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猪フレン

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デビュタント当日、美しいドレスを身に纏い支度が整った。
でも、フレン様はまだ帰って来ない。

陛下への挨拶は後見人と一緒に行くが、お父様も帰って来てない為、お母様と一緒に行く。
お母様がデビューした時は、お父様が後見人だったから、ずっと一緒だったらしい。
私は今日のデビュタントにため息が出ていた。

私はファリアス公爵の娘だから一番に呼ばれる。
お母様は、凄く綺麗よ。と言って下さったが、心にぽっかり穴が空いている気分だった。
名前を呼ばれたら、扉が開き陛下に挨拶をする。
その為に扉の前でお母様と並び待っていた。

どこか、ボッーとしていると後ろから、ザワザワと騒いでいるのが聞こえた。

「リュエナ、後ろを向いて。」

お母様の優しい声で振り向くと、フレン様が走りながら駆け寄って来ていた。

絶句した。
何故、参加者の方からきたのかわからない。
帰って来たなら、謁見室の方角からくるのではないのでしょうか。
走ってきたフレン様は息を切らしていた。

「あの…だ、大丈夫ですか…?」

慌てているのか何なのかわからないけど、こんな息の荒いフレン様は初めてだった。

「リュエナっ…今っ、帰ったっ、」
「そ、そのようで…その、おかえりなさいませ。」

フレン様は両手を足におき、ハァハァと、息も切れ切れで話した。

「すぐに、着替えて来るから、ダンスには必ず間に合うから待っててくれっ、」
「は、はい、待ってます。」

そして、私の顔を真剣で何か言いたそうな顔で見ると、猪のように走って行かれた。

いつ帰ってきたのか。
今帰って来たと思うけど、まさかミラ様達に会わず私の所に来たのか。
あんな猪みたいなフレン様は初めてだった。
そんなフレン様に呆然となり、一言お母様に呟いた。

「お母様、フレン様が帰ってらしたわ…」
「良かったわね。…でも、せっかく急いで来て下さったのだから、引いちゃダメよ。」
「…はい、精進します…」

そうして、私達は名前を呼ばれ謁見室に入った。
そして、陛下もミラ様もグレイ様もまだフレン様が帰って来たことは知らなかった。




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