異世界に転生したので裏社会から支配する

Jaja

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第5章 クトゥルフ再始動

第109話 売り込み

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 ☆★☆★☆★

 「この領地は質が低いっすね」

 「だな。これから簡単に制圧出来そうだ」

 デッカー領のスラムの裏の人間は組織としては成り立っているが、とにかく質が低い。
 ペテス領で日々抗争してきた弊害か、俺はかなり物足りない気持ちになっていた。

 「マーヴィンさんが出てくるとは思わなかったっすね。ローザちゃんの指導で忙しいと思ってたんすけど」

 「指導…。指導な…。俺にあのじゃじゃ馬を御するのは難しいぜ」

 アンジェの姉御が留守にしてる間、戦闘部をまとめるのはローザと俺の仕事だった。
 ボスはローザの将来を考えて、ローザに任せたんだろうが、とにかく疲れる。
 言う事を聞かない訳じゃない。話もちゃんと聞いて、ローザなりに頑張ろうとしてくれてたんだ。

 「ローザちゃんはちょっと頭があれっすもんね」

 「そういうところが可愛らしいんだがな。しかし戦闘部の指揮は命に関わる。もう少し兵法について学んでくれれば良いんだが」

 指揮をしなくちゃなんねぇのに、気付けばローザは敵の中へ突撃している。
 本人が指示を出すより、動く方が好きだから仕方ないんだが。

 「ローザちゃんを上にするなら、副官の人はかなり優秀じゃないといけないっすね」

 「ああ。かなり苦労するだろうよ」

 一体ボスはどう考えてるのか。
 出来ればその副官の役目は遠慮したいぜ。
 多分、これからも俺になるんだろうが。
 自分で言うのもなんだが、使い勝手の良い人材だと思うしな。

 「マーヴィンさん、アハムさん。襲撃準備完了しました」

 「よしっ! じゃあいくっすか!」

 「ああ。出来るだけ生け捕りを再度徹底しておいてくれ。こちらの人員を削られないようにな」

 まぁ、先の事は置いておこう。
 今はこのデッカー領の裏の人間をどんどん吸収していかねぇと。クトゥルフは常に人員不足だからな。ボスが気に入るような人材が転がってると良いんだが。

 ☆★☆★☆★

 「ボス。アハム達が動き始めたようです」

 「ん。良きに計らえ」

 デッカー領の裏を支配するために、アハムとマーヴィンが動き出したらしい。
 まぁ、あの二人に任せとけばとりあえずは大丈夫でしょ。二人とも優秀だし、一緒に連れて行った戦闘部の奴らはしっかりカンストしてる。
 ゴドウィンみたいなイレギュラーさえ居なければ、そう時間が掛からないうちに支配出来るはず。

 「じゃ、俺も働きますかね。アンジー呼んできて」

 「かしこまりました」

 今日は伯爵さんちにお邪魔する日だ。
 まぁ、売り出すモノを見せに行って、よろしくねって言うだけだけど。
 一応護衛としてアンジーは連れて行かないとね。
 ローザときゃっきゃしてるところ申し訳ないけど、お仕事の時間です。

 伯爵が何かしてくるとは思えないけどね。
 護衛の人間はどこに行くにも必要だ。
 見栄え的にも。俺は弱っちい商人の設定だしね。
 俺が一人でぷらぷらしてるのもおかしいだろう。




 「本日はお時間頂きありがとうございます」

 「構わん。今日はその方への礼なのだ」

 馬車で揺られる事少しして。
 伯爵さんが住んでるお屋敷に到着。
 丁寧な応対を受けて、応接室で待たされる。
 あ、アンジーの武器は取り上げられた。まぁ、貴族に会うんだから当たり前だよね。

 予備の刀で、本命は指輪型の魔法リングに入ってるから無意味だけど。魔法鞄とかも売り出したらえらい事になるだろうな。
 この世界に空間魔法の概念すら無さ気だし。クトゥルフで独占した方がいいかしらん。

 「それで? お主の商会では何を売り出すつもりなのだ?」

 「基本はなんでも売ろうと思っております。今日はその中でもうちで目玉になるであろう商品を持って来ました」

 おっといけねぇ。
 今は伯爵さんとお話し中でした。
 難しい事は帰ってからカタリーナ達と考えよう。

 「まずは娯楽からですね。こちら、リバーシと言います」

 「ふむ…?」

 後ろに控えてたアンジーから富裕層向けに豪華に装飾されたリバーシ盤を出してもらう。
 勿論これは、魔法鞄なんかじゃなくて、普通の鞄からだ。一応ルールブックも作ってきた。リバーシはそれが必要なのか疑問に思うくらい簡単だけど。

 「これはうちの商会の人間が暇潰しに考えてくれたものなんですがね。思ったよりも商会内で流行りまして。これは売れるんじゃないかと」

 「うむ。ルールはシンプルなのだな」

 伯爵さんはルールブックを読みながらチラチラとリバーシ盤を見ている。
 分かる。分かるぞ。早速やってみたいんだろう。
 ダンディなおじさまに無言でお願いされたら、こちらとしても付き合わねばなるまいて。

 「とりあえず一度やってみましょうか」

 「ああ。是非お願いする」

 ふっ。俺の接待リバーシの実力を見せてやろう。
 接戦を演じて負けるなんてお手のものよ。



 「うむ。参った。ルールはシンプルだが、中々奥が深いのだな」

 よえー。弱い。伯爵さん、弱いよ。
 うちのローザより弱いんじゃないの?
 こっちは負けに行ってるのに、勝っちゃったじゃないか。いや、初心者ならこんなもんか? カタリーナとかホルトは最初から強かったから、ちょっと勘違いしちゃってたのかも。

 「貴族の方は勿論、庶民でも簡単に遊べる娯楽になるのではないかと。こちらのリバーシ盤は献上させて頂きます。伯爵様には是非社交会で広めて頂けたらなと思っております」

 ほら。貴族って新しいモノとかですぐマウント取ろうとするでしょ。こんなの絶好の商品じゃないか。マウント取らせてあげるから、社交会で宣伝しておくれ。
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