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第四章 迷宮都市ラビリントス
第88話 ステチェン
しおりを挟む採掘は3ヶ月程で切り上げた。
【土魔法】でも思ったより効率が悪いのと、俺が満足するほどの量が集まったってのもある。
「こうなると、鍛治施設が欲しいな。細工とかも本格的な道具が欲しい」
金をインゴットにして、ずらーって並べたいよね。成金みたいな。
絶対気持ち良いと思うんだ。
「鍛治は流石に影の中では厳しいですね。何処かに定住の地を探しますか? レト様は色々動いてますが、魔王は普通縄張りから動かないんですよ」
「経験値が欲しいんだから仕方ないじゃん。とはいえ迷宮攻略が終わったらどこか腰を落ち着ける場所を探すのもありだな。魔王城とか建てたい」
この世界のどの城よりも、大きく荘厳で神々しいのを建てたい。
ウェインに任せればなんとかなるだろ。
前世のお城の絵でも渡したら、良い感じにMIXしてそれはもう、凄いのを建ててくれるはず。
俺はウェインに謎の信頼をしているが、ユニークスキルってのはそんなもんだろう。知らんけど。
現在70階のボス部屋前で休憩中。
最近は、アシュラと妲己はお休み気味で俺とテレサとグレースが優先して魔物を狩っている。
妲己も進化そろそろかもだけどね。
ちょっと、俺達の進捗がよろしくないので。
「次の宝箱はなんだろうな」
「ボスの事は頭にないんですね」
いや、油断してる訳じゃないけどさ。
この面子で勝てない程の奴が出て来るとは思わないんだよね。
「よし、行くか」
魔法の新しい使い方も試してみたいしな。
「グオオオォォ!」
「いよっと」
ボスはデストロイ・サイクロプス。
サイクロプスはA級の魔物だが、絶対それより強い。
でも苦戦するほどじゃないんだよな。
俺は影を身に纏い攻撃する。
体の至る所から影が飛び出し、ボスを傷付けていく。
「うーん。いまいち。これなら纏わずに普通に使うのと変わらんな」
って事で次は【血液魔法】を纏う。
体が黒色から赤色に変わる。
「制御が難しいな。部分的なら簡単なんだけど」
全身に血を纏い、腕を剣の様に変える。
「ブラッドソード的な? カッコいいじゃん」
これからはグレースに剣術も習うか。
正直【音魔法】を纏った手刀が一番強いし、使い易いんだけど。
「ゴアアアァァァ!」
「やっぱりこうだな!」
血で作った剣を30本程用意して、次々とボス目掛けて射出する。
近接は【音魔法】だけでいいや。
見た目がカッコよくなるだけでした。
因みに、俺は今一人で戦っている。
魔法を試したかったし、進化したいし。
経験値量が足りないんよ。
はぐれメタル的な魔物はいなのか。
「ソードガトリング! ヒャッハー!!」
最近魔物を倒すのが最早作業なんだよね。
グレース達と模擬戦してる方がよっぽど身になる。
強者と戦いたい訳じゃないけど、戦わないと成長しないというジレンマ。
引きこもってりゃ、大抵安全なんだろうけどね。
それじゃ、面白くないし。
「終わりっと」
あっけなく終了。
ふっ。強くなり過ぎてしまったか。
「お疲れ様です」
「宝箱の時間だ!」
妲己とアシュラが早くもスタンバイしてる。
こうしちゃいられない!
「何が出るかなー? ん? どぅえ!?」
「馬車ですね!」
ほわー。ここで出ますか。正直、魔法書か魔道具の方が嬉しいんですが。
「とりあえず中見てみるか」
馬車の装飾はとても綺麗だ。
黒色に金で細工されてるのもポイントが高い。
「おおー! 結構広いな! 20畳ぐらいか? 俺達全員が入って、家具とか置くとちょっと手狭だけど。妲己は入れないし」
「キュン…」
外から覗き込んでシュンとしてる。
入ろうと思えば入れるけどね。パンパンになるよ。
「いつか体を小さく出来るのを願うしかないな。狐ってそういうの出来そうだし」
まあ、あくまで前世のイメージなんだけど。
「ってか、俺達が馬車使う事ないよね?」
「ないですね。正直影の中の方が快適ですし」
俺達の移動って俺が飛ぶか、道無き道を突っ切るかだし。
宝の持ち腐れか。
「影の中に置いて個室みたいな感じで使えるか」
ほら。そのね。ラブホ的な。
ウェインとテレサが来てからご無沙汰なんです。
【音魔法】で防音は出来るしさ。
レト君、ちょっと溜まってます。
「良いですね。レイアウトは私に任せて下さい」
「はい。お願いします」
ほら、グレースさんも俺の意図を理解してくれたのかノリノリだしさ。
目が爛々としてるように見える。
かなり搾り取られそうな予感。
じゃあ馬車の事は任せて俺は先に進むかね。
俺は馬車と全員を影の中に入れる。
妲己がしょんぼりしてるのをもふもふして慰めてやる。
仕方ない。後でブラッシングもしてやろう。
最近はテレサがやってたからな。
「どうせ、また火山で一日潰れるんだ。時間をかけてもふってやろう」
ん? なぜ、将棋を用意してるんだい?
俺をボコボコにして、鬱憤を晴らそうとしてるんではなかろうな?
それは流石にあんまりだと思いますよ。
将棋もチェス並みに訳わからんからさ。
麻雀とかにしようよ。それならイカサマ出来るし、戦えるよ、俺。
俺は逃げるように、影から飛び出して階層を進める。
相手しても良いけど、定石とか色々あるんでしょ? 俺、目の前の駒を取るのに必死になっていつの間にか負けてるから全然面白くないんだ。
「ん? この匂い…。え? マジ?」
俺は階段を飛んで登っていく。
微かな匂いからまさかと思ったがまさかだった。
「うわー! 海じゃん! まさかのステチェン!久々だー!!」
リブラからラビリントスに来る時、海の魔物の血をストックしようと思ってたのに忘れてたんだよね。
これはありがたいぞ。
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