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第六章 ゆるり旅
第175話 内覧会
しおりを挟む「うぅ…。僕は一体…」
やっと【眷属化】が終わった。
なんか今回はやたらと長く感じたな。
「あ、あなた様は…?」
処置が終わって少しの間はぼーっとしていたエルフの男、キンブルは周りを見渡して俺達を見つけたようだ。女神とか言うなよ。
「仮面をしてても分かる。あなたは絶対に美人だ。どうだろう。是非お食事でも」
早速ナンパしてきた。俺じゃなくてグレース相手にだけど。
そういえば俺達は仮面してたな。あの状況で俺を女神と勘違いしたのはそのせいでもあるのかも。
「レト様」
「うん」
「げぶらぁ!」
なんか腹が立ったのでとりあえずキンブルをしばく。グレースは俺の物です。
「俺の所有物に手を出すな」
「ずみまぜん…」
ポコポコと殴ってやった。こういうのは最初が肝心なのである。
「とりあえずこいつどうしようか」
「影の中に放り込んでおけばいいのでは? 向こうで誰かがなんとかしてくれるでしょう」
してくれるかな? 俺の眷属だよ? 唯一説明とかしてくれそうなグレースがここにいるんだし。
妲己とかも面倒見が良いけど、完全な意思疎通が出来る訳じゃないしなぁ。
ウェインやテレサは以ての外だろう。いや、ワンチャンウェインが実験対象として擦り寄るかもな。
「まっ、いいや。俺達はこの後宝物庫に行く予定があるし。こいつが居ても邪魔だろう」
「なんの話をしてるんだい? 僕にも聞かせておくれよ」
ボコボコの顔ながらもイケメンスマイルで聞いてくるキンブル。
エルフって顔の造形整ってるなぁ。ムカつく。
俺も充分美形だけど、やっぱりイケメンってムカつくよねぇ。
「入れば分かる」
「ん?」
結局何も言わずに影の中に放り込んでやった。
その調子で影の中でも頑張ってくれたまえ。
詐術とかあったし、なんとかなるんじゃね? 知らんけど。
「よし。行くか」
「このまま宝物庫一直線ですか?」
「いや、折角だし城の内装も見て行こうかなと。俺達の時の参考になるかもしれん」
「それならウェインを出すべきでは?」
確かに。一番見てもらわないといけない人物だ。
俺が絵で説明してもいいけど、やっぱり自分で見ると違うもんね。
って事で。
「体の部位を少し--ってあれ? なんだぞ? 今、交渉の真っ最中だったんだぞ?」
「仮面をしろ。で、初手から体を貰おうとするんじゃない」
案の定、ウェインはキンブルに興味津々だったみたいだ。最初から体の部位を貰おうとするのはどうかと思うが。
「なんなんだぞ? 早く戻りたいんだぞ?」
渋々仮面を魔法鞄から取り出して装着しているウェインはかなり不機嫌である。
ごめんなさいね。折角の内覧チャンスだし、今はこっちに集中して頂きたい。
「城の中を見せておこうと思って。参考になるかもだろ?」
「あ、ここは城の中なんだぞ? それなら早く言って欲しかったぞ」
不機嫌な顔から一転。
いそいそと紙とペンを取り出して、早速スケッチしていくウェイン。
「よーし。じゃあしゅっぱーつ」
レト・ノックスプロデュース。
お城の見学会の始まりだ。床に騎士や使用人が転がってるのはご愛嬌。
こいつらにはもてなし精神はないのかね。
せっかく見学に来たのに、お茶の一杯も出さないとは。
傷付いたので、宝物庫の中身は貰っていきますね。
「思ったよりも複雑な作りになってるんだな」
「神聖王国程ではありませんが、中々立派なお城だと思いますよ」
ふむぅ。とりあえずどこの城よりもデカくとか思ってたけど、こんなに広くて不便じゃないのかね。
掃除とかさ。城に入ってから自分の部屋に向かうのも一苦労じゃなかろうか。
ウェインには利便性も考えてもらいたいね。
エレベーターとか、床が自動で動く仕組みみたいにしてくれないだろうか。
「ほう。これが謁見の間」
「重厚な扉です。少々質素かとは思いますが」
扉がね。かなり大きくて重そうなんだけど。
もっと絵とか彫り込んでカッコよくしてもいいよね。俺の城はそうする予定です。
「あ、玉座みっけ! もらっていこう」
「全て金で出来てますね」
座り心地は悪い。固すぎる。痔になったらどうしてくれるんだ。
これもウェインには要改良を頼んでおく。
「この天井のシャンデリアとかも持っていくか」
「本当に価値のある物を根こそぎですね」
これまでの部屋でも、価値がありそうな物は影の中に放り込んでいる。
折角だし貰えるもんは貰っておかないとね。
「宝物庫が見当たりませんなぁ」
「分かりやすい所にはないでしょう」
「城の内装を見学してたら大体場所の予想はついたんだぞ!」
ウェイン君優秀。
優秀な眷属を持ててレト君は幸せ者ですね。
「じゃあ早速--ってこの部屋は?」
「図書室ですね。流石王城。かなりの蔵書数です」
おお。宝物庫に向かう前にお宝を発見してしまったぜ。早速テレサを呼ばないと。
「って事は精霊は--ってあれ? なんなの? 今精霊の話を聞き出してた所なの」
図書室って事で実質本の管理をしているテレサを呼び出したんだけど。やはり兄妹。
キンブルに精霊の事を聞いてたらしい。アギャインも生前は使えたらしいけど、アンデッドになってからは使えなくなったらしいからな。
生きた相手から聞けるのは大きいんだろう。
「いや、ほら。図書室だし。本の事ならテレサかなと思って」
「あ、ここは図書室なの? それなら早く言って欲しかったの」
むすっとした表情をしていたテレサだけど、図書室と聞いて一転。
魔法鞄からリストを取り出して、早速検分していく。
「行動がウェインそっくり。やっぱり兄妹だな」
「兄妹ですね」
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