サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第四章 迷宮都市ラビリントス

第127話 テレサVSアグネス

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 「な、なんだいこりゃ」

 「リーダー後ろに!!」

 アシュラとダスターの戦いが終わってから2週間程経った頃。
 ようやく二人目の超越者が迷宮に入ってきた。

 地上ではデスターが帰ってこないとチラホラ囁かれ始めている。
 主に娼館からだけど。あれだけ皆勤してたのに、急に来なくなったもんね。
 今はまだ、長めに迷宮に入ってると思われてるらしいけど。

 で、色々な説明はもう割愛した。
 デスターの時は初めてだから、色々説明したり演出を考えたりしたが、良く考えるとこれから死ぬ奴らの為にあれこれともてなすのが面倒になった。

 「面倒だから、説明は無しね。今からお前はこの子と戦ってもらいます。以上。頑張ってね」

 俺は一方的にそう告げて、テレサを前に出す。
 急に拉致された超越者のアグネスは訳が分かってなさそうだが、とりあえず反抗してくる。

 「なんであたしがその提案を飲まなきゃならないんだい?」

 「ほら、これでやる気になるだろ。全く。いい歳してこんな若い男を何人も囲っちゃってさ。恥ずかしくないのかね」

 俺は三人のパーティーメンバーを影で縛って人質に取る。
 アグネスは逆ハーを楽しんでたのか、顔立ちの良い若い男をパーティーメンバーにして夜な夜なハッスルしてるらしい。

 ギリギリ熟女とも言える年齢だが、勘弁してほしいよね。情報集めてる時にちょっと覗いちゃったんだよ。
 あの時は目が腐るかと思ったぜ。
 グレースで何度もお口直しをさせてもらいました。

 「あんた、性根が腐ってるね」

 「そんな褒めても解放してやんないぞ」

 「しかも、こんな子供を矢面に立たせるなんて。どんな弱味を握ってるんだか」

 「それを言うならお前がそうだろ。無理矢理若い男を囲ってさ。見苦しいったらありゃしねぇ」

 こんな子供とか言うけど、お前が勝ってるのは年齢と経験ぐらいだぞ。
 レベルだってテレサの方が圧倒的に上だし。

 「……レト様。さっさと始めるの。このおばさん、ちょっと臭いの。早く終わらせたいの」

 「お、おばさ…っ! 臭いだってぇ!」

 さっさと始めようとしたのに、結局舌戦を交わしてたらテレサが催促してきた。
 テレサちゃんは何気なく毒を吐くよね。
 今のでアグネスがかなりピキってる。

 「確かに匂うな。なんの匂いだこれ? 香水? あー、はいはい。加齢臭ね。誤魔化す為には仕方ないか」

 「ぶっ殺す!!!」

 思わず本当の事を言ってしまったら、どうやら地雷を盛大に踏み抜いてしまったらしい。
 【火炎魔法】を弾丸の様な速度で飛ばしてきた。

 「おばさんの相手はテレサなの」

 俺に向かってきた魔法を同じ様に【火炎魔法】で相殺する。
 あらやだ。今のテレサのムーブカッコいいな。
 いつか俺もやりたいぜ。

 『名前  アグネス
  人種  ハイ・ヒューマン
  Lv 152
  【スキル】
  身体強化Lv5
  杖術Lv5
  火炎魔法Lv5
  魔力探知Lv8
  風魔法Lv8
  回復魔法Lv9
  水冷魔法Lv2
  氷魔法Lv8
  性技Lv5
  錬金Lv7
  調合Lv9                                 』

 テレサの魔法スキル数が異常なだけで、このおばさんも充分凄いんだよな。
 これでユニークスキルがあれば、眷属にする事も考えたんだけど。
 ………いや、どうだろ。しないかも。なんか合わなそう。性技が目立って見えるのもなんか嫌だ。


 「この! クソガキがっ!」

 「テレサはもう立派なレディなの」

 テレサとアグネスの魔法合戦は一進一退。
 なんか色鮮やかに色んな属性の魔法が飛び交っていて、ファンタジー映画を見てるみたいだ。
 テレサがレベル差でなんとか互角に見えてるけど、やはり年の功か。
 魔法の使い方が巧くて参考になる。

 俺は前回同様、ソファとテーブルを用意して戦いを眺める。
 デスターの時より見応えがあって血が進む進む。

 「おぐっ! や、やめろ!」

 ちょっとしたアクセントにパーティーメンバーを影でぷすぷすと刺して悲鳴を上げさせる。
 いい効果音になってくれてるので、是非最後まで持ってほしいもんだね。
 一人目がそろそろ出血多量で死にそうだけど。

 「ちっ! 埒があかないね!」

 アグネスは中々決定打を出せない事にヤキモキしてるのか、瞬時に膨大な魔力を練り上げて必殺技の様な魔法を出してくる。

 「ほえー。魔力操作がスムーズだなぁ。ユニークスキルと魔道具の補助があるテレサと遜色がない。長年冒険者活動してると洗練されていくのかね」

 でも逆に考えると、まだまだ成長の余地はあるってことで。
 テレサも戦い始めてまだ数年だし。

 「これでも喰らいな!!」

 「……ちょっと面倒なの」

 アグネスが繰り出してきた魔法は炎の竜巻だった。風と火の合成魔法ってやつかな。
 とても対人で使うような魔法じゃないと思うんだけど。戦争とか、多人数向けの魔法じゃんね。

 「一人に対してこの魔法か。なんか無駄な気がするのは俺だけ?」

 「これがあの人の出せる最高の魔法なのでは? 人質をチラチラと見てましたし、早く救出したくて焦った可能性もありますが」

 ふーむ。もうちょっとフラットな感じで戦って欲しかったけど、人質が仇になったか。
 参考になるからもっと魔法を見せてほしかったんだけど。

 「……ひらけゴマ」

 テレサは向かってくる魔法をどうやって対処するのかと見ていたが、【空間魔法】を使って無理矢理消滅させていた。
 まだ覚えたての魔法なのに、良く成功させたな。
 一応万が一も考えて、停止の【魔眼】の準備はしてたんだけど。

 でもその魔法名というか、なんというか。
 ひらけゴマは無しじゃないだろうか。
 やはり厨二病菌を撒き散らさないとカッコいい魔法名を言ってくれそうにない。

 「な、なに!?」

 「返すの」

 決めにいった魔法を消されて予想外だったのか、狼狽するアグネス。
 そんな事をお構い無しに、テレサは真後ろにさっきのアグネスの魔法を空間から出す。

 「なるほど。消滅させたんじゃなくて、空間を移動させたのか。考えたもんだな」

 空間から出てきた魔法は威力そのままにアグネスに襲いかかる。
 エネルギーとかどうなってるんですかねぇ。
 魔法だから深く考えたら負けなんだろうけど。

 「ぎ、ぎゃー! 熱い! 熱い! 止めておくれ!」

 自分の魔法でやられるとはな。
 このまま放置したらこんがり焼けた焼死体が出来上がる事だろう。

 「妲己。あいつが死ぬ直前になったら【再生魔法】な。ウェインが悲しむ」

 「キュン!」

 ウェイン君は綺麗な死体を所望してるからね。
 アシュラは無理そうだなと思ってたけど、テレサもやらかすとは。

 「汚物は消毒なの」

 テレサさんや。どこでそんな言葉を覚えたのかな? それは俺の前世ネタなんだが?
 ……どこかで口走ったかもしれんな。

 恍惚な表情を浮かべてるテレサも立派な俺の眷属らしくなりましたな。
 綺麗に殺す事をすっかり忘れてるんだろう。
 楽しそうだし邪魔はしないでやろう。
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