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ホワイト家
違和感
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「父上、時間がありません」
「あぁ、そうだな。倉庫まで行くか」
父上が重そうな腰を上げるのを、僕は見ながら考える。
というのも、現状が原作と全く掠ってない気がするのだ。
僕が前世を思い出して、寝坊してしまったからか?
少なくとも昨日までの、前世の記憶がない僕は、原作通りに生きていたはずだ。
この世界に関する単語を聞けば、内容を思い出す事ができる。
でも、自家用馬車の魔道具なんて1ミリも記憶にない。
つまり、ゲーム内容が、既に狂っているのだ。バグの域を通り越している。
原作通りであればあるほど、僕が死ぬ確率は高いだろう。けど、どうして……。
ドアを開けると、壁にもたれかかっていたルイスの顔が華やぐ。
すぐに僕の側まで寄って来て、手を掴んだ。
「兄さん!この後は散歩でも」
「ルイス、本当ごめん」
「何がですか?」
首をかしげるルイスに「魔導士になる」と、伝えた。
目からハイライトが消えたルイスを直視できない。
「ここに残る」と、僕はさっき話していたばかりなのに、急に意見を変えたんだ。
相当、ショックだろう。
ルイスは、僕が学園に行こうとするのを、全力で妨害していたしな。
これから出会う可能性のある攻略対象は、避けられても、弟であるルイスとは、物語が進行してしまっている。
「どうして」
今にも死にそうな顔に、1筋の涙が流れる。
泣かしてしまった!どうしよう、どうすれば!ルイスの肩が震えている!
「ごめん!ルイス……僕は」
ここで優しくするのは、逆に良くない。
ヒックというすすり声が静かな廊下に響く。 僕はムシ……やっぱりダメだ!
踵を返して、ルイスの体を精一杯抱きしめた。
「ごめん。本当ごめんね。でも夢のために頑張りたいんだ」
「……ゆめ?」
「うん。僕は立派な魔導士になるよ。それにルイスも1年したら、学園にくるだろう?」
ルイスの震えが少しずつ収まっていく。
泣き別れで、自殺してしまったら取返しがつかない。
「が、学園で兄さんに……会えない」
「大丈夫。ルイスにも友人がたくさんできるから、寂しくないよ」
学年が違うから、頻繁に会えないけど、手紙でのやり取りはできる。
ルイスはピュアだから、良き友人に恵まれるはずだ。
僕はルイスの肩を掴んで、その目を真っ直ぐ見つめる。目が充血していて、心が痛む。
ダメダメな僕が1番悪いけど、乳首開発してたし、昨日のクッキー媚薬入ってたよね。
「また会おうね、ルイス。見送りは大丈夫だよ」
手を放して歩こうとすれば、腰にしがみついてきた。重い!
「……嫌です。僕も行きます」
硬直していた父上が、ルイスの脇に腕を入れ、その体を持ち上げる。やっと現実世界に帰って来たのか。
「ルイス!ノアの夢を応援しなさい。……遅かれ早かれ迎えが」
「迎え?」
迎えって何?凄い気になるんだけど、天使のお迎え的な感じ?目を逸らさないでよ?
「とりあえずだ。ルイスは我慢しなさい」
「……で、でも」
ルイスのあんなに不服そうな表情初めて見た。
僕がルイスの手を握ると、ルイスは眉を下げて、僕を見つめる。
「確かに会う頻度は減るけど、僕は死ぬわけじゃない」
「それは……」
「僕の事を応援して欲しい」
「……はい」
矢継ぎ早に話せば、ルイスはしぶしぶ頷いてくれた。
これまでの僕は意思がなく、流されるような性格だったから、今回の事はルイスにとって衝撃だろう。
それにしても、迎えってなんだ?
ルイスが「お見送りだけでも」と言うので、3人で、10年以上使用していない倉庫へ向かった。
老朽した倉庫は、震度3くらいで破壊されそうなボロさだ。
この倉庫は屋敷から10分ほど歩いた離れにある。
手入れされておらず、木々が生い茂り、蔦も巻き付いていた。
木製のドアは所々欠けていて、倉庫の中が見える。
父上は鍵を持っていないのか、ドアを足で勢いよく蹴破った。
埃がボワッと広がっていく。魔法は使わないのか、残念。
真っ青な空の光源を頼りに、僕とルイスは、父さんの後を追う。
ドアを破壊した瞬間もそうだけど、埃と虫の数が凄い。
蜘蛛の巣が、床から天井まで占領している。キモチ悪い。
僕の後ろを歩いていたルイスが、服の袖を引くので、振りむく。
「兄さん、埃っぽいですし……。僕が父上について行きますよ」
「暗いし、僕が父上について行くよ」
良くわからない譲り合いをしていると、父上が片手にスッポリ収まる木箱を持ってきた。
この箱を踏みつぶせって事ですか?
「あぁ、そうだな。倉庫まで行くか」
父上が重そうな腰を上げるのを、僕は見ながら考える。
というのも、現状が原作と全く掠ってない気がするのだ。
僕が前世を思い出して、寝坊してしまったからか?
少なくとも昨日までの、前世の記憶がない僕は、原作通りに生きていたはずだ。
この世界に関する単語を聞けば、内容を思い出す事ができる。
でも、自家用馬車の魔道具なんて1ミリも記憶にない。
つまり、ゲーム内容が、既に狂っているのだ。バグの域を通り越している。
原作通りであればあるほど、僕が死ぬ確率は高いだろう。けど、どうして……。
ドアを開けると、壁にもたれかかっていたルイスの顔が華やぐ。
すぐに僕の側まで寄って来て、手を掴んだ。
「兄さん!この後は散歩でも」
「ルイス、本当ごめん」
「何がですか?」
首をかしげるルイスに「魔導士になる」と、伝えた。
目からハイライトが消えたルイスを直視できない。
「ここに残る」と、僕はさっき話していたばかりなのに、急に意見を変えたんだ。
相当、ショックだろう。
ルイスは、僕が学園に行こうとするのを、全力で妨害していたしな。
これから出会う可能性のある攻略対象は、避けられても、弟であるルイスとは、物語が進行してしまっている。
「どうして」
今にも死にそうな顔に、1筋の涙が流れる。
泣かしてしまった!どうしよう、どうすれば!ルイスの肩が震えている!
「ごめん!ルイス……僕は」
ここで優しくするのは、逆に良くない。
ヒックというすすり声が静かな廊下に響く。 僕はムシ……やっぱりダメだ!
踵を返して、ルイスの体を精一杯抱きしめた。
「ごめん。本当ごめんね。でも夢のために頑張りたいんだ」
「……ゆめ?」
「うん。僕は立派な魔導士になるよ。それにルイスも1年したら、学園にくるだろう?」
ルイスの震えが少しずつ収まっていく。
泣き別れで、自殺してしまったら取返しがつかない。
「が、学園で兄さんに……会えない」
「大丈夫。ルイスにも友人がたくさんできるから、寂しくないよ」
学年が違うから、頻繁に会えないけど、手紙でのやり取りはできる。
ルイスはピュアだから、良き友人に恵まれるはずだ。
僕はルイスの肩を掴んで、その目を真っ直ぐ見つめる。目が充血していて、心が痛む。
ダメダメな僕が1番悪いけど、乳首開発してたし、昨日のクッキー媚薬入ってたよね。
「また会おうね、ルイス。見送りは大丈夫だよ」
手を放して歩こうとすれば、腰にしがみついてきた。重い!
「……嫌です。僕も行きます」
硬直していた父上が、ルイスの脇に腕を入れ、その体を持ち上げる。やっと現実世界に帰って来たのか。
「ルイス!ノアの夢を応援しなさい。……遅かれ早かれ迎えが」
「迎え?」
迎えって何?凄い気になるんだけど、天使のお迎え的な感じ?目を逸らさないでよ?
「とりあえずだ。ルイスは我慢しなさい」
「……で、でも」
ルイスのあんなに不服そうな表情初めて見た。
僕がルイスの手を握ると、ルイスは眉を下げて、僕を見つめる。
「確かに会う頻度は減るけど、僕は死ぬわけじゃない」
「それは……」
「僕の事を応援して欲しい」
「……はい」
矢継ぎ早に話せば、ルイスはしぶしぶ頷いてくれた。
これまでの僕は意思がなく、流されるような性格だったから、今回の事はルイスにとって衝撃だろう。
それにしても、迎えってなんだ?
ルイスが「お見送りだけでも」と言うので、3人で、10年以上使用していない倉庫へ向かった。
老朽した倉庫は、震度3くらいで破壊されそうなボロさだ。
この倉庫は屋敷から10分ほど歩いた離れにある。
手入れされておらず、木々が生い茂り、蔦も巻き付いていた。
木製のドアは所々欠けていて、倉庫の中が見える。
父上は鍵を持っていないのか、ドアを足で勢いよく蹴破った。
埃がボワッと広がっていく。魔法は使わないのか、残念。
真っ青な空の光源を頼りに、僕とルイスは、父さんの後を追う。
ドアを破壊した瞬間もそうだけど、埃と虫の数が凄い。
蜘蛛の巣が、床から天井まで占領している。キモチ悪い。
僕の後ろを歩いていたルイスが、服の袖を引くので、振りむく。
「兄さん、埃っぽいですし……。僕が父上について行きますよ」
「暗いし、僕が父上について行くよ」
良くわからない譲り合いをしていると、父上が片手にスッポリ収まる木箱を持ってきた。
この箱を踏みつぶせって事ですか?
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