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いざゆけ魔法学校
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可愛い弟、愛しいセリオン。この世の天使、俺はこの子を幸せにするために産まれてきた。
俺がそう豪語してやまない我が弟は、どうやら初めての共同生活に緊張していたらしく、抱きしめた俺を数秒してから嫌々と拒絶し始めた。
「なっ、なんであんたがっ、四年生じゃないの……!」
「ワッハッハ! そう四年生なんだよお兄ちゃん。でもほらセリオン、共同生活って苦手だろ? 心配だなぁーって!」
不正はなかった。
ルースは入学後セリオンと同室になる手筈である。原作におけるその理由はセリオンが入学当時同室者とトラブルを起こして退学にさせた~みたいな理由である。
その後掘り下げとして出てくるが、そいつはセリオンを性的に襲った相手だったらしい。元々屋敷に引きこもっていた彼を知っていて、思いを拗らせて……というやつだ。
そこでセリオンに徹底的な人嫌い属性がつく手筈なのだが、弟が襲われると知っていて黙っている兄はいない。
「一応俺は四年の学級長だろ? 代々四年生が一年生を監督する役目があって、ここが今年の一年生寮だって聞いて入れてもらったんだ。
懐かしいな、この辺は去年卒業した七年生が使ってたんだぞ」
「えっそれ、一年生の監督生ってこと……?」
「ま、そう。このまま行ったら来年の寮長は俺だから」
獅子寮とは、俺の所属している寮のことだ。
王族とそれに連なる名家の所属する寮であり、高貴かつ勇猛であることが求められる。
本来代々は王子や姫がその代表を務めるはずなのだが、今回はあの素行不良に素行不良を重ねた問題児。
成績は振るわないが素行が評価されている真面目ちゃんの俺がクラスをまとめる学級長であり、今年度一年生の監督生──下級生のサポートや相談事への対処を任される、一年生のまとめ役に選ばれたわけだ。
「そういうわけで、どうせ兄弟だからとセリオンの部屋に引っ越してきたんだ。とはいえ扉を出たら誇り高き獅子寮生。特別扱いはしないし甘えも許さないぞ」
「ああ……うん」
「え? なにその微妙なお顔」
結構すごい話のはずなのにセリオンは無反応。
「……じゃあ、元々同室の人っていなかったの?」
「そうだな。セリオンへの招待状が来た後学校側から話を持ちかけられてな、だから部屋割りもそこで決めたんじゃないか?」
我ながらよくもまぁスラスラと大嘘がつけるものである。セリオンはこんな大人になっちゃダメだからな。
セリオンの同室者は裏ルートで事前に調査させた結果、セリオンの映し絵──写真みたいなもの──を多数所有しており、いくつかの危険薬物を所有していたことから入学資格を剥奪されることになった。
ただ危険人物とはいえ永遠に入学資格を失うのは可哀想だということで、来年入学に変わったのだ。
セリオンは今年の進級試験で二年ほど飛び級するので、そうすればまぁ一応危険性は少ない……はずだ。
「まぁひとまず入学おめでとう! セリオン、何かわからないことがあったら俺に──」
「いらない。あんたに頼ることはない」
「あっはい」
おっしゃる通りです。
俺がそう豪語してやまない我が弟は、どうやら初めての共同生活に緊張していたらしく、抱きしめた俺を数秒してから嫌々と拒絶し始めた。
「なっ、なんであんたがっ、四年生じゃないの……!」
「ワッハッハ! そう四年生なんだよお兄ちゃん。でもほらセリオン、共同生活って苦手だろ? 心配だなぁーって!」
不正はなかった。
ルースは入学後セリオンと同室になる手筈である。原作におけるその理由はセリオンが入学当時同室者とトラブルを起こして退学にさせた~みたいな理由である。
その後掘り下げとして出てくるが、そいつはセリオンを性的に襲った相手だったらしい。元々屋敷に引きこもっていた彼を知っていて、思いを拗らせて……というやつだ。
そこでセリオンに徹底的な人嫌い属性がつく手筈なのだが、弟が襲われると知っていて黙っている兄はいない。
「一応俺は四年の学級長だろ? 代々四年生が一年生を監督する役目があって、ここが今年の一年生寮だって聞いて入れてもらったんだ。
懐かしいな、この辺は去年卒業した七年生が使ってたんだぞ」
「えっそれ、一年生の監督生ってこと……?」
「ま、そう。このまま行ったら来年の寮長は俺だから」
獅子寮とは、俺の所属している寮のことだ。
王族とそれに連なる名家の所属する寮であり、高貴かつ勇猛であることが求められる。
本来代々は王子や姫がその代表を務めるはずなのだが、今回はあの素行不良に素行不良を重ねた問題児。
成績は振るわないが素行が評価されている真面目ちゃんの俺がクラスをまとめる学級長であり、今年度一年生の監督生──下級生のサポートや相談事への対処を任される、一年生のまとめ役に選ばれたわけだ。
「そういうわけで、どうせ兄弟だからとセリオンの部屋に引っ越してきたんだ。とはいえ扉を出たら誇り高き獅子寮生。特別扱いはしないし甘えも許さないぞ」
「ああ……うん」
「え? なにその微妙なお顔」
結構すごい話のはずなのにセリオンは無反応。
「……じゃあ、元々同室の人っていなかったの?」
「そうだな。セリオンへの招待状が来た後学校側から話を持ちかけられてな、だから部屋割りもそこで決めたんじゃないか?」
我ながらよくもまぁスラスラと大嘘がつけるものである。セリオンはこんな大人になっちゃダメだからな。
セリオンの同室者は裏ルートで事前に調査させた結果、セリオンの映し絵──写真みたいなもの──を多数所有しており、いくつかの危険薬物を所有していたことから入学資格を剥奪されることになった。
ただ危険人物とはいえ永遠に入学資格を失うのは可哀想だということで、来年入学に変わったのだ。
セリオンは今年の進級試験で二年ほど飛び級するので、そうすればまぁ一応危険性は少ない……はずだ。
「まぁひとまず入学おめでとう! セリオン、何かわからないことがあったら俺に──」
「いらない。あんたに頼ることはない」
「あっはい」
おっしゃる通りです。
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