サイコパス、異世界で蝙蝠に転生す。

Jaja

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第四章 迷宮都市ラビリントス

第133話 実験

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 とりあえず超越者殺害記念として祝杯を上げた翌日。
 早速ウェインが実験を開始したいというので、未だに迷宮都市に留まっている。
 どうなるか分からないけど、制御出来そうにないならそのまま都市に放り出す予定だ。

 「色々サンプルを用意しておいたんだぞ」

 「ほほー。真面目だな」

 影の端のほうのウェインの実験スペース。
 そこには、なにやら小難しい事を書いてある紙と一緒に素材が置かれていた。
 きっちり整理整頓されていて乱雑にみえない。
 マッドな研究者って整理とか出来ないイメージなんだけどな。

 「まずはこれなんだぞ」

 そう言って、ウェインが置かれていた紙を見せつつ説明してくれる。
 正直、言ってる事が3割も理解出来ない。
 こいつ、多分既に俺より頭が良い。
 俺、生物学とか全然ダメだからな。
 体の臓器すら名称を知らないのがいっぱいあるし。

 「ふむ? これがパーティメンバーか? 既に原型を留めてないけど」

 「なんかぐちゃぐちゃなの」

 説明の通りならばこれはパーティメンバー三人分の肉体をこねくり回したものらしい。
 テレサも首を傾げながら、鉄で出来た巨大な容器を覗き込む。
 かなりのグロだと思うんだけど、テレサは全く気にしてない。俺達に付き合ってるせいで、倫理観がバグってるんだろうな。

 「テレサの言う通りぐちゃぐちゃじゃん。せっかく綺麗に死体処理したのに、意味なくない?」

 「ちゃんと説明したんだぞ!! 混ぜ返す順番があって--」

 説明されていたらしい。すみません。理解出来てないもんで。
 なんかウェインのスイッチを押してしまったのか、マシンガントークを繰り広げられている。
 それも何言ってるか分かりません。
 馬鹿な主人を許して下さい。

 「なるほど。それで? ここからは?」

 「魔石を入れて錬金術を使うんだぞ!」

 そう言って取り出したのは、60階辺りで取れる魔石。魔石にも何か細工がしてあるらしく、理論上はこれで完成するらしい。

 「じゃあやってみるぞ!」

 魔石を容器の中に入れて錬金術を発動。
 容器は光に包まれて、その中で肉の塊やら骨やらがうねうねと動いている。

 「ほえー。気持ち悪いな」

 「ワームみたいですね」

 グレースがポロッと横で呟く。
 言うなよ。嫌いなのに。

 「む? むむっ!?」

 発動してから十秒後ぐらいでウェインが異変に気付く。
 反応的にはよろしくなさそう。

 「おわっ! アシュラ!」

 「ゴギャギャ!」

 鉄の容器を叩き割り出てきたのは、なんとか人型を保っているクリーチャー。
 あの魔物の血を飲ませたのに似てるな。

 ウェインが驚き、横に控えていたアシュラに捕獲を頼む。
 見た限り制御不可っぽいけど、観察は必要だからな。

 「むー。失敗なんだぞ。一応魔石の術式には制御も組み込んだんだぞー」

 アシュラに取り押さえられているキメラをまじまじと観察してため息を吐くウェイン。
 どうやらダメだったらしい。

 「涎だらだら。目はギンギン。会話も不可。命令も出来なさそう」

 一応魔眼で確認してみたけど、種族やらスキルやらが文字化けしている。
 世界的に認められていない存在とかだろうか?

 「まぁ、最初から成功なんて無理だからな。超越者の肉体で失敗しなくて良かったじゃん」

 「そう思う事にするんだぞ」

 ちょっとしょげていたウェインを慰めつつ、キメラを影で捕獲する。
 こいつは後で役立ってもらわないとだからな。

 「気を取り直して次に行くんだぞ! 動いただけでも良いと割り切るんだぞ!」

 そうだよね。死体が生物に変化したんだから、前進はしてるはず。
 後は素材の厳選だったり、魔石の質とかもあるんじゃないのかね。

 そしてそれからも実験を行う。

 実験A・人間+魔物素材

 結果は最初と変わらず。
 制御の出来ない唯のクリーチャー。

 実験B・人間+魔物素材(魔石の質を上げる)

 素材が耐えきれず破裂。グリフォンの魔石はやりすぎだったみたいだ。
 掃除が大変でした。

 「レト様! 人間素材が全然足りないんだぞ!」

 「調達してきまーす」

 途中超越者以外の人間の死体が無くなったので、冒険者ギルドの近くまで行って、そこらの冒険者を拉致殺害。

 そこからの実験は丁度良い魔石を探す事だった。
 魔石の質と素材が上手くマッチすれば、制御出来るんじゃないかと考えた。
 ウェインのレポートの筆が進む進む。
 目をギラつかせて立派なマッドになっていた。

 「これでどうなんだぞ!」

 実験は既に2日かかっている。
 手頃な冒険者がいなくなれば、そこらにいる一般人も使っているから、ラビリントスからは人口が少し減ってしまった。
 ちょっとどころではない騒ぎになっているが、気にしない。
 どうせ潰す予定だったんだし。

 「お? おお? おおお!?」

 「解析出来たぞ!!!」

 そしてようやく。
 結構な犠牲者を出しながらようやく成功例が出来た。

 『レッサー・キメラ
  名前  無し
  【魔物能力】
  再生
  捕食       』

 「お世辞にも見た目は良いとは言えないけど、成功は成功だ! やったな!」

 「この素材がこの魔石でいけるということは--人間だけではだめで--超越者との比率が--魔物素材を増やした場合も--見た目をなんとかもう少し--」

 俺は喜んでるんだけど、ウェインは既に次を見据えてるらしい。
 ぶつぶつと呟きつつ、自分の世界に入っていた。

 「ふーむ? 解析では魔物扱いか。まぁ、人間素材も入れてるとはいえ、見た目は完全にアウトだもんな」

 一応人型としての原型は保っている。
 なんか、ゴブリンをより醜くしたみたいな感じ?
 これでも良いように言ってる方。
 ゴブリンとグールの混合種みたい。ちょっと一緒にいたいとは思いませんね。
 会話も出来ないし。大人しくはしてるから制御は出来てるんだろうけど。

 「とりあえず一歩前進って感じか」

 ウェインがこいつをどうするのか知らないけど。
 眷属にして欲しいならするけど、超越者の肉体も控えてるしなぁ。
 キメラは何体も要らないから出来れば避けたい。
 弄り方次第でウェインの生産補助とか出来ないのかしらん?
 それなら一考の余地はある。
 あ、制御出来るならわざわざ眷属にする必要もないか。
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