サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第四章 迷宮都市ラビリントス

第126話 アシュラVSデスター

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 「もうちょっと魔王らしい演出を考えても良さそうじゃない?」

 「迷宮の機能をいじってそれらしい部屋にするとかしても良かったんじゃないですか?」

 あ、その手があったか。
 デスターを呼び寄せる前にも言ってよね。
 次からそうしようかしらん。

 「でもここまで転移させたのでも、結構DE使ったんだよね。どうせ無くなる迷宮にそこまで使うのは勿体無い気もするなぁ」

 貧乏性でごめんなさいね。
 カッコよく演出したい気持ちもあるけど、ちょっも収支を考えると尻込みしちゃう。
 家計を考える庶民派魔王と呼んでくれ。


 『名前  デスター
  人種  獣人(狼)
  Lv 120
  【スキル】
  総合武術Lv6
  身体剛化Lv7
  気功術Lv4
  嗅覚Lv8
  性技Lv8
  気配察知Lv8
  水魔法Lv3                  』


 「前回見た時からほとんど成長してないな」

 「私達の上がり具合が異常なんでしょう」

 アシュラと対峙するデスターのステータスを見てみたが、負ける要素が無さそう。
 なんか、デスターはやる気無さそうだし。
 威勢の良い事言ってたのに、視線をキョロキョロさせて逃げ道を探してる。

 俺は影から出したソファにふんぞり返り、グラス片手に煙草を咥える。
 すかさず、妲己が火を付けてくれた。

 「あ、テレサとウェインも出してあげないと」

 初邂逅という事で、子供が居たら威厳がなくなるかと思って、二人には待機してもらってたんだけど、良く考えたら俺に威厳なんて無かったや。
 今度からは最初から居てもらおう。



 「んお? 始まったな」

 アシュラはデスターから攻撃してくるのを待ってたみたいだけど、一向に向かってこないので、痺れを切らして、アシュラから仕掛けた。

 「まぁ、流石にそれぐらいは避けるか」

 【金剛神躰】や【魔纏鎧】を使ってない、素の肉体で金棒での一撃。
 デスターは距離を取りつつ避けていく。

 「ギャギャ!」

 「これぐらいならなんとかならぁ!」

 デスターはアシュラが見た目ほど、強くないと勘違いしたのか、一気に攻勢に転じる。
 自前の肉体スペックと身体剛化を上手く使って、体術で攻撃してくるのを、アシュラは丁寧に受け流していく。

 「あーこれは見てて哀れになるな」

 「思ったよりも差がありましたね」

 アシュラがこっちをチラチラと見てくる。
 話が違うとか思ってるんじゃなかろうか。
 強い人間と戦うって話だったからね。

 「【戦闘学習】のせいで、どんどん動きが最適化されていくな」

 いつも模擬戦してるグレースよりも弱いからな。
 癖さえ掴めば、後は作業になってしまう。

 「ふむん。これ、やる意味あったかな?」

 「無いとは言いませんが…」

 デスターはやっと実力の差に気付き始めたのか、攻撃をしつつ、また視線をキョロキョロとさせ始めた。
 あいつ、逃げ腰すぎない? もうちょっと死ぬ気で戦おうとか思わないのかね。

 「アシュラー。もう良いぞー。仕留めるときは綺麗になー」

 今回の戦いは見てて面白くないや。
 せっかく記念すべき初超越者戦なのに。
 ってか、多分こんな戦いが続くのでは?
 唯一期待出来るのは、妲己と竜人超越者の戦いなんじゃないかね。

 「ゴギャギャ!」

 「うお!? 待て待て待てぇ!」

 【金剛神躰】を使ったアシュラが一気に仕留めにかかる。
 急に圧が強くなったのにデスターは驚き、恥も外聞もないとばかりに逃げ回る。
 これが超越者か…。なんかがっかりだね。
 強者との戦いを求めてる訳じゃないけど、これじゃあモブを相手にしてるのと変わらないじゃん。

 「面白い見せ物になると思ったのにな」

 「レト様が安全マージンを取って、何回も進化させたからでは?」

 それはそうなんだけど。負けたくないからそこは仕方ないじゃんね。
 じゃあ面白くないとか文句言うなって話ですよね。ごもっともです、すみません。

 「ゴギャギャー!!」

 「うぎっ! 待て! 頼む! やめてくれ!」

 とうとう片足を潰されたデスター。
 片足だけでは逃げ回る事も出来ず、その場に蹲っている。
 アシュラはそんなデスターを気にせずに、再度金棒を振り上げて頭を潰そうとしている。

 「あーアシュラストップ」

 「ゴギャ?」

 振り下ろされた金棒を直前で影で止める。
 ギリギリで止められたデスターは、俺が助けてくれるとでも思っているのか、あからさまにホッとした顔をしている。

 「ウェインから出来るだけ綺麗な死体って言われてるだろ? 頭を潰しちゃダメじゃん」

 「ゴギャギャ!」

 そうでした! みたいな顔しないでよ。
 仕留める前にも言ったと思うんだけど。

 「アシュラが綺麗に仕留めるとなると…。首の骨を優しく折ってやれ」

 その前に、妲己の【再生魔法】で足を治しておかないとな。
 これで綺麗な新品の死体の出来上がりだ。
 ………新品ではないか。

 「待て! 本当に殺す気か!?」

 「何を今更当たり前の事を言ってるんだ?」

 この後に及んで殺されないとでも?
 お前がユニークスキルを持ってたら、眷属にしたかもしれないけどな。
 残念ながら、ご縁がなかったということで。
 来世のご活躍に期待します。

 「じゃ、アシュラよろしく」

 俺がやっても良いんだけどね。超越者は貴重な経験値になるだろうし、横入りして俺が貰うのは申し訳ない。

 「ま、まてっ…」

 「ゴギャ」

 ボキッと鈍い音がして、あっさりと首が折られて、デスターは絶命した。

 「期待外れで面白くなかったなー」

 「ゴギャー」

 竜人以外の超越者には期待出来ないなぁ。
 何か縛りプレイでもするべきか?
 いやでも、油断して足下掬われるよりはいいか?
 どうにか面白さと安全を両立出来ないものか。
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