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頭が高いですわ 3
しおりを挟む「セレスティア……聖女機関に戻ってくれないか? 私が何とか戻そう。だから、機嫌を直してくれ」
「戻る理由がありません。イゼル様が、私を庇ってくださらなかったことはこの際飲み込みましょう。ヴェイグ様のためです。それに、もう闇のシード(魔法の核)はカレディア国にないのです。私は、ヴェイグ様とシュタルベルグ国へと行きます」
こんな風に育てたのは、聖女機関とお城です。それを恨んでいるわけでもありません。後悔もやりなおしたいとも思いません。
でも、後戻りするつもりもないのです。
正確には、ヴェイグ様の身体の中に闇のシード(魔法の核)がある。その彼の側を離れるなど考えられない。
「しかし、カレディア国が大聖女を失うなど……」
「私は、ただの大聖女候補です」
「だが、唯一の大聖女候補だ。光のシード(魔法の核)に選ばれ、久しく現れなかった唯一の大聖女候補なのだ。セレスティアは、あの闇のシード(魔法の核)にも、耐えうるほどの聖女なのだ」
「だからですよ。闇のシード(魔法の核)は、現在ヴェイグ様の身体の内にあるのです。私がそばにいなければ……ヴェイグ様に何かあれば、私はいつでもこの身を捧げます」
ヴェイグ様と一緒にいる一番の理由は、彼に惹かれてしまっているからだ。
でも、それだけではない。
闇属性と相性がいいと言っても、先のことなど不透明だ。
いつあの闇のシード(魔法の核)がヴェイグ様に牙をむくかわからないのだ。
そう思えば、光魔法は嫌でも必要になってくる。
イゼル様が、何とか私を引き留めようとするけど、もう何を理由にしても無理なものは無理なのだ。
「イゼル様。どうかこのままお下がりください。私にも、我慢の限界というものがあります」
「わかった……理由も、それで納得しよう。……ロクサスも驚いていたが、お前が誰かを想うなど予想外だった。だが、犠牲的精神は身を滅ぼすぞ。あれに、付け込まれないようにしなさい」
「……感謝いたします」
犠牲的精神……でも、そう育てて来たのは、聖女機関と妃教育だ。
聖女として国に尽くして、国民にこの力を捧げる。それは、妃としても、だ。
イゼル様は、何とか連れ戻したいのだろうけど、諦めも感じられた。その時に、
ほんの数歩進んだところに、マティアス様が立っていた。
「セレスティア……やっと会えた。髪も元に戻って……」
「……王太子殿下……どうして、ここに……」
クリスタルブルーの髪に現れていた黒髪は、いつの間にか戻っていた。今は、以前と同じ光り輝くようなクリスタルブルーの髪だけ。
ヴェイグ様は何も言わなかったけど、闇のシード(魔法の核)をヴェイグ様が取り込んでしまったから、私の中に入ろうとしていた闇のシード(魔法の核)が消えたせいだろう。
きっと、闇のシード(魔法の核)から出て来た時には、なかったのだ。
足が制止した私と違って、マティアス様が近付いてくる。こちらも、イゼル様と同じで疲れた表情だ。私がカレディア国からいなくなって、二人とも苦労をしているらしい。
「セレスティアが、イゼルとこちらに向かっていたから追って来たのだが……セレスティアの気持ちを知れて良かった……」
「何の気持ちですか」
「本当に素直じゃないな……だが、エリーゼとは別れる。だから、もう一度やり直そう」
「……やり直す? 私と?」
「ああ、やはりエリーゼでは、妃の器ではなかった。セレスティアとは違う」
「私は、婚約を戻したいなどと、微塵にも思ってません」
「そんなことはない。ロクサスが言っていた。セレスティアは、俺が好きだったと……」
過去形で言っていることに気付いているのだろうか。疑問に思えるほど、マティアス様は、私に好きだと思われている。ロクサスが余計なことを言ったばかりに……。
「セレスティアだって、あの王弟殿下よりも私のほうがいいだろう。あいつは、女たらしだと有名だ」
それは、知っている。
だからと言って、戻りたいなど思うことすらない。
「……私の気持ちはどうなるのです」
「セレスティア。必ずやり直す。だから、今までのように、やっていこう」
「今までの通り、ですか?」
「ああ、そうだ。エリーゼのことはなかったことにして、慰謝料もなかったことにする。セレスティアは聖女に戻って、今まで通りに……」
「ふざけないでください」
一度だけくすりと笑みは零れた。すると、凄んだような声音が出た。それに、マティアス殿下がカッと怒りを露にする。
「……いい加減にしろ! セレスティア! 何が不満なんだ! 私が謝っているんだぞ!!」
「どこが謝っているんですか!!」
「不貞をしたのは、セレスティアだぞ!! それをなかったことにしてやるんだ!!」
「けっこうですわ。不貞と思いたいならそう思えばいいのです」
「やっぱり、不貞だったのだな!! あんな男に身体を許すなんて……っ!!」
「失礼なことを言わないでください!」
感情のままに怒っているマティアス様から、腕を組んだままでツンと顔を背けた。
彼と婚約をやり直すなど有り得ない。私にだって矜持ぐらいあるのだ。それが、王太子殿下であろうと関係ないと思えるほどに。
そんな私の態度にさらに苛ついたマティアス様が、勢いのままで私を柱に叩きつけるように押しやった。
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