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第六章 ゆるり旅
第164話 宝探し
しおりを挟む「これはひどい」
「壊滅ですね」
魔境『腐死の森』から、テレサの転移で一番最寄りの街までやってきた。
とりあえず日用品とかをパクろうと思ってたんだけど、来る前に見た時とは違って、街は壊滅していた。
「テレサのランダム花火の被害にあってしまったか。ご愁傷様です」
魔境に一番近いという事もあって、かなり堅牢な要塞都市だったんだけど、瓦礫の山になってしまっている。
「とりあえず中に入ってみるか。面白いもんが落ちてるかもしれん」
せっかく来たんだし中に入ってみよう。
こんな良い感じの壊れた都市なんて、入る機会はそうそうないしな。面白そうだ。
「ふむ。探知した感じ人間はいなさそうだな」
「火事場泥棒がいてもおかしくないと思いましたが、その気配もありませんね」
魔境に一番近いし、また魔法が降ってくるとでも思ったのかね。いくら泥棒出来ても死んだら意味ないし。
「よし! 宝探しの時間だ!」
俺は影から眷属全員を出す。
誰もいなさそうだし、都市全域の宝探し大会を開催しようと思います。
「はいはーい。今から眷属全員で宝探し大会をしまーす。全員で散らばって面白そうな物を集めてくる事。優勝者には豪華賞品をプレゼント!」
「豪華賞品?」
「いや、まだ決めてないけど。例えば俺が一日なんでも言う事聞く券とか」
「やりましょう。すぐやりましょう」
アギャイン以外の全員が色めき立つ。
え? そんなに俺に言う事聞いて欲しいのかね?
普段から聞いてると思うんだけど?
「まっ、いいや。はい。開始ー」
開始の合図を出すと一斉に四方八方飛び出していく。みんなには魔法鞄を持たせてるし、沢山の物を集めて来てくれる事を期待します。
「さーて。俺も目星を付けてる所があるんだよね」
いざ行かん! 図書館へ!
無事な本がある事を願ってるぜ! 俺がお城作るなら特大の図書館は絶対作りたいからな。
これからは本も積極的に集めていこうと思う。
なんか本がいっぱいあると知的な感じがするもんね。魔王には必須だと思います。
「ふんふんふ~ん♪」
思ったよりも無事で良かった。
焼けてしまったり、半分ぐらいしか内容が分からないのもあるけど。
これだけでもこの都市に寄った甲斐があるな。
「ぷは~。みんなの進捗はどうだろな」
煙草を吸いながら図書館の瓦礫の山から出ると、街に大量のゾンビが徘徊していた。
アギャインの【死霊術】だろう。
あ、グレースが抗議してるのが見える。アギャインは高笑いして探索を続けてるけど。
人海戦術を使うとは。中々賢いな。
「俺はもう満足したし、集合地点に戻ろうかな。本でも読みながら待っていよう」
当面の暇潰しが出来た。作家とかを眷属にして本を書いてもらうのも面白そうだ。
「結果発表~!」
某たらこ唇芸人ばりに声を張り上げて、みんなの結果を見ていく。
まずは自信ありますとばかりに視線を向けてくるヴェガ。
そして魔法鞄から取り出したのは死体だった。
「ふむ? 死体とな?」
君のご飯では? ちょっと腐ってるけど?
なんでも腐りかけが美味しいって言うし? ご馳走様なんじゃないですか?
「………(コソコソ)」
「新しいキメラの素材としてどうかって言ってるぞ!」
隣にいたウェインに耳打ちで意思を伝えるヴェガ。未だに俺には声を聞かせてくれません。
「なるほど。キメラの素材ね。アギャインのお陰でドラゴン・ゾンビとかの死体も手に入ったし、もう一回作ってみるのもありか。いいだろう。ウェインと相談して作ってみたまえ」
バンザイして喜ぶヴェガ。キメラ友達が欲しかったんだろうか? でもこの前俺のブラッド・チェーンには嫉妬してましたよね? どういう基準なのか分かりませんな。
「じゃあ次は俺だぞ! 工房を中心に回ってきたんだぞ!」
ウェインが魔法鞄から取り出したのは、工房に野晒しになっていた、ポーションやら魔道具やら。
全部ウェインが作った方が質が良さそうな物ばっかりだけど。
「工房秘伝のレシピとかが置いてあったんだぞ! 参考になるのもあって、俺は大満足なんだぞ!」
嬉しそうにレシピとかを見せてくれるけど、俺には意味が分からないからね。
調合の割合とか見せられても何が凄いのやら理解出来ません。
「魔力回復ポーションの味変に再チャレンジだぞ!」
「そいつはすげぇや。是非やってくれ」
それは分かりやすい。すぐにでもやってくれ。
妲己とテレサが羨望の眼差しで見てるぞ。この前の戦いで飲んで、やっぱり不味かったらしいからな。兄の威厳とやらを見せつけろ。
「では次は私が」
グレースが出したのは色々な武器。
要塞都市だけあって、武器工房が多くあったみたいで、剣や槍、弓や鎧等、多種多様にある。
俺達は未だに鍛治は出来ないからな。
今は使う人がほとんど居ないから困ってないけど、腰を落ち着けたらウェインに良い工房をプレゼントしてあげないと。
「後、これもですね」
「なにそれ? 竈?」
「炉です。いつか、鍛治施設を作る時の参考になるかと思いまして。くり抜いてきました。後、工房に置いてあったレシピも持ってきています」
くり抜いてきました。パワーワード過ぎる。
まさか炉を丸ごと持ってくるとは。
グレースが勝ちを確信してドヤ顔してるな。
後は妲己とアシュラとテレサとアギャインか。
どんな物を持って来たのやら。楽しみだぜ。
因みに、ブラッド・チェーンは俺と一緒に行動してたから不参加です。
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