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第3章 勢力増強
第54話 苦戦
しおりを挟む「浸透掌」
「グオォォ…」
ドシンと音を立ててベアが倒れる。
体長2m以上はありそうな巨人と小人の様な戦いだったけど、なんなく仕留める事が出来た。
俺の身長ももうすぐ160cmに届きそうなんだけどね。それでもまだ小さい。せめて後20cmは欲しいところであります。
「やっぱ、拳闘士と道士の相性はいいな」
「皮膚が分厚い相手にも有効なのは良いですね。体の内側に衝撃を与えるのは盲点でした」
前世でもそういう技の存在があるのは知ってたけどね。まさか俺が出来るようになるとは。
人生何があるか分かりませんな。
「ボスの魔法良いっすね」
「便利だろ?」
倒したベアをアイテムボックスに放り込む。
それを見た騎士男は羨ましそうに声を掛けてくる。
「魔物を倒しても持って帰れる数に限りがあるんすよ。出入り口の関係上、台車を持っていく事も出来ないっすし。いつもは泣く泣く諦めて高価な部位だけ厳選して持って帰ってるんすよ」
「魔法鞄とかないわけ? そういえば見た事ないような?」
「高難易度ダンジョンからそういうのが出ると聞いた事がありますね。でもそんなのを持ってるのは貴族や大商人、上位冒険者だけですよ」
ふむ。エリザベスにお願いしたら作れないかな? 俺と協力し合ったら出来るかも。
最近魔道具作りたいアピールが凄いから、そろそろ始めさせてもいいかも。
レベルも10を超えたしね。帰ったらカタリーナと相談しよう。
「まぁ、当分は我慢してもらうしかないな。いずれはそういう便利道具も手に入れたけどさ」
「魔法鞄はオークションで手に入れるしかありませんしね。値段も金貨1000枚は軽く超えてくるでしょう」
どひゃー。うちの総資産ぐらいなんだけど?
それを軽く超えてくるって凄まじいな。
まだまだ俺達は貧乏ってこったな。
「さて、雑談はここまでにして少し奥に行ってみるか。くれぐれも注意は怠らないように」
はてさて、どれくらい強いのかね。
「カタリーナ!」
「風の精霊よ!!」
舐めてた。普通に強いんだが?
森の奥に入ってまず出迎えてくれたのは、オークの群れ。これはちょっと手こずりながらも倒す事は出来た。
しかし、次に出てきたオーガ。こいつはダメだ。
「前に出過ぎるな! とにかく複数人で当たれ!」
「ゴギャー!!」
「この脳筋め!!」
レーザーを受けてもお構い無しに突っ込んでくる。レーザーがちょっとした擦り傷にしかなってないのはなんの冗談なんだと叫びたくなる。
カタリーナの魔法もちょろっと血を流してるだけ。それでいて、物理耐性も備えてるときた。
こいつ最強の魔物なのでは?
☆★☆★☆★
『名 前』 無し
『年 齢』 5
『種 族』 オーガ
『レベル』 86/100
『体 力』 B/A
『魔 力』 D/D
『攻撃力』 A/A
『防御力』 A/A
『素早さ』 B/A
『知 力』 E/E
『器 用』 E/E
『恩 恵』 無
『職 業』 狂戦士
『属 性』 無 火
☆★☆★☆★
これがBランクの魔物らしい。
上位冒険者なんて化け物しかいなんじゃないの?
こいつを平気で討伐出来るんでしょ?
お願いだからこれがSランクって言って欲しい。
「ハイヒール」
「あざっす!」
オーガに殴られて吹っ飛ばされた部下の一人に光魔法を飛ばす。
回復を受けた男はお礼もそこそこにまたオーガ戦線に参戦した。
「とりあえず機動力を削るぞ! 足を重点的に狙え!」
皮膚が硬すぎて剣の刃が通らないらしいけど。
なんとか腱とか切ってくんないかな。
「お前ら! ここだ! ここを狙え!」
前衛で頑張ってる部下達にお祈りしてると、一人の男が攻略法を見つけたらしい。
「なるほど。指か。裸足だもんな」
「私達は上半身を狙って注意を逸らしましょう」
「合点承知の助」
俺はレーザーを上半身に乱射する。
カタリーナも風の精霊で。
「ゴ、ゴギャ!!」
よしよし。良いぞ。ふらつき始めた。
「畳み掛けろーい!!」
チャンスとばかりに総攻撃。
果たして効いてるのかは疑問だが、傷は増えている。このチャンスは逃さない。
「さっき考えた必殺技をぶちかましてやる!」
俺は魔法をカタリーナに任せて接近。
小さい体を利用してスルスルとオーガの真後ろへと立った。
「喰らえ! ゼロ距離レーザー!」
オーガの背中に手を当てて至近距離からレーザーをぶちかます。
「ゴギャ…」
ゼロ距離から撃ったのが良かったのか、力無い声を上げて倒れたオーガ。
なんとか勝利である。
「おい。さっさとずらかるぞ!!」
「「「うっす!」」」
もう一回オーガ戦なんてやってられんぞ。
早く浅層に戻ろう。
オーガ回収して撤退だ。
「つ、疲れた」
俺達は中層から地下水道への出入り口まで撤退して、そこでようやく一息つく。
「オーガは強かったですね」
それな。でも俺達の限界が分かったのは良い事だ。俺達と上位陣の実力はC~Bランクぐらいって事だな。果たしてこれがレーヴァンに通用するのか。
「レーヴァンは傭兵でぶいぶい言わせてたみたいだし、もっと強い可能性はあるよな」
「ですね。せめてオーガには楽に勝てる様にならなければ安心出来ません」
うーん。浅層では物足りなくなってきたけど、中層はまだ早いって感じなんだよなぁ。
ここは我慢して浅層で研鑽するべきかな。
「中層はまだ俺達には早いや。もう少し浅層で力を蓄えよう。焦らず着実に一歩ずつ。命大事にいこうぜ」
目安は大体レベル100かな。
オーガで86だったし、それぐらいは欲しいよね。
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