子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽

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燃える魔法の契約書

私の部屋のベッドに、リクハルド様がシリル様を寝かせる。シリル様は、起きる気配もなくすやすやと眠っている。子供らしい無邪気な寝顔に頬が緩んでしまう。

「……リクハルド様。シリル様は可愛いですよね」
「そうだな……」
「では、なぜ、あんなクズ女ルイーズ様に任せていたのですか! ルイーズ様は家庭教師という立場を利用して、シリル様を虐めてましたわ!」
「ルイーズが? ……そうか……」
「そうか……って、他に言うことはありませんの?」
「言うことはあるが……そうだな……」

なんと説明していいものか、とリクハルド様が考え込んでいた。

「まず、こちらが聞いていいか? ルイーズと何をしていたんだ」
「決闘です」
「決闘? 魔法の契約書を持ってか?」
「勝ったほうの言うことを聞く、という報奨を決めて、私がやっつけました」
「……キーラの魔法の契約書は受理されたのか?」
「当然です。私は魔法の契約書に違反することなどしてませんわ。武器の制限などつけませんでしたもの」

魔法の契約書をリクハルド様に見せると、彼が『キーラ・ナイトミュラー勝利。受理』と魔法で書いてあるのを見つめている。

「ルイーズ様には、マクシミリアン伯爵家から出て行っていただきます。シリル様には、二度と近づけませんわ。家庭教師など言語道断です。いくらリクハルド様が父親でも、許せません」

「……ということは……」

また、考え込んでいるリクハルド様。そして、彼が顔をハッと上げた。すると、リクハルド様が続き部屋の扉を開けた。

「リクハルド様! 聞いていますか?」
「聞いている……キーラ。こちらに来てくれるか?」

首を傾げながら言われるままにリクハルド様の部屋に行くと、彼が鍵のかかった引き出しから何かを取り出した。リクハルド様の後ろからそっと覗くと、魔法の契約書が魔法でじりじりと焼けている。

「やっぱり……」
「魔法の契約書……?」

魔法の契約書が焼けている。これは、契約書が無効になったのだ。焼けていく契約書にはシリル様の名前があった。でも、焼けていくのを止められずに、何を書いてあったのか、読めない。

「……燃えちゃいました」
「契約の内容が無効になったのだ」

契約書など、どうでもいいのです。

「はぁ……それよりも、今はシリル様のことです」
「そのシリルのことだ。この契約書は、ルイーズがシリルの家庭教師を一任するというものが書かれていた」

リクハルド様が燃えて消えていく魔法の契約書を一心に見つめている。

「どうしてそんな契約書を作ったのですか? 家庭教師と合わないことはありますわよ」
「作ったのは、俺ではない。俺の父上だ」
「父上? 前マクシミリアン伯爵様ということですか? どうして、前伯爵様がそんなものを……」
「シリルを引き取るのに、反対していたからだ」
「自分の子供なのにですか? 前伯爵様にすれば、孫ではありませんか……くそじじいですか?」
「どちらかと言えばそうだ。だが、何から話せばいいか……一言で言えば、シリルは俺の子供ではない」
「……ええーと……では、どちらのお子様ですか? 前伯爵様の隠し子ですか?」
「ち・が・う」

確かに、顔立ちも似てなければ、明らかに髪色も瞳の色も違う。母親似ているのかと思っていたけど……。

「俺に、婚約者がいたことは知っているか?」
「……存じていますけど……その婚約者様のお子様ではありませんの?」

引き取って育てているのだから、彼女の子供だと思う。そうでなければ、前婚約者以外と婚約をしなかった理由が不明になる。

「それは間違いない。シリルは、前婚約者セアラ・シンクレアの子供だ。だが、相手は俺ではない。彼女は誰にも知られずに出産していたんだ」

リクハルド様の婚約者は事故で亡くなったという話だった。そんな噂があった。その前婚約者との子供を引き取って育てていると……でも、シリル様はリクハルド様の子供ではないということは……。

「わかるだろう。セアラは、別の男と子供を作っていたのだ」




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