾かない。でも雪儿は小さいから俺の服が着れる。雨がやめばその服を着て紫雫楼に送れるでしょ? でも紫雫楼に送って風呂に入ったら俺は着る服がない」
「瑞鳳のがあるで?」
「絶対そう言うと思った。でも男が女物を着るのはちょっとね。紫雫楼の中でだけならいいけど、それを着て帰るのは人の目もあるから。ほら、龍家の三男がそんな格好して街を歩いているなんて親父の耳に入ったら何言われるかわかったもんじゃない。避けたかったんだ」
嘘でもあり、本音でもある。
杏儿は気に入らないだろう。今頃、雷真に噛みついているかもしれない。でもそんなことはどうでもいい。大事なのは雪儿との時間を邪魔させないこと。
雪儿は利口だが純粋。だから汚い大人の言葉に騙されてしまう。嘘にほんの少しの真実を混ぜることによってそれは百パーセントの嘘ではなくなるのだから。疑うには雪儿は懐きすぎている。
「雨、止むやろか……?」
「どうしたの? 寒い?」
「大丈夫……」
雪儿の身体が小刻みに震え始めている。どうしたのかと毛布の上から身体を擦ってやるも止まらない。
「は……ッ!」
まだすぐそこまで来ているわけではないが、雷が近くなった。
「怖い?」
「大丈夫……」
わかりやすい嘘に頷きながら瑞成は真正面から雪儿を抱きしめた。
「大丈夫。こうやって俺が守ってあげるから」
「……大丈夫……」
瑞成は雪儿が自分の言葉を繰り返しているのではなく、自分に暗示をかけているように見えた。一点を見つめたまま繰り返すその言葉を微笑ましく感じることはできなかった。
12
あなたにおすすめの小説
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
わたしの方が好きでした
帆々
恋愛
リゼは王都で工房を経営する若き経営者だ。日々忙しく過ごしている。
売り上げ以上に気にかかるのは、夫キッドの健康だった。病弱な彼には主夫業を頼むが、無理はさせられない。その分リゼが頑張って生活をカバーしてきた。二人の暮らしでそれが彼女の幸せだった。
「ご主人を甘やかせ過ぎでは?」
周囲の声もある。でも何がいけないのか? キッドのことはもちろん自分が一番わかっている。彼の家蔵の問題もあるが、大丈夫。それが結婚というものだから。リゼは信じている。
彼が体調を崩したことがきっかけで、キッドの世話を頼む看護人を雇い入れことにした。フランという女性で、キッドとは話も合い和気藹々とした様子だ。気の利く彼女にリゼも負担が減りほっと安堵していた。
しかし、自宅の上の階に住む老婦人が忠告する。キッドとフランの仲が普通ではないようだ、と。更に疑いのない真実を突きつけられてしまう。衝撃を受けてうろたえるリゼに老婦人が親切に諭す。
「お別れなさい。あなたのお父様も結婚に反対だった。あなたに相応しくない人よ」
そこへ偶然、老婦人の甥という紳士が現れた。
「エル、リゼを助けてあげて頂戴」
リゼはエルと共にキッドとフランに対峙することになる。そこでは夫の信じられない企みが発覚して———————。
『夫が不良債権のようです〜愛して尽して失った。わたしの末路〜』から改題しました。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
【完結】教会で暮らす事になった伯爵令嬢は思いのほか長く滞在するが、幸せを掴みました。
まりぃべる
恋愛
ルクレツィア=コラユータは、伯爵家の一人娘。七歳の時に母にお使いを頼まれて王都の町はずれの教会を訪れ、そのままそこで育った。
理由は、お家騒動のための避難措置である。
八年が経ち、まもなく成人するルクレツィアは運命の岐路に立たされる。
★違う作品「手の届かない桃色の果実と言われた少女は、廃れた場所を住処とさせられました」での登場人物が出てきます。が、それを読んでいなくても分かる話となっています。
☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ていても、違うところが多々あります。
☆現実世界にも似たような名前や地域名がありますが、全く関係ありません。
☆植物の効能など、現実世界とは近いけれども異なる場合がありますがまりぃべるの世界観ですので、そこのところご理解いただいた上で読んでいただけると幸いです。
【完結】男運ゼロの転生モブ令嬢、たまたま指輪を拾ったらヒロインを押しのけて花嫁に選ばれてしまいました
Rohdea
恋愛
──たまたま落ちていた指輪を拾っただけなのに!
かつて婚約破棄された過去やその後の縁談もことごとく上手くいかない事などから、
男運が無い伯爵令嬢のアイリーン。
痺れを切らした父親に自力で婚約者を見つけろと言われるも、なかなか上手くいかない日々を送っていた。
そんなある日、特殊な方法で嫡男の花嫁選びをするというアディルティス侯爵家のパーティーに参加したアイリーンは、そのパーティーで落ちていた指輪を拾う。
「見つけた! 僕の花嫁!」
「僕の運命の人はあなただ!」
──その指輪こそがアディルティス侯爵家の嫡男、ヴィンセントの花嫁を選ぶ指輪だった。
こうして、落ちていた指輪を拾っただけなのに運命の人……花嫁に選ばれてしまったアイリーン。
すっかりアイリーンの生活は一変する。
しかし、運命は複雑。
ある日、アイリーンは自身の前世の記憶を思い出してしまう。
ここは小説の世界。自分は名も無きモブ。
そして、本来この指輪を拾いヴィンセントの“運命の人”になる相手……
本当の花嫁となるべき小説の世界のヒロインが別にいる事を───
※2021.12.18 小説のヒロインが出てきたのでタグ追加しました(念の為)
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
婚約破棄された令嬢、気づけば宰相副官の最愛でした
藤原遊
恋愛
新興貴族の令嬢セラフィーナは、国外の王子との政略婚を陰謀によって破談にされ、宮廷で居場所を失う。
結婚に頼らず生きることを選んだ彼女は、文官として働き始め、やがて語学と教養を買われて外交補佐官に抜擢された。
そこで出会ったのは、宰相直属の副官クリストファー。
誰にでも優しい笑顔を向ける彼は、宮廷で「仮面の副官」と呼ばれていた。
その裏には冷徹な判断力と、過去の喪失に由来する孤独が隠されている。
国内の派閥抗争、国外の駆け引き。
婚約を切った王子との再会、婚姻に縛られるライバル令嬢。
陰謀と策略が錯綜する宮廷の只中で、セラフィーナは「結婚ではなく自分の力で立つ道」を選び取る。
そして彼女にだけ仮面を外した副官から、「最愛」と呼ばれる存在となっていく。
婚約破棄から始まる、宮廷陰謀と溺愛ラブロマンス。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる