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<九> わがままを聞いて
24 お願いだから
24 お願いだから
ゆっくりと時間をかけて食事を済ませ、買ってきたケーキを一カットずつ食べてから、キッチンにふたりで並んで一緒に食器を片づけた。
ケーキを食べ終わったあたりからふたりとも無口になっていた。
ふたりの間にどことなく緊張感が漂っているのを瑛斗は感じていた。
実際のところ、瑛斗は緊張していた。
約ひと月ぶりのふたりきりの空間。初めて訪れた日以来の長いひと時。お互いの誕生日を祝うための夜……。
そういう雰囲気になるたびにさりげなくはぐらかす先生の仕草の真意を探りながら、瑛斗は慎重にそのタイミングを見計らっていた。
率直に言えば、我慢の限界はとっくにきていた。
今日こそ、いや、今日だけは、という強い気持ちが、泊まると決めた日から瑛斗の脳裏をすっかり占領していた。
初めて抱き締めて、ともに朝を迎えたあの日からずっと、欲しくて欲しくてたまらなくて、身を焦がすとはこういうことなのだろうかと考えもしていた。
片づけを終えてエプロンを外しながら「お風呂入れてこようか」と言う先生を引き留め、後ろから抱き締めた。
リビングのソファーに押し倒し、覆い被さった。先生は困惑したように眉を小さく寄せながら、瑛斗の胸板におずおずと手のひらを当てた。
柔らかい唇にむしゃぶりつき、ワンピースの裾をたくし上げて弾力のある太ももに直接触れた。先生は今日も感じやすくて、吐息を漏らしながら身を捩らせた。
下着に指が触れると、先生がとっさに腕を掴み、耳元で「瑛斗」とささやいた。
それはあの時のみたいな甘えた響きでも、うわごとのような理性を失いかけたものでもなかった。
拒絶の意図を明らかに感じ取り、瑛斗は先生の首筋に這わせていた唇を離し、鼻先が触れるほどの距離で瞳を覗き込んだ。
「しゅーちゃん……したい」
「瑛斗……」
「ねえ……抱きたい……いいでしょ?」
「……ダメ……」
「しゅーちゃん……ねえ、今日だけ……お願い」
とっくに硬くなっていた下半身を先生の体に押しつける。唇を重ねようとすると、拒否するように先生が横を向いた。
「ダメだってば……約束したじゃん」
「『卒業するまで』? それがなんだよ!」
思わず体を起こし、先生を組み敷いたまま声を張り上げていた。
「知ってるでしょ、俺しゅーちゃんのこと好きなんだよ? 毎日毎日しゅーちゃんのことばかり考えて、しゅーちゃんのこと死ぬほど愛してるんだよ?」
「瑛斗……」
「だから、しゅーちゃんの全部が欲しいのしょうがないじゃん。会ってキスだけじゃ全然足りないに決まってるじゃん。しゅーちゃんのこと、俺だけのものだって実感したいの当然じゃん! しゅーちゃんは違うの? こんなので満足できるの!?」
「できるわけないじゃん!」
これまで聞いたことのないほどの大声で先生が言い返す。瑛斗に組み敷かれたまま、大きな目を見開き、あからさまに憤慨の色で瑛斗を睨み返した。
「あたしだって……!」
言いかけて口を噤む。なんだよと目で尋ねると、「だって」と途端に弱々しい声で視線を逸らした。
「だって……何かあったらって思うと……」
また……。何かあったら。責任が取れない。高校生だから。未成年だから。
もううんざりだった。
叫び出したい気持ちはどうにかこらえたが、今日こそはとすっかり昂ぶっていた欲望は抑えきれなかった。瑛斗の下から抜け出そうともがく先生の体をソファーに押しつけながら、「じゃあ」と迫る自分の声が震えていた。
「じゃあ、手と口でして」
目を見開いたまま硬直した人の耳元に唇を寄せ、懇願するような気持ちでささやきかけた。
「いいでしょ、それなら万が一なんてないでしょ」
キスしようとする瑛斗の顔を手のひらで弱々しく押し返しながら、先生がかすかな声で「やめて」と訴える。
「なんでだよ、なんで俺はダメなの? 佐上とは毎週してたくせに」
突然視界が揺らいだ。我に返るとソファーからほとんど落ちかけていた。力の限りに押しのけられたのだと気づくよりも前に、リビングを走って出て行く先生の背中が見えた。
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