悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

文字の大きさ
25 / 252
いざゆけ魔法学校

4

しおりを挟む
可愛い弟、愛しいセリオン。この世の天使、俺はこの子を幸せにするために産まれてきた。
俺がそう豪語してやまない我が弟は、どうやら初めての共同生活に緊張していたらしく、抱きしめた俺を数秒してから嫌々と拒絶し始めた。

「なっ、なんであんたがっ、四年生じゃないの……!」
「ワッハッハ! そう四年生なんだよお兄ちゃん。でもほらセリオン、共同生活って苦手だろ? 心配だなぁーって!」

不正はなかった。
ルースは入学後セリオンと同室になる手筈である。原作におけるその理由はセリオンが入学当時同室者とトラブルを起こして退学にさせた~みたいな理由である。
その後掘り下げとして出てくるが、そいつはセリオンを性的に襲った相手だったらしい。元々屋敷に引きこもっていた彼を知っていて、思いを拗らせて……というやつだ。

そこでセリオンに徹底的な人嫌い属性がつく手筈なのだが、弟が襲われると知っていて黙っている兄はいない。

「一応俺は四年の学級長だろ? 代々四年生が一年生を監督する役目があって、ここが今年の一年生寮だって聞いて入れてもらったんだ。
懐かしいな、この辺は去年卒業した七年生が使ってたんだぞ」
「えっそれ、一年生の監督生ってこと……?」
「ま、そう。このまま行ったら来年の寮長は俺だから」

獅子寮とは、俺の所属している寮のことだ。
王族とそれに連なる名家の所属する寮であり、高貴かつ勇猛であることが求められる。

本来代々は王子や姫がその代表を務めるはずなのだが、今回はあの素行不良に素行不良を重ねた問題児。

成績は振るわないが素行が評価されている真面目ちゃんの俺がクラスをまとめる学級長であり、今年度一年生の監督生──下級生のサポートや相談事への対処を任される、一年生のまとめ役に選ばれたわけだ。

「そういうわけで、どうせ兄弟だからとセリオンの部屋に引っ越してきたんだ。とはいえ扉を出たら誇り高き獅子寮生。特別扱いはしないし甘えも許さないぞ」
「ああ……うん」
「え? なにその微妙なお顔」

結構すごい話のはずなのにセリオンは無反応。

「……じゃあ、元々同室の人っていなかったの?」
「そうだな。セリオンへの招待状が来た後学校側から話を持ちかけられてな、だから部屋割りもそこで決めたんじゃないか?」

我ながらよくもまぁスラスラと大嘘がつけるものである。セリオンはこんな大人になっちゃダメだからな。
セリオンの同室者は裏ルートで事前に調査させた結果、セリオンの映し絵──写真みたいなもの──を多数所有しており、いくつかの危険薬物を所有していたことから入学資格を剥奪されることになった。

ただ危険人物とはいえ永遠に入学資格を失うのは可哀想だということで、来年入学に変わったのだ。

セリオンは今年の進級試験で二年ほど飛び級するので、そうすればまぁ一応危険性は少ない……はずだ。

「まぁひとまず入学おめでとう! セリオン、何かわからないことがあったら俺に──」
「いらない。あんたに頼ることはない」
「あっはい」

おっしゃる通りです。

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。 しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。 転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。 恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。 脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。 これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。 ⸻ 脇役くん総受け作品。 地雷の方はご注意ください。 随時更新中。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼2025年9月17日(水)より投稿再開 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

処理中です...