117 / 129
第5章 クトゥルフ再始動
第108話 開店準備
しおりを挟む☆★☆★☆★
「旦那様。商人のレイモンドという人間の使いが訪ねておりますが」
「むっ」
執務室で書類仕事をしてると執事が部屋に入って来た。以前、国境視察の帰りに助けられた行商の一行の使いがやって来た。
なんでもそろそろ商会を我が領でオープンする為に、商品の売り込みをしたいそうで、都合の良い日を訊ねに参ったみたいだ。
私は三日後なら予定を空けられると使いの人間に告げて、執事にもその日の予定を調整してもらう。
「よろしかったのですか? 危ないところを助けられたとはいえ、ただの商人ですぞ? 旦那様の予定を空ける程ではないと思いますが」
「礼をしたいという気持ちもあるがな。それよりも気になるのは、あの商人が抱えておる護衛だ。一介の商人が抱えるには強すぎる。我が騎士団も決して精強とは言えんが、あの者の護衛は強さが違いすぎる。誼を通じておって損はあるまい。もしかしたらとんでもない商人かもしれんぞ」
我が国、フレリア王国には隣に敵国の帝国がいるが、ここ10年程は戦争がなかったゆえに、騎士団の質が年々落ちておる。
王直属の騎士はまだしも、地方の騎士団ではオークにすら勝てない事もザラだ。
現にこの前は危ない所だった。あの商人が通り掛からなければ間違いなく犠牲が出ていただろう。
「それほどですか?」
「ああ。特に護衛団を指揮しておった女。あれは我が国の騎士団長よりも強いかもしれんぞ」
「まさか…」
あの女は他の護衛よりも一際強かった。
それが当たり前のようにあの商人に付き従っておるのだ。気になっても仕方ないだろう。
出来れば私が召し抱えたいぐらいだが…。
流石にそれは許されないだろうな。あの商人が優秀な護衛を手放すとは思えん。
強硬策に出るとあの護衛の刃がこちらに向く事も考えられる。
穏便にまずは商売を通じで誼を深める方が良いだろう。
「これで何か面白いモノでも売りに来たら儲けものだな」
「あまり期待されたら商人が酷ですよ」
「それもそうか」
しかし私はあの商人を甘く見ておった。
あんな魅力的な商品の数々を持ってくるとは。
☆★☆★☆★
「ボス。三日後だそうです」
「あいあーい」
そろそろ店舗が完成するって事でね。
伯爵さんにアポを取りに行ってもらってたんだけど。流石にいきなり押しかけるのは迷惑だし。
三日後とは。思ったよりもフットワークが軽い人なのかね。貴族なんて平気で一ヶ月とか待たせると思ってたや。
「何を売るつもりで?」
「とりあえず転送箱は絶対。これは食い付くに決まってるからね。後は高貴な人用に作ったリバーシ。便利魔道具も軽く見せてみるかな。魔法が使える貴族には要らないだろうけど、あの伯爵が下々の事を考えてる善良貴族なら、使用人の為に便利魔道具に興味を持つかもしれん」
既に地下室は完成してるので、カタリーナが商会に来てる。オープンの準備を手伝ってもらってます。
で、売り込むモノの選定をしてるんだけど。
転送箱は絶対。
ボードゲームはとりあえずリバーシだけを持って行く予定だ。
一気に用意してもルールとかがあって浸透しにくいかと。まずは簡単なリバーシでボードゲームの楽しさを味わってもらってから。
徐々にボードゲームを売り込んでいこうかと。
魔道具は興味ないかなと思ったんだけどね。
生産者を軽視してる世界だし。でも秘密基地でみんなの普段の生活を見てると、結構使ってるっぽいんだよね。魔法を使える奴でも。
まぁ、簡単な火を付けるとか、魔法を使うより便利だからな。
これのターゲットは使用人だ。
この世界は火を付けるのも一苦労な世界だ。
なんか火付け石? そんなんでカチカチやらないといけないらしい。綺麗な水も井戸から一々汲んできたりと面倒な事だらけ。
でもこの魔道具があれば簡単に出来る。
魔石の補充は必要だが、この魔道具はゴブリン程度の魔石で稼働出来る。
一回この便利さを味わうと抜け出せないと思うんだよなぁ。
「ボスが家電魔道具と言っていたのは、まだ売り出さない予定ですか?」
「あれはまだ早い」
異世界転生者ならリバーシやトランプ並みにマストで広める義務があるもの。
それは、便利な家電だ。
冷蔵庫に洗濯機、照明系やエアコン、トイレなんかだな。
「いきなり出し過ぎると間違いなくパンクする」
「それはそうですね」
うちは人員がまだまだ少ないんだ。
戦闘関連ならどうにかなるが、商人や文官系の仕事をする人間は育てるのに時間がかかる。
まずは軽いジャブ程度にしておいて、色々な作業に慣れておかないと。
「人員の補充はどうなんですか?」
「マーヴィンとアハムに任せてる」
現在、このデッカー領のスラムに居着く裏の人間の制圧準備中だ。レーヴァンとラブジーのNo.2同士が協力してやってくれてます。
最初はアンジーに任せる予定だったんだが。
伯爵に顔が割れてるし、万が一見られたら面倒だって事で。今は秘密基地の方に戻って、ローザとキャッキャしてる頃だろう。
「まぁ、そっちはゆっくりで良いよ。人員を消耗しないように言ってあるし。あの二人なら大丈夫だろう」
頭の悪いラブジーのボスを支えてたアハムと、アンジーが長年右腕にしていたマーヴィン。
お手並み拝見といきましょうぜ。
43
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる