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第四章 迷宮都市ラビリントス
第115話 天狐
しおりを挟む「キュンキュンキューン!」
「おぉー! 尻尾が八本になってるな! って事は後一回は進化するのか? 天狐って狐の最上位的なのだと思ってたんだけど」
現在89階。
大広間にて、前にやった魔力を放出しての魔物狩りをしている。
相手もデスナイトという事で、人型だからいい実戦練習になっていると思う。
で、ここで狩りを始めてから半年程で妲己が進化した。
予想通り、空狐から天狐への進化でサイズも然程変わっていないが、尻尾は一本増えて八本。
俺は九尾になると勝手に思っているので、後一回は進化があると考えている。
神狐とかかな? 神獣的な?
「魔王と神獣ってどっちが強いんですかねぇ」
「キュキュ?」
相変わらず可愛い。プリティさは失われていないようだ。よきかな。
『天狐 (眷属)
名前 妲己
【魔物能力】
超念力
火炎魔法
再生魔法
雷轟魔法
虚影魔法
天空歩
空間掌握 』
「なんかまた厄介そうな能力を手にしてるしさ。ズルだぞ? なんなんだよそれ」
【幻影魔法】が【虚影魔法】へ進化。
使い勝手がかなり良くなってるらしく、前まで一体しか出せてなかった分身が三体まで出せている。
そのくせ、魔力消費は前とそんなに変わらないときたもんだ。
更に、進化したお陰か処理能力も上がっている。
「次からの模擬戦は妲己を四体相手にしないといけないのかしらん? 地獄以外の何物でもないぞ」
【空間掌握】は文字通り、周囲の空間を把握。
異変があったらすぐに分かるらしい。
前まで、【超念力】で俺の不可視の【音魔法】に対抗していたが、それを避けてくるって事だな。
【超念力】で防御に使ってたリソースを他の事に使ってくるというわけで…。
「勝ち筋はどこにあるので? フィジカルゴリ押しでなんとかなるのか?」
「なんとかなるのでは? 最近のレト様の成長は凄いですよ」
それは自分でも思うけども。
やっぱり魔法で遊んでた時より、体術に力を入れ始めると、吸血鬼のスペックに驚く。
吸血鬼は近接のフィジカルゴリラだったのだ。
「鎖鎌もなんだかんだ使えるようになってきたしなぁ。魔法の練習も頑張ってるけど、俺にはやっぱり向いてなかったっぽいし。まぁ、練習は続けるけどさ」
それでも、鎖鎌を無理に使うよりは拳で殴り合った方が断然強い。
結局、雑魚専の武器なんだよな。
魔法と武器はモブ相手に。
同格以上には、魔法は補助程度に使って、体術ゴリ押しが正解っぽいんだよ。
「ここに来て【感覚狂乱】を覚えておいたのが活きるな。一点集中して使えば、妲己にもまだ通じるし。いやぁ。良かった良かった」
進化して通じなくなった可能性もあるが、それは今後の模擬戦で分かるだろう。
【超念力】を全身に纏うとか馬鹿な事をしてくるかもしれんな。
一回やってきて、魔力消費が多過ぎてすぐガス欠になってたけど。
進化して魔力も増えたし、継戦能力も上がってるだろうから注意しないと。
そういえば人化しなかったな。
フラグじゃなかったのか。
どっちでも良いけど、モフモフ成分が無くなるような事はしないでほしいね。
「ずるい! ずるいぞ!!」
「キュンキュン!」
そして現在、模擬戦中。
案の定、初手【虚影魔法】で妲己三体を相手に大立ち回りしてる所だ。
いつもなら、速攻で魔法で牽制したら使えなかったのに、発動スピードが段違い。
止める間もなく、使われて防戦一方だ。
「しかーし! ここでやられるレト様じゃないぞ!」
【感覚狂乱】をうすーく使う。
これだけでどれが本物か分かるんだよね。
分身に感覚とやらが無いからだろう。
本体とは微妙に違和感があるんだ。
魔力視でも見分けがつかんから、どうしようかと思ってたけど、攻略法があって良かったぜ。
「あー! 入れ替わりやがったな!」
「キュンキュン!」
本体を見つけても入れ替わりがあるんだよな。
やっぱりこの魔法は発動させたらダメだ。
持久戦に持ち込むしかないな。
魔力消費は俺より圧倒的に多いんだから。
【虚影魔法】の魔力消費は変わってないとはいえ、三体分の魔法を使ってるんだから。
「防戦一方ってのも新鮮だな。今まではとにかく攻めて攻めて攻めまくってたから」
【魔纏鎧】と高速思考のお陰で、攻撃はなんとか捌けてるし、緊急時は停止を使ってでも魔法を止める。
そうしながら戦ってると、体がかなり最適化してくる。
「ふむふむ。捌き方はなんとなく分かってきたぞ。ここからどうやって攻撃に転じるか」
吸血鬼の体って素で【戦闘学習】でも持ってるのかってぐらい体術系に関しては相性が良い。
もっと早く魔法に見切りをつけるべきだったか。
「ここだ! 【感覚狂乱】! からの、停止と影で止める!!」
「キュキュ」
攻撃を避けながらも、僅かに見つけた隙で妲己達を止めて、【音魔法】と【魔纏鎧】を併用し、分身二体の首を落とす。
そのまま本体に殴りかかったけど、ギリギリ脱出された。
「うーむ。そこまで甘くてないかって、ぶべらぁ!」
本体と対峙して、ここから更にどうするか考えてると、真後ろから【雷轟魔法】を思いっきり撃たれる。
何故? と思いつつ、吹き飛ばされながら見てみると、首無し妲己二体が魔法を使っていた。
ああ。分身だから、首を落としたとしても活動出来るのね。これは油断というより、盲点だった。
首を落としたら終わりと思ってた俺が悪い。
「うぎぎぎぎ! ここに来てフルパワーの【超念力】! ってやばぁ!」
【超念力】になんとか対抗してると、三方向からの超速の【火炎魔法】。
しっかり雷を纏わせて、俺目掛けて飛んできた。
「やべぇ。避けれん」
「キュンキューン!」
停止を使って、魔法を止め続けるが魔力消費がやばい。このままではジリ貧である。
なんとか【超念力】から脱出せねばと思ってたら、コテリと妲己が倒れた。
分身も消えて、拘束も解かれる。
「あーガス欠か」
「キュン」
【超念力】やら、魔法を複数放ち続けるとか、かなり勝負を決めにきてたもんなぁ。
なんとも締まらない決着になってしまったけど、俺の粘り勝ちという事で。
それにしても【虚影魔法】はダメだな。
首を落として、意識を逸らしたのも良く無い。
俺もまだまだだねぇ。
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