14 / 36
14 告解・後編 (立川side)
「………そうか…。」
藤川の告白は情報量が多過ぎて、正直、何と言えば良いのかわからない。
「俺は思ったより、藤川に好いてもらっていたんだな。」
衝撃的過ぎて的外れな感想しか出てこない。
とすると、思い返せば、あの時もその時も、閨事中の睦言も、全て本気の本気で言ってたという事か…。
てっきり噛んでしまった義務だと思っていたな。
責任感や罪悪感からの気遣いや優しさだろうと決めつけていた。
「でも、そこまで想ってくれていたなら、何故?」
わざわざ運命を持ち出してまで、俺に別れを切り出した理由は。
「…洸さんの…、貴方の気持ちを、知りたくて…。」
掠れた声を絞り出すように答える藤川。
「少しでも、俺を好きになってくれていれば…何かリアクションがあれば、って。
ほんの少し、自信が欲しかっただけでした。」
リアクション?
「少し戸惑ってくれるだけでも良かったんです。そしたらすぐに嘘だって言うつもりでした。」
ああ…なるほど。俺は試されたのか。
なのに俺はすんなり了承してしまって、だから予定が狂ったって事か。
しかしそれについては俺だって言い分がある。
「…運命の相手だというなら、どだい俺では太刀打ち出来ないと思ったんだ。」
互いがどんな状況にあっても、出会ってしまったが最後、どうしたって惹かれあうという。その引力には抗えない… 殆ど伝説化している“運命の番”。
藤川の口から聞いた時も、正直 半信半疑ではあった。
でも、本人達がそう信じているのなら、それを覆すまでの何かを俺は持たないから。
俺よりも似合いの相手を連れて来たなら、何時でも離れてやる心積りは常にあった。
共に日々を過ごして、体を重ねて、君の愛撫の癖を体に憶え込まされながら、愛しく思う気持ちを 芽生えたそばから、摘み取って、摘み取って…。
決して心を移すまいと。
何時か来てしまう、その日の為に。
まだ学生である君の未来を、俺だけに縛り付けない為に。
そしてあの日、実際に別れを告げられて、顔色ひとつ変えずにいられたのは、幾度となく頭の中で来たるべきその場面を 繰り返しシミュレーションしていた成果だ。
無様な別れの姿を見せて 君の心に僅かな枷も遺したくは無かった、俺の勝手な矜恃だ。
決して少しも心が波立っていなかった訳では無い。
はたからは、凪いで見えていたとしても。
君の存在の抜けた日常に、時に空虚を感じても、それが寂しさというものだとは気づかずに、今この時まで…。
常に、君に最良な対処をしようと、そればかりを考えて、
君の気持ちをおざなりにしてしまっていた。
あんな画策をさせてしまう程に、君を追い詰めてしまっていた。
「すまなかった…。」
謝罪の言葉を口にすると、藤川が驚いて乗り出して来た。
「俺が謝ってるんです!洸さんが謝る事は何一つ無い!」
「君を追い詰めてしまったのは俺の至らなさだ。君の本心を汲み取れなかったから…。」
一番大事な部分を蔑ろにしてしまっていた。
やはり俺は、誰かの伴侶となり共に生きていくのにはとことん向かない人間らしい。
だってこんなにも相手の心の機微を量れないでいる。
人と深く関わる事をして来れなかった俺は本当にポンコツなのだ。
情深い彼のそばにいるにはふさわしくない。
きっと俺は、この先何度でも彼を傷つけるだろう。
俺は、人としての情緒が欠落している欠陥品だ。
おそらく、Ωとしても。
「ごめんなさい、ごめんなさい洸さん…
ごめんなさい…、」
藤川の頬を伝う涙をみつめながらぼんやり思う。
(…俺は、何度藤川にこんな顔をさせる事になるんだろうか……。)
見ている内に俺まで涙が出てきた。
自分がこんな時に泣けるなんて思ってもみなかったな。
「藤川」
名を呼んだ俺に、藤川が肩を震わせた。
「洸さん、ごめんなさい!!もう二度と、絶対…」
「別れよう。」
藤川の涙が止まった。
「俺達は、合わない。」
「……やっぱり、許せないです…よね…。」
俯かせてしまった。
大きな体を縮こまらせて。
そうじゃない、君にそんな風にさせるのが、俺は嫌なんだ。
俺の顔色や機嫌なんか窺わないでくれ…。
「…君に俺は相応しくない。
俺は君を傷つけてばかりいるようだ。」
「貴方に傷つけられた事なんか1度もない!!」
藤川の震える声。
「…俺は、君に相応しくない。」
もう一度、はっきり言った。
「…お願いです…許せないのは仕方ない…
でも、貴方自身を理由にしないで…。」
とうとう嗚咽混じりになった。
きっと俺は、知らない所でこんな風に君を泣かせて、苦悩させていたんだろう。
情けない。何が大人だ…。
俺が、もう少し…もう少し、まともな人間だったら…君をこんな風には…。
気高いαをこんな風にしてしまっていた自分を、俺自身が許せない。
そんな俺が、未来の君を独占し続ける事なんか許される訳が無い。
だから、
「番を、解除してくれ。」
言葉の後の、耳の痛くなる程の、静寂。
唇を戦慄かせ…、藤川は諦めたように、静かにその目を閉じた。
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません
カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」
ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。
(これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!)
妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。
スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。
スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。
もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます?
十万文字程度。
3/7 完結しました!
※主人公:マイペース美人受け
※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。
たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。