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第5章 クトゥルフ再始動
第114話 商会オープン
しおりを挟む秘密基地でやいやいしつつ、自己研鑽してるとあっという間に商会のオープン日。
カタリーナとローザのレベルを追い抜きたいのに、俺が狩りに出ると毎回ついてくるから、差が縮まらない。
まぁ、ボスの面目を保つのに苦労してる俺の事はさておき。
「ふむ。意外と来るもんだな」
「物珍しさもあると思います」
思ったよりもお客さんが来てくれる。
新しくオープンした商会で気になるのもあるんだろう。
早速暇してる戦闘部の人間を冒険者登録させて、冒険者と交流を持つようにお願いしてるけど、宣伝効果が出るほど信頼やらを積み重ねてない。現に来てる人達は普通の街に住んでる人達だ。
まだ宣伝するにも商品を売り出してもないしね。
「うちはなんでも売る感じの商会を目指したいからな。人以外は」
「奴隷にするぐらいならクトゥルフで使いますよね」
その通り。別に奴隷が悪だーとか、解放しろーだとか、勇者みたいな事を言うつもりは毛頭ない。俺も契約で縛ったりしてるからね。
それに奴隷ってのは、寒村とかのセーフティネットになったりもしてるんだ。
俺が変に正義感とか出して奴隷を解放させたとしても、絶対に裏で出回るに決まってる。あれだけ発展した現代ですら、人身売買ってのは撲滅出来なかったんだ。
こんな人権があってないような感じの異世界でやるなんて無理だろう。
「まぁ、俺が表裏完全に支配出来たらそれも可能なのかもしれんが。働く場所がクトゥルフになるだけだよね」
「奴隷よりは断然マシな生活が出来ますし、それもありなのでは?」
まだまだ先の話だよ。何年掛かるか分かったもんじゃない。俺には孤児0、異世界に娯楽を広めるという崇高な使命がある。
………なんかこの目標の為に活動してたら、自然となんとかなってるかもしれんな。
「さてと。じゃあ後はホルトに任せるぞ。働き過ぎには注意してな」
「はい。お任せを」
俺は三階から一緒に客入りを見ていたホルトに後を任せて地下室へ。
そしてそこから、デッカー領のスラムに転移した。こっちの状況も確認しておきたかったしね。
「あ、自分で転移すれば良かった」
転移装置を使う必要なかったじゃんね。
☆★☆★☆★
「へぇ。ここが新しくオープンした商会か」
冒険者ギルドのすぐ近く。
以前は老夫婦がやってた雑貨屋があった場所に新しく『ルルイエ商会』というのがオープンしていた。
少し前から改装作業をしてて、何が出来るのか気になってた冒険者の男は、少し外から眺めつつ、ウロウロしていた。
「ちょっくら入ってみっか」
見た感じ高級商会という感じではない。
冒険者ギルドから近い事もあり、良い感じの店ならお得意様になるのもやぶさかではない。そう思って店に入る。
「いらっしゃませ」
応対してくれたのは、20代前半ぐらいの女性。飛び抜けて美人という訳ではないが、かなり身綺麗な格好をしていた。
外観と違って実は高級商会だったのだろうかと少し身構える。
「これは制服というものでして」
気後れしていた冒険者の男を察したのか、それともジロジロと見ていたせいか、応対した女性が服について説明する。
この世界に服を統一するという概念はない。騎士団が鎧を揃える事はあるが、服飾関係が発展していないせいで、そこまで手が回ってなかった。
レイモンドは当たり前のように、制服を用意していたが、服を揃えるというのはかなり見栄えが良い。
「ん? あれはなんだ?」
「あれは--」
冒険者の男が制服に感心してると、目に入ったのは、店の隅で向かい合って座ってる二人。その周りには少し人だかりが出来ていた。
女性に詳しい話を聞くと、あれはこの商会で売り出してる娯楽らしい。
簡単なルールで手軽に遊べるらしく、野次馬達も興味深々だ。
少しでも新しい娯楽を楽しんでもらう為にと、店の一角で遊べるようにしていると教えてもらった。
「ほー。武器も中々。ベテランの人間が使うにはちと心許ないが、初心者が使うには悪くねぇ。値段もかなり良心的だ」
「はい。商会で抱えてる鍛治師の練習品ですね。練習品とはいえ、初心者の方が使いやすいようにはなってます」
女性に説明してもらいながら、店内を見て回る。この『ルルイエ商会』には、大体なんでも置いてあるらしく、日用品や武器防具、食料から服に魔道具、ポーションまで置いてある。
「この魔道具は良いな」
男が手に取ったのは、火を付ける魔道具。
魔道具は職人が少ない事もあり、どこの商会でもかなり高価な値段で売られてるのだが、この商会はかなり安い。
個数制限はしてあるものの、これを買ってよそに持っていけばかなりの値段になるんじゃないか。
男はそんな事を考えながらも、買い物カゴに火を付ける魔道具、綺麗な水を出せる魔道具、リバーシなど目に付く面白そうなモノをぽんぽんと放り込んでいく。
「ポイントカードはお作りになられますか?」
「なんだそりゃ?」
そしてお会計。
物珍しさもあって、けっこうなお値段になってしまったが男は満足していた。
ソロで活動して、それなりに実力もある為お金にはそこまで困ってない。
会計時にポイントカードなるものの説明を受けた。一定金額毎にハンコを押してもらえて、それが全部貯まると割引券を貰えるらしい。
男は勿論作った。
値段もかなり良心的だし、欲しいモノは大体ここで買える。これから通うと自然とポイントは貯まるだろうと思ったのだ。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
男はホクホク顔で店を出る。
あまり期待してなかったが大満足。
冒険者ギルドから近い事もあり、ほぼ間違いなくリピーターになるだろう。
「これは付き合いのある冒険者達にも教えてやらねぇとな」
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