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身勝手な暴君の純情。
しおりを挟む「…じゃ、何ですか…?
俺は、ラディス様の我儘で…勝手に婚約者にされたって、そういう事ですか…?」
自然、俯いてしまい 落ちてきた前髪で目の前が翳る。
「我儘…、だとは自覚している。すまない。」
神妙な声でクソ殿下が静かに謝罪を口にした。
権力をそんな事に使うなよなあ…。
「幼い雪の意思を無視して縛りつけたのは、申し訳無いと、思ってる…。」
向かいで殿下が頭を下げているのが見えるが、言葉が出て来ない。
つか…まあ、両親の立場からすりゃ、断りたいが、もしかして自分らのせいで国が揺らいだりする?とか考えたら…まあ、やだよなあ。
俺だってやだわ。息子1人差し出して解決するなら仕方ない、と思うかも。
それに、何も取って食おうって訳じゃなし、ゆくゆくは皇帝の伴侶になるって事だもんな。
同性婚が認められているとはいえ、過去に皇帝の側室になった男性はいるが、皇后にまでなった事は未だ無い。
それを考えれば、まあ…皇后出したら家の誉れにもなるし、、、?
仕方ないか!って考える…かもな。
それを考えると、親を恨む気にはなれない。
なれない、が…、
「ラディス様…。」
俺の声に殿下が反応して頭を上げる。
「何だ?」
「嫌いです。」
「…。」
「嫌いです。」
「……うん。」
お前さえ、我儘言わなきゃ。
俺は今頃、櫻子ちゃんと婚約してて、我が世の春を謳歌して生きてたかもしれないのに。
遡行前に、何が原因なのかもわからないまま皆の前で婚約破棄されて、それが原因で軽んじられて嫌がらせを受ける事も、殺される事も、なかったかもしれないのに。
いや、確実になかった未来だよな。
お前と、婚約さえ、させられてなきゃ。
思考が回ってくると、どんどん胸の辺りが苦しくなってきた。
ふつふつとした怒りで体が熱くなる。涙が溢れる。
悔しい。
何で、お前みたいな身勝手な奴の為に、俺が。
俺の、人生が。
「嫌いです。俺は、貴方が、憎い。」
言ってしまった。抑えられなかった。
泣きながら、息苦しくて肩で息をする。
何だか凄く息苦しくなってきた。
視界がグラつく。
なにこれ。
「…雪?……雪!!」
座ったまま前のめりに倒れそうになった俺の様子がおかしいのを察知してテーブルを飛び越えてきたクソ殿下に抱きとめられる。
こんな奴に支えられるとか嫌だ、と腕から抜け出そうと藻掻くが力が入らない。
息が、苦しい。胸が、苦しい。
目が霞んで、とうとう見えなくなった。
「雪、ごめん!」
声が聞こえたと思ったら、ふっと体が浮くような感覚がして、次には唇にあたたかい…熱い、柔らかいのに弾力のある何かが、何度も押し付けられて、その度に空気が送られてくる。
暫くして。
落ちついてきた俺が目を開くと 泣き出しそうな殿下の顔がドアップで見えた。
「雪…。」
そんな目で見るな。
「雪、良かった…雪、」
呼ぶな、俺を
「雪、ごめん。雪、好きなんだ。」
やめろよ、俺は好きじゃない
「雪……愛してるんだ…。」
…俺は愛してない
「雪、愛してるんだ…ずっと前から…。…頼む…雪…、」
…俺は…、
零れ落ちてきた殿下の涙が俺の頬に落ちて濡らす。ずっと、ずっと。絶え間なく。
泣いて歪んでも綺麗なその顔をずっと見ていると、唇を重ねられた。
まるで、この世で一番壊れやすいものに触れるかのような、優しい触れるだけのようなくちづけ。
あ、これ…。さっきのって、これか。
と、ぼんやり思った。
角度を変えて、何度も啄むように、愛しむように。
俺にだってわかる。
これが、凄く凄く色んな事を我慢して、大切に扱われている事くらい。
先刻と違って意識はちゃんとあるのに、拒否出来ない。
憎ったらしい男に唇を奪われている筈なのに、逃げだせない。
奪われっぱなしで、俺は、なんだか此奴に絆されてしまいそうになっている。
望めばどんな綺麗な人間だって、愛だって手に入るだろうに。
よりによって、こんな冴えない男の俺にここまで愛を乞うなんて。
手に入る見込みの無い愛を、こんなにも必死に切望する姿に、心を動かされない訳が無いじゃないか…。
アンタ、狡ぃよ…。
何故だかつられて、また涙が出た。
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