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<二> きっかけ
3 三田先生
しおりを挟む3 三田先生
翌日の木曜日は英語の授業がある日だった。
三田先生はいつもどおりだった。可愛い顔に微笑を浮かべながら淡々とした口調で教壇に立ち、黒板に向かい、教室の後方で漫画を読む男子生徒を不意打ちで名指しして教科書の英文を音読させた。
瑛斗はまじまじとその姿を眺めた。
ブラウスの襟元からわずかに覗く白い首筋には、昨夜の出来事を連想させる痕跡は見当たらない。
ただ、顔色は少し冴えない気がする。そういえばいつもは一度は警告をするのに、今日はいきなり指名して教室内をざわめかせたから、虫の居所が良いとはいえなさそうだ。
思い起こせば、三田先生はこれまでにもこんな様子を時折見せていた。微笑みは欠かさないのに、いつにもまして辛辣な時があるのだ。同級生とこっそり「生理じゃねえの」とニヤニヤしたことも何度かあった。
今まではあまり気に留めていなかったけれど、昨晩のようなことが以前から続いていて、そのたびに翌日不機嫌になっていたのだろうか。
教壇に立つ人の顔を眺めながら、頬杖をついてぼんやりと考え込んでいた。
ふと気がつくと、三田先生が瑛斗を見ていた。
目が合ったまましばらくたっていたのかもしれない。先生は眉を寄せ、怪訝そうな顔で瑛斗を見つめたかと思うと、何事もなかったように手元の教科書に視線を戻した。
追加の宿題を覚悟していたが、先生は何も言わなかった。
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