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二年目の魔法学校
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寮に戻れば、ベッドにうずくまって足を撫でさするセリオンが真っ先に目に入ってくる。痛みが強いのだろう、最近はとみに魔力が不安定だ。
「大丈夫……ではないよな。ちゃんと先生に休むって言った?」
「…………」
「おっ休学届」
成長期に無理やり運動をさせたり魔法を使わせると危険なので、暫くセリオンは大きな魔法を使ったり激しすぎる運動はNGだ。
まぁ二年生の授業でそこまで大掛かりな魔法は使わないだろうが、代わりに体育みたいなものがみっちり詰まってるからな。
「薬草学とか座学や実験系は……この時期にスパートが掛かる子もいるから先生も配慮できるけど、飛行術は各々休むしかないからな」
飛行術なんて最たるもので、魔力が不安的な状態で飛ぶとめちゃくちゃふらつくしそれを支えるのに変な筋肉を酷使するので故障しがちだ。
「なんで……こんなの平気。練習しないと、大会間に合わない……」
「えっそんなに飛行大会にかける情熱あったか? 毎年錬金部は面白枠だぞ。まぁ去年ユミルが一年生の部で優勝したらしいけど」
見ていてやればよかったなとぼやけば、腰掛けたベッドからげしりと蹴りが繰り出された。
日々大きくなってるからか日々予想より痛い。やめてほしいぜ!
「今年はぼくが優勝する」
「ああ、お前ら何故か仲悪かったな……」
さらにげしり。やめれ。
どうやらユミルに負けるのは気に入らないらしい。ライバル意識を持つのはいいが、多分ユミルも暫く練習は休んでると思うんだよなぁ。賢いから、自分の状態がわからないような子でもないだろう。
「成長期の無理な運動は人体の損傷にも繋がるぞ、ヴラド先輩ですら一番痛い時期に小間使いにするのはやめてくれたレベルだ──人形師の意図」
コートを脱いで魔法をかける。自分で歩いてハンガーにかかって貰えば、わざわざベッドから動かなくてもいい。結構難しいけどねこれ。
結局四肢(?)操るのは俺だから、ほっそい糸で人形動かしてる感じ。
高等魔法にはこれの上位互換があって、一瞬だけ人工的な命を無機物に与えることができる。
命っていうのは便宜上言ってるだけで、最適な表現はパソコンとかのプログラムかな。
街を守るゴーレムとかはその魔法でプログラムが組まれて生き続けてるから、思考はしないけどしているように見せかけることもできるんだぞ。
「フィレオが得意なんだよなこの魔法。むしろそれ一本で進級してる。生粋の理系だから……」
「りけい?」
「魔法科学とか得意ってこと。意外だろ」
「……あの汚い方じゃなくて?」
「お前先輩を汚い方呼びって。うるさい方だよ」
汚いオタクの方ことフィッシュは古語の翻訳が得意で、錬金部にある読めない本は大抵フィッシュの寄贈した物であることが多い。
フィレオは基本的に理系で教えるのが下手だし比喩表現が通じないし性癖がエグい。倫理観もあまりないので、いずれ機械生命を作り出して禁忌を犯しそうな後輩第一位である。
そんなことを言いながらベッドに入り込めば、セリオンは抵抗なく俺にもそもそと近寄ってきてころんと隣に寝転んだ。
「錬金部、変なやつばっか」
「うん。てかアイツらで全員じゃないぞ」
「!?!?!?!?!?」
びっくりしている。
本来普通の高校と同じように、このアカデミーにおいて“部活”は部員が五人と顧問が一人必要で、それ以下だと同好会になる。セリオンが入部する前から錬金部は“部活”であったので、じつはあと二人いたりするのだ。
「元々錬金部は俺がやりたくてやってる部活でさー。でも実は俺が最高学年じゃないんだな」
「なのに部長……?」
「先輩がやる気なくて。数合わせのために呼んだ」
予想済みだと思うが相手はヴラド先輩である。
留年しまくりで暫くは居なくならないだろうという安直な考えから部員になってもらっていて、吸血鬼でエルフで幽霊部員。
頼んだ時は「ワシのこと数合わせで呼ぶ命知らずお主くらいじゃぞ……」とかなんとか呆れ果てていたが、普通に人のこと奴隷にしてるならそれ相応のことはしてもらわないと困る。
今現在も来てはいないものの在籍はしておいてくれているので大変助かっていた。
「あとはフィレオフィッシュと同じ四年だけど、あんまり顔見てないんだよなぁ。不良生徒なんだよ、ちょっと訳アリ」
「……?? どうやって入部させたの……」
「え? 脅した」
ドン引きしている気配がする。
いや、事情があるんだ事情が! 元々授業にも全く出ていなかったんだが、色々と不可抗力があって関わることになって。
一応攻略対象だが隠しキャラで、魔神よりレア度は低い。何しろこいつは運さえ良ければ一周目でもいつでも出現イベントがあるので。
「ふぁ……ンまぁ、卒業までに会えたらいいな……」
「ちょっと、足撫でてて」
「あいあい。よしよし痛いな……」
セリオンは三年間でするはずの成長を一気に一年でまとめているため、毎日身長が伸びている。
その分毎日痛いのか、俺がそばにいなければ探して膝に乗ろうとしてくるようになった。まーったく可愛い弟め!
「俺がセリオンを抱っこできるのもあと何日だろうなぁ」
いでっ。
なんで蹴られたんだ……?
「大丈夫……ではないよな。ちゃんと先生に休むって言った?」
「…………」
「おっ休学届」
成長期に無理やり運動をさせたり魔法を使わせると危険なので、暫くセリオンは大きな魔法を使ったり激しすぎる運動はNGだ。
まぁ二年生の授業でそこまで大掛かりな魔法は使わないだろうが、代わりに体育みたいなものがみっちり詰まってるからな。
「薬草学とか座学や実験系は……この時期にスパートが掛かる子もいるから先生も配慮できるけど、飛行術は各々休むしかないからな」
飛行術なんて最たるもので、魔力が不安的な状態で飛ぶとめちゃくちゃふらつくしそれを支えるのに変な筋肉を酷使するので故障しがちだ。
「なんで……こんなの平気。練習しないと、大会間に合わない……」
「えっそんなに飛行大会にかける情熱あったか? 毎年錬金部は面白枠だぞ。まぁ去年ユミルが一年生の部で優勝したらしいけど」
見ていてやればよかったなとぼやけば、腰掛けたベッドからげしりと蹴りが繰り出された。
日々大きくなってるからか日々予想より痛い。やめてほしいぜ!
「今年はぼくが優勝する」
「ああ、お前ら何故か仲悪かったな……」
さらにげしり。やめれ。
どうやらユミルに負けるのは気に入らないらしい。ライバル意識を持つのはいいが、多分ユミルも暫く練習は休んでると思うんだよなぁ。賢いから、自分の状態がわからないような子でもないだろう。
「成長期の無理な運動は人体の損傷にも繋がるぞ、ヴラド先輩ですら一番痛い時期に小間使いにするのはやめてくれたレベルだ──人形師の意図」
コートを脱いで魔法をかける。自分で歩いてハンガーにかかって貰えば、わざわざベッドから動かなくてもいい。結構難しいけどねこれ。
結局四肢(?)操るのは俺だから、ほっそい糸で人形動かしてる感じ。
高等魔法にはこれの上位互換があって、一瞬だけ人工的な命を無機物に与えることができる。
命っていうのは便宜上言ってるだけで、最適な表現はパソコンとかのプログラムかな。
街を守るゴーレムとかはその魔法でプログラムが組まれて生き続けてるから、思考はしないけどしているように見せかけることもできるんだぞ。
「フィレオが得意なんだよなこの魔法。むしろそれ一本で進級してる。生粋の理系だから……」
「りけい?」
「魔法科学とか得意ってこと。意外だろ」
「……あの汚い方じゃなくて?」
「お前先輩を汚い方呼びって。うるさい方だよ」
汚いオタクの方ことフィッシュは古語の翻訳が得意で、錬金部にある読めない本は大抵フィッシュの寄贈した物であることが多い。
フィレオは基本的に理系で教えるのが下手だし比喩表現が通じないし性癖がエグい。倫理観もあまりないので、いずれ機械生命を作り出して禁忌を犯しそうな後輩第一位である。
そんなことを言いながらベッドに入り込めば、セリオンは抵抗なく俺にもそもそと近寄ってきてころんと隣に寝転んだ。
「錬金部、変なやつばっか」
「うん。てかアイツらで全員じゃないぞ」
「!?!?!?!?!?」
びっくりしている。
本来普通の高校と同じように、このアカデミーにおいて“部活”は部員が五人と顧問が一人必要で、それ以下だと同好会になる。セリオンが入部する前から錬金部は“部活”であったので、じつはあと二人いたりするのだ。
「元々錬金部は俺がやりたくてやってる部活でさー。でも実は俺が最高学年じゃないんだな」
「なのに部長……?」
「先輩がやる気なくて。数合わせのために呼んだ」
予想済みだと思うが相手はヴラド先輩である。
留年しまくりで暫くは居なくならないだろうという安直な考えから部員になってもらっていて、吸血鬼でエルフで幽霊部員。
頼んだ時は「ワシのこと数合わせで呼ぶ命知らずお主くらいじゃぞ……」とかなんとか呆れ果てていたが、普通に人のこと奴隷にしてるならそれ相応のことはしてもらわないと困る。
今現在も来てはいないものの在籍はしておいてくれているので大変助かっていた。
「あとはフィレオフィッシュと同じ四年だけど、あんまり顔見てないんだよなぁ。不良生徒なんだよ、ちょっと訳アリ」
「……?? どうやって入部させたの……」
「え? 脅した」
ドン引きしている気配がする。
いや、事情があるんだ事情が! 元々授業にも全く出ていなかったんだが、色々と不可抗力があって関わることになって。
一応攻略対象だが隠しキャラで、魔神よりレア度は低い。何しろこいつは運さえ良ければ一周目でもいつでも出現イベントがあるので。
「ふぁ……ンまぁ、卒業までに会えたらいいな……」
「ちょっと、足撫でてて」
「あいあい。よしよし痛いな……」
セリオンは三年間でするはずの成長を一気に一年でまとめているため、毎日身長が伸びている。
その分毎日痛いのか、俺がそばにいなければ探して膝に乗ろうとしてくるようになった。まーったく可愛い弟め!
「俺がセリオンを抱っこできるのもあと何日だろうなぁ」
いでっ。
なんで蹴られたんだ……?
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