【完結】捨てられた令嬢は、国一の美女で精霊の姫でした。

丸顔ちゃん。

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第49話

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夜の王城は静かだった。

修復作業の音も止み、
侍従たちの足音も消え、
ただ魔石灯の淡い光だけが廊下を照らしている。

その静寂の中――
ひとりの影がゆっくりと歩いていた。

ミリアだ。

その瞳は、
以前のような怯えや涙ではなく、
“何かを決めた人間の目”をしていた。

(……わたくしは……
 奪われた側……
 だから……
 取り返す……)

足音は静か。
呼吸も浅い。
まるで影そのもののように。

向かう先は――
第一王子専属区画。



護衛が二人立っていた。

ミリアは、
ゆっくりと近づき、
深く頭を下げた。

「……ミリア・エルフォードです。
 殿下に……お伝えしたいことがありまして……」

護衛は一瞬迷った。

(……この子は第二王子殿下の婚約者だったはず……
 だが、今は……)

ミリアは、
弱々しく微笑んだ。

「……ほんの少しだけ……
 エリシア様のお顔を……
 見せていただけませんか……?」

その声は震えているようで、
どこか“壊れた優しさ”を含んでいた。

護衛は、
その違和感に気づけなかった。

「……少しだけなら」

扉が開く。

ミリアは、
静かに中へ入った。


エリシアは、
まだ弱い呼吸でベッドに横たわっていた。

アルベルトは、
彼女の隣に座り、
手を握っている。

「エリシア。
 今日はもう眠っていい。
 君の体はまだ完全じゃない」

エリシアは、
安心したように微笑んだ。

「……殿下がそばにいてくださるなら……
 眠れます……」

アルベルトの胸が温かくなる。

「もちろんだ。
 君が眠るまで……ずっといる」

精霊たちが、
二人の周りでふわりと舞う。

――エリシア。

――殿下の光、強い。

――あなたの呼吸も安定してきた。

エリシアは、
アルベルトの肩に頭を預けた。

(……殿下……
 あたたかい……)

そのとき――

コン……

控えめなノック音。

アルベルトは眉をひそめた。

「……この時間に?」

護衛の声が聞こえる。

「殿下。
 ミリア様が……
 エリシア様にお会いしたいと……」

エリシアは驚いて目を開けた。

「……ミリア様……?」

アルベルトは、
胸の奥に“説明できない違和感”を覚えた。

(……なぜ今……?
 なぜエリシアに……?)

精霊たちがざわめく。

――殿下。

――嫌な気配。

――影が近づいてる。

アルベルトは立ち上がった。

「エリシア。
 ここにいて。
 絶対に動かないで」

エリシアは頷いた。

「……はい……殿下……」

アルベルトは扉へ向かう。

だが――
その瞬間。

ふわり……

エリシアの胸がざわついた。

(……何か……来る……
 嫌な……気配……)

精霊たちが震える。

――エリシア。

――影がすぐそこ。

――気をつけて。

ミリアは、
扉の前で静かに立っていた。

その瞳は、
もう“優しいミリア”ではない。

(……エリシア様……
 あなたのせいで……
 わたくしは……
 全部失った……)

護衛が扉を開ける。

ミリアは、
ゆっくりと微笑んだ。

「……エリシア様……
 お話がありますの……」

その声は、
甘く、静かで――
どこか“壊れていた”。

アルベルトは、
その声を聞いた瞬間に悟った。

(……これは……危険だ)

胸の奥で、
強烈な警鐘が鳴る。

エリシアに――影が迫っている。


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